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不妊治療を、その後の豊かな人生につなげたい

不妊治療を、その後の豊かな人生につなげたい

獨協医科大学埼玉医療センター 岡田 弘 病院長(おかだ・ひろし)
1980年神戸大学医学部卒業、
1985年神戸大学大学院医学研究科博士課程修了。帝京大学医学部泌尿器科助教授、
獨協医科大学越谷病院(現:埼玉医療センター)泌尿器科主任教授などを経て、
2018年から現職。

 「妊娠・出産がゴールではない。目指すのはリプロダクティブ・ヘルスプロモーション」と男性不妊治療のパイオニアは語る。リプロダクションセンターを開設して、今年で5年目。体外受精や顕微授精といった高度な不妊治療に関わる技術を擁し、MD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)は国内最多の症例数を誇る。

―リプロダクションセンターの特徴は。

 当センターでの治療は男性・女性両者を診察することから始まります。これは、大学病院では珍しい取り組みでしょう。卵子からだけではなく、精子からも不妊の原因を診ていきます。

 女性の治療は産婦人科医が、男性の治療は泌尿器科医がそれぞれ担当し、連携を図りながら治療を進めていきます。

 男性側の検査では精子機能検査を実施し、DNAや精子の膜の状況といった精子力も測定しています。精子力の改善のため、生活習慣指導や、抗酸化剤の処方などにつなげています。

 体外受精や顕微授精にはタイミングとスピードが必要です。当センターには卵子を採取するスタッフと精子を採取するスタッフがそれぞれ在籍。手術室も備えていますので、時間のロスなくスピード感を持った治療が可能です。

 さらに不妊治療から出産までトータルでサポートができる、という点も大きな強みですね。大学病院という特性を持ち、NICU(Neonatal Intensive Care Unit、新生児集中治療室)も備えていますので、ハイリスク分娩へのサポートという点でも安心感があると思います。

 もう一つ特徴的なことは、多くの医師が在籍していることです。化学療法が必要になったがん患者さんに対する、緊急的な精子や卵子の採取も可能です。「患者さんの置かれている状況にわれわれが合わせる」ということもまた、このリプロダクションセンターの強みだと考えています。

―大学病院ならではと言えるチーム医療体制が整っています。

 治療に当たる泌尿器科医、産婦人科医は、長年不妊治療に携わっている医師ばかりです。看護師、胚培養士など、関わるさまざまな職種のスタッフも高い技術を持っています。

 近年は、がんと診断された方の支援にも力を入れています。最も大事なのは「がんを治すこと」。それを大前提とした上で、がんの治療が始まる前に精子や卵子を採取・凍結し、妊孕(にんよう)性を温存することもまた、若い世代に対しては必要なことです。

 がんの診断を受け、治療を受ける前の男児、特に思春期前の男の子の妊孕性温存は大きな課題です。今はまだ研究段階ですが、保護者の了解を得たうえで、精巣組織を凍結保存する試みにも積極的に取り組んでいます。

―今後の展望は。

 不妊治療の可能性を広げ、「わが子を手にしたい」という患者さんの希望を実現し
ていくことが、当センターの大きな役割だと認識しています。

 しかしその一方で、不妊治療をして出産まで到達できる方は限られています。「子どもを授かること」がすべてのゴールであるとは考えていません。

 ですからわれわれは、治療にお見えになった方々に、まず、里親制度についてご説明しています。

 大切なのは、不妊治療を通して、ご自身やパートナーの健康に目を向けていただき、人生を豊かに過ごしていただくこと。さらには「不妊治療をして、子どもを授かることはできなかったけれど、良い人生を送ることができた」と感じてもらうこと。

 この考え方をわれわれは「リプロダクティブ・ヘルスプロモーション」と呼び、これからも推進していきたいと考えています。

獨協医科大学埼玉医療センター
埼玉県越谷市南越谷2―1―50
☎048―965―1111(代表)
http://www.dokkyomed.ac.jp/hosp-k.html

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