小川 朋子 教授(おがわ・ともこ)
1989年三重大学医学部卒業。山田赤十字病院、三重大学医学部肝胆膵・乳腺外科講師、
亀田メディカルセンター乳腺センター部長代理などを経て、2008年から現職。
乳がんを中心に、乳腺に関連する病気の診断・治療に当たる三重大学病院乳腺センター。その設立から携わってきた小川朋子教授が率いる乳腺外科学には、女性医師が多く集まり、腫瘍内科と協力し、患者のQOLを向上させる最新の治療や研究を進めている。
─特徴を教えてください。
手術を行う乳腺外科と薬物療法を行う腫瘍内科が、専門性を生かしてチームで乳がん患者さんの診療に当たっている点が、三重大学の強みだと思います。
私が専門とする乳腺外科の領域では、根治性と整容性の両立を目指したオンコプラスティックサージャリーの手技を積極的に取り入れ、術後のQOLを向上させる手術を追究しています。薬物療法は腫瘍内科が術前、術後、再発を担当。新しく出てくるさまざまな薬物を用いた最新の治療を行う体制となっています。
─研究について。
新しい手術術式や画像診断の開発と、腫瘍内科医である乳腺センター副センター長の齋藤佳菜子先生が指導するトランスレーショナルリサーチの両輪から成り立っています。中でも力を入れているのは、根治性と整容性の両立を目指した手術術式の開発や長期成績、開発した術式の普及など、乳がん患者さんの治療に直結するオンコプラスティックサージャリーの研究です。
乳がん手術は、全乳房切除が当たり前だった時代があり、その後、乳房の部分切除である乳房温存手術が出てきました。しかし、初期の乳房温存手術は、乳房は残っても大きく変形した乳房になるということが珍しくありませんでした。
欧米でオンコプラスティックサージャリーという概念が1990年ごろに生まれ、日本にもその概念が普及。2013年には日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が生まれています。私自身、2000年ごろから乳がんの治療を専門に行うようになり、その頃は、指導医が不足、教科書も日本にはなかったことから、国内、海外の形成外科を見学に行くなど、自分で工夫しながら手術を行っていました。
2008年7月、三重大学病院乳腺センターが新設され、私が初代センター長に就任。その頃より、日本でもオンコプラスティックサージャリーの概念が徐々に浸透してきました。
ただし、海外で行われている手技は、日本人の小さな乳房には適さない方法もあり、より日本人に適したオンコプラスティックサージャリーの手技を開発することに精力を注ぐようになりました。その結果、「乳房オンコプラスティックサージャリー」「乳房オンコプラスティックサージャリー2」というテキストブック2冊を編集。興味を持った若い先生が入局してくれています。
─医局について。
新専門医制度にのっとった当科の外科専攻医数は、2018年度は0人でしたが、2019年度は2人、2020年度は3人でした。当科に2年連続で入局があり、この状況が続いてくれるように努力していきたいと思っています。
女性の私がセンター長であることも影響してか、当科に入局するスタッフは圧倒的に女性が多いのも特徴です。現在、医局員20人中、女性が18人、子育て中の9人はパートでの勤務も可能にするなど、できるだけダイバーシティな働き方ができるように配慮しています。
今回、COVID―19によって医療体制の変更が余儀なくされましたが、連絡事項を伝達する医局会は、どこでも参加できるオンライン医局会に変更しました。導入すると、今までパート勤務で参加できなかった医局員が参加できるようになり、かえって良い状況になったと思っています。強いものが生き残るのではなく、「変化に対応できるものが生き残る」という言葉を胸に、状況の変化に対応していきたいと思います。
三重大学臨床医学系講座 乳腺外科学(乳腺センター)
津市江戸橋2―174 ☎️059―232―1111(代表)
http://www.medic.mie-u.ac.jp/breast/