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乳腺外科は高級寿司店 最高のネタに心を込めて

乳腺外科は高級寿司店  最高のネタに心を込めて

大阪大学大学院医学系研究科外科学講座 乳腺内分泌外科
島津 研三 教授(しまづ・けんぞう)

1994年大阪大学医学部卒業。
東京都立駒込病院外科、大阪厚生年金病院(現:JCHO大阪病院)外科医長、
大阪大学大学院医学系研究科外科学講座乳腺内分泌外科講師などを経て、2020年から現職。

 新教授の島津研三氏は、乳がん手術のセンチネルリンパ節生検や甲状腺の内視鏡手術など光の当たらなかった分野で実績を積んできた。「全ては患者さんに喜んでもらうため」。全国屈指の診療、研究レベルの教室を変わらぬ信念で率いる。

臨床現場一筋 患者に育てられた

 「ええネタをそろえるのは当たり前だし、そこは絶対の自信がある。こだわっているのは、その寿司の出し方です」。島津氏は乳腺外科を高級寿司屋に例える。心のこもった接客(診療)で、多岐に及ぶネタ(治療)の中から、客(患者)に合い、望まれるものを提供する。

 治療する医師と受ける患者も、基本は人と人との関係で愛想のない医師では務まらない。医療は何より患者に喜んでもらうためにある。建前でなく、本気で思っている。「臨床現場一筋に歩んできた自分は、患者さんに育ててもらいましたから」

 大学卒業後、5年間の臨床研修を経て大阪大学に戻った。附属病院で病棟を担当しながら、教授から命じられた乳がん手術の「センチネルリンパ節生検」の課題に取り組んだ。乳房内のがん細胞がわきのリンパ節に転移していないかどうか、少量の放射性同位体を注入してセンチネルリンパ節を同定・摘出し、それを手術中に顕微鏡を使って調べる検査で、転移がなければリンパ節を取り除かないで済み、合併症や後遺症のリスクが下がる。

 学生時代はボート部で鍛えた体育会系気質。多忙を極めても目の前のことに打ち込み、根気強く続けることは自然なことだった。生検の成功率をより高める放射性同位体の打ち方を報告するなど、センチネルリンパ節生検の確立に貢献した。

 併せて取り組んだのが、甲状腺の内視鏡手術だ。わきと両乳輪のそばから内視鏡を挿入する「前胸部腋窩アプローチ(ABBA)」を開発。それまで一般的だった挿入法と比べ、手術時の視野が広がり、手術時間の短縮などにつながった。「世界に先駆けた試みで、ロボット支援下手術の原型になった」と成果を語る。

 だが、学会発表した当初は反応が薄いどころか先輩医師から非難も受けた。「僕もさすがに、しゅんとなって。本分の乳がん治療に専念しようと思いましたね」

 ABBAをまとめた論文がその後、驚くほど多くの論文で引用されたことを知ったのは、今回の教授選考に向けて業績を整理していたときだった。「なんだ。自分もけっこういい仕事したのかも、って今さら思わせてもらいました」と笑う。センチネルリンパ節生検も当時は注目度の低いテーマだったが、今では治療のスタンダードになっている。

置かれた立場で全力 技術と信頼培う

 学生時代は救急医を目指したが、「めちゃ怖い担当教官」にすごまれ腫瘍外科にたどり着く。小規模病院に赴く予定だった臨床研修2年目は急きょ、上司の力業で急性期の大病院の救急へ。東京への憧れもあり受けた都立の有名病院は「倍率1倍」の年に採用され、しばらく研究するつもりで大学に戻ると、教授の「気まぐれ」で臨床を続けた。

 「流れ流れてきましたが、置かれた立場で全力を尽くしたことは確かです」。培ってきたのは医療技術だけではない。患者との信頼関係を築くことは、それほど難しくないと思っている。「あいさつをする。相手の話をよく聞く。人としての基本がちゃんとできないといかん、と若手にも言っています。偉そうな医者や病院は、いいネタを持っていても、いい診療はできません」

 5年前には、親族の乳がん手術を自ら手がけた。「頭で理解していたつもりだった患者の心身の痛みが、心で分かった気がしました」。見据える目標は、乳がんの死者ゼロ。患者の視点に立った治療法改善の研究、現場を支える医師たちの働き方改革―。やるべきこと、やりたいことは尽きない。

大阪大学大学院医学系研究科外科学講座乳腺内分泌外科
大阪府吹田市山田丘2ー2ーE10 ☎️06ー6879ー5111(代表)
http://www.onsurg.med.osaka-u.ac.jp/

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