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中皮腫の診療拠点 早期介入で患者に光を

中皮腫の診療拠点 早期介入で患者に光を

内科学講座 呼吸器科
木島 貴志 主任教授(きじま・たかし)

1990年大阪大学医学部卒業。西宮市立中央病院、
米ハーバード大学ダナファーバー癌研究所、
大阪大学医学部附属病院呼吸器内科病院教授などを経て、2017年から現職。

 講座は2002年に誕生。アスベストによる中皮腫が社会的大問題となったのは、その3年後のこと。健康被害が広がった地域の中心に立地する兵庫医科大学が診療の拠点となって10数年。施設内の「中皮腫センター」でも治療に当たる木島貴志主任教授に聞いた。

―阪神地域における呼吸器疾患の特徴は。

 喫煙者や高齢者の数に比例し、肺がんでもタバコに影響される小細胞肺がんや扁平上皮がんが比較的多いですね。さらに間質性肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している、循環器に問題がある、など合併症がある患者さんも目立ちます。また全体的に、女性の比率が高い印象です。

 COPDは「取り残された生活習慣病」。潜在患者は全国に600~700万人、うち治療している人は4~5%とも。症状が進むと元には戻らないので、早期発見、早期治療が肝心です。

 一番の課題は、開業医との地域連携。COPDの診断に必要な呼吸機能検査ができる施設が少ない上、検査に手間がかかり、患者さんの多い施設はなかなか手が回りにくい。検査の保険点数が低いのも要因の一つです。このあたりは永遠のテーマですね。

 肺がんに関しては、ゲノム医療が始まったばかり。分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法にはそれぞれアドバンテージや課題がありますが、有効な併用法などについて臨床研究が進みつつあります。今後も根拠に基づいた最善の医療を行いたいですね。

―中皮腫の診療拠点です。中皮腫に関する動向や、今後の展望について。

 中皮腫は潜伏期間が30~40年と非常に長く、患者は2030年代ごろまで増え続けると想定されています。年間新患者数は約840人。当院の年間症例数は、内科・外科合わせて100例ほどで、他の施設に比べて圧倒的に多いのが特徴です。

 治療の難点は、保険適用の抗がん剤が少ないこと。ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が初回の標準でしたが、ようやく2次治療にニボルマブ(商品名:オプジーボ)が保険適用になりました。奏効率は20数%ですが、他に治療法がない中で期待したいところです。

 外科手術に対しての見解は分かれていますが、当院では早期発見できた人に対しては、胸膜だけを取って肺の機能を残す手術を行います。予後は良好ですね。

 力を入れているのがアスベスト検診です。当院のほか、尼崎総合医療センター、関西ろうさい病院でも実施しており、月に2回、尼崎の保健所で2次読影も行っています。

 2019年2月、二つの研究会が統合され「日本石綿・中皮腫学会(JAMIG)」が発足しました。初代理事長には当院の中皮腫センター長である長谷川誠紀先生が就任。実臨床でのデータ集積に協力していきます。

 中皮腫の大部分は胸膜にできますが、腹膜中皮腫や心膜中皮腫、精巣鞘膜中皮腫といったさらに希少な疾患もあります。これらは保険診療で使える薬がないのが現状。保険適用拡大のため、医師主導治験を検討しているところです。

 医療福祉に関しては労災または石綿健康被害救済制度の申請が必要ですが、認定には胸腔鏡での生検が必要。最近では胸水を遠心分離機で固めた細胞ブロックを使う検査も可能になりましたが、われわれが目指すのはもっと容易な検査方法です。胸水の細胞診でできないか、研究を進めたいと思っています。

 今年は阪神・淡路大震災から25年。当時、大量のアスベストが飛散したといわれており、今後患者が増える可能性も考えられます。また、空中に浮遊するナノファイバーにも危険性があります。動物実験ではすでに中皮腫発症の原因になることが判明しており、人体にも有害なのではと危惧しています。今後もさまざまな動向に注意しつつ研究を進めたいですね。

兵庫医科大学 内科学講座 呼吸器科
兵庫県西宮市武庫川町1─1
☎0798─45─6111(代表)
https://www.hyo-med.ac.jp/department/rspr/

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