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乳がんとともに生きる 患者さんに寄り添う

乳がんとともに生きる 患者さんに寄り添う

独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院 田中 眞紀 院長(たなか・まき)
1980年久留米大学医学部卒業、同第一外科(現:外科学講座)入局。
社会保険久留米第一病院(現:久留米総合病院)外科健診部長、外科部長などを経て、
2012年から現職。久留米大学医学部客員教授、福岡県医師会理事。

 「多くの乳がん患者さんたちが治療を受けながら仕事を続けています」と話す田中眞紀院長。乳がんの治療において豊富な実績を有する久留米総合病院。ニーズが高まる治療と就労の両立支援や、患者サポート体制の構築に向けて、どのような取り組みを進めているのだろうか。

―乳がん患者の両立支援について教えてください。

 お仕事や介護などで多忙な40代後半、そして60代後半が、乳がん患者さんのピークです。

 がんと診断されると「仕事を辞めなければならないのでしょうか」とおっしゃる方がいます。私はがんであることをお伝えする際には「辞める必要はありません。元気になって、より社会で活躍するために治療するのですから」とお話ししています。

 乳がんについては薬剤の進歩もあって、多くの方が仕事を続けながら通院で治療しています。手術を受けた方は、できれば数週間の休職で治療に専念し、十分に体力を回復させてから職場復帰を果たすことが重要でしょう。復帰後に一定の業務をこなすことで周囲の信頼も得やすいはずです。

 よりスムーズにもとの生活に戻っていただく。そのために、できる限り丁寧な説明を心掛けています。

 サポート体制として当院には、がん関連の認定看護師やソーシャルワーカーがいる「がん相談窓口」「就労支援窓口」があります。

 就業先の産業医とも連携し、患者さんの状況に応じた治療の選択や、復帰の方法を支援するシステムも整えています。治療を継続しながらより良い生活を送るために、一人で悩まず、ぜひ相談していただきたいと思っています。

―大切にしていることは。

 患者さんの気持ちに寄り添うことです。初診から治療開始までの期間はおよそ1カ月。治療方針の説明は入院する前に外来で行います。セカンドオピニオンという選択肢も含めて十分に考え、納得した上で治療と向きあっていただきたいからです。

 告知の場には、認定看護師も立ち会います。医師による説明後、1時間ほどかけて患者さんと看護師が面談。ご家族のことや生活環境などをしっかりと把握します。

 この場で得た情報が治療方針とも関係しますから非常に重要な時間です。まずは、がんという現実に患者さんの気持ちが追いつくまで寄り添うこと。そこから始めることが大切なのだと考えています。

 食事、睡眠、運動など総合的に患者さんをサポートする中で、やはり軸となるのは心のケアです。早期発見で克服できる可能性が高い方でも、気分が落ち込んでしまい、うつ病へと至る方もいます。患者さんの思いを受け止めることも、治療の一つなのです。

 これまで不定期で開いていたがん患者さんを対象とした交流会兼ミニ勉強会。9月以降は「がんサロン」として定期的に開催していきます。患者さん同士が思いを語り合ったり、さまざまな情報を収集してもらったりできる場として活用してもらいたいですね。

 8年ほど継続しているのが「おしゃれ教室」。抗がん剤の副作用による脱毛で沈みがちな気持ちを、おしゃれを楽しむことで少しでも前向きなものにできればと始めました。ウィッグや補正下着の紹介、メイク、ネイル、口腔内ケアなどをテーマに開催しています。

―がんリハビリテーションも推進されています。

 医師、看護師、セラピストの3人が1チームとなって対応。わきの下のリンパ節を郭清した方を中心に、自宅でも実践できる機能訓練をサポートしています。手の温もりが直接的に伝わるがんのリハビリテーションやリンパ浮腫ドレナージ、体だけでなく心の回復にもつながる。たくさんの人が応援している。そんな思いを患者さんに届けていきたいですね。

独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院
福岡県久留米市櫛原町21
☎0942―33―1211(代表)
https://kurume.jcho.go.jp/

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