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世界トップレベルの治療を地域に 働き方改革への対応急務

世界トップレベルの治療を地域に 働き方改革への対応急務

  病院長やくひとし
1982年京都府立医科大学医学部卒業。米バーモント大学リサーチフェロー、豪セントビンセント病院クリニカルフェロー、京都府立医科大学教授などを経て、2019年4月から現職。


 明治5年(1872年)、京都の人々の浄財によって設立された歴史を持つ京都府立医科大学。今春、陽子線治療施設がオープンするなど新たな挑戦が始まる。4月就任の夜久均新病院長に、府立医大病院の役割と展望を聞いた。

―4月、病院長に就任。抱負を。

 このたびの医療法等の改正により、特定機能病院における病院長のガバナンス体制が強化され、医療安全管理において病院長はより重い責任を課されることになりました。改正後、初めての病院長就任となり身の引き締まる思いです。

 また、この4月から大企業をはじめ、働き方改革が動き出しました。医療現場でも2024年に時間外労働時間の上限が定められます。一般医師は年960時間、「地域医療のためやむを得ない場合」は特例で年1860時間程度が上限となる見込みです。病院長職の任期は3年ですので、この待ったなしの「黒船」に対していかに体制を整えていくかが私の仕事の中心になってくると思います。

 病院の機能を落とさずに働き方改革を実行していくには、かなりの変革が必要になるでしょう。特に、医師の業務についてはタスクシフト・シェアなどが重要だと考えています。

 海外の病院のように、医師の書類作成や看護師のシーツ交換など、専門以外の業務は、きちんと事務職員や看護補助者を付け分担すべきことだと思います。また、厚労省も推進しようとしている診療の補助行為を実施できる診療看護師や特定行為研修を修了した看護師の存在は不可欠になると思います。

 つまり、今後は看護師の人員確保が大きな課題となります。これに対応するためにも、病棟を機能や臓器別に再編し集約することで効率化を図り、業務の一部ができる看護師の人員を捻出していけるよう現場と話し合っています。

 病院をあげての改革となり、決して容易なことではないと思っています。しかしこれがうまくいけば、医師も看護師も本来すべき業務に集中できるというメリットがあり大変大きな意味があると考えます。


―京都府内初の陽子線治療施設を開設されました。

 4月、本格的な治療を開始しました。日本電産株式会社会長の永守重信氏からいただいた寄附によるもので「永守記念最先端がん治療研究センター」という名称です。

 当院は都道府県がん診療連携拠点病院、そして小児がん拠点病院でもありますので、がん治療は大きな柱の一つ。同センターが開設することによってがん治療のオプションが増えることは患者さんにとっても大きなメリットです。また、病院と併設していますので、小児の患者さんも含め同じ敷地内で陽子線治療が受けられるという点が大きな特徴でしょう。

 病院の理念は「世界トップレベルの医療を地域へ」。ある意味、相反する二つの使命があり、その両立を目指すことが私たちの存在意義でしょう。高度先進医療を担って地域を守る。京都府を母体にする我々にとって府下の地域医療は責務です。二つの使命のどちらが欠けてもいけない。

 そんな目を持った人材を育成していくことが大学の使命です。将来的には、地域の病院の役割の分担がますます進んでいくと考えています。つまり地域全体がより連携しなければなりません。


―ご専門の心臓血管外科など循環器での取り組みは。

 救急の充実にはより力を入れていかなければなりません。急性心筋梗塞、あるいは待ったなしの解離性大動脈瘤などに迅速に対応していきます。また、がんについては、多職種がチームで治療方針などを話し合うキャンサーボードが浸透してきていますが、今後は、循環器分野においても診断や治療方針の決定においてチーム医療がキーワードになると考えています。

 例えば循環器内科はカテーテル治療が広がってきたことで、これまで治せなかったものを治せるようになってきました。一方、心臓血管外科の分野は、根治性は保ちつつ、より低侵襲な治療が求められるようになっており、私たちもそれに沿った方針でさまざまな手術を実施してきました。

 2018年4月からダビンチを使った僧帽弁形成術も保険収載されました。ダビンチを含め、ロボットを活用した新しい医療機器の開発が進展している点も循環器の低侵襲な治療を後押ししていくと考えています。つまり、循環器分野では内科も外科もカテーテル治療を実施するなど、オーバーラップする部分も多くなっており、内科と外科に分けること自体が古い考え方になってきています。

 私たちも、循環器のチーム全体で話し合いながら治療方針を決めるという方法、いわゆる「ハートチームディスカッション」に取り組み始めています。そうすることで、より透明性をもったディシジョンメイキングができるのではないかと思います。

 これまでは、この治療にはこの手技で対応するという考え方が一つの診療科や医師によって進められてきた点もあります。時間的な制約があることからもそうならざるを得なかったかもしれません。

 しかし、ハートチームディスカッションを取り入れることによって、看護師、理学療法士のような医師以外の専門職の意見が加わり、患者さんのその後の人生を見据えながら、より良い治療を決定することができると考えています。難しい挑戦になるかもしれませんが、ぜひ取り組んでいきたいと考えています。


京都府立医科大学附属病院
京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465
☎075―251―5111(代表)
https://www.h.kpu-m.ac.jp/

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