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一人でも多くの子を早期治療につなげたい

一人でも多くの子を早期治療につなげたい

発達小児医学
教授(はまざき・たかし)

1996年大阪市立大学医学部卒業。
大阪府立母子保健総合医療センター(現:大阪母子医療センター)、
米フロリダ大学医学部病理学教室などを経て、2018年から現職。

 代謝とホルモンの異常を早期に発見し、治療につなげるための母子保健事業「新生児マス・スクリーニング」。濱﨑考史教授は「0次予防」だと語る。一人でも多くの子どもの疾患を発見し、早い段階で治療につなげたい―。小児医療の現場の願いは切実だ。

―「新生児マス・スクリーニング」に深く関わっています。

  公費での新生児マス・スクリーニングは1977年にスタート。生後1週間以内の新生児のかかとから、微量の血液を採取し、疾患の有無を検査します。

 当初は先天代謝異常症など五つの疾患の早期発見を目的に実施されていました。2014年にタンデムマスという新しい検査技術によって対象疾患が拡大し、現在は25の疾患の早期発見に貢献しています。

 当教室は、1960年代から代謝異常症の一つ「フェニルケトン尿症(PKU)」に対する検査や治療に積極的に関わってきました。PKUは、遺伝性疾患で難病の一つです。

 食事で摂取したタンパク質の中に含まれる必須アミノ酸の一種、フェニルアラニンを別のアミノ酸に変える酵素の働きが弱く、フェニルアラニンが蓄積することで、発達の遅れなどが見られるようになります。

 ただ、タンパク質の摂取を制限するなどの食事療法で発症を抑制し、薬剤で正常な発育・発達を促すことが可能になるのです。

 重要なのは、PKUなどマス・スクリーニングの対象となっている疾患は、早期に発見することで発症の予防が可能であるということです。早期に医療が介入することで、子どもたちは勉強や運動といった、いわゆる学校生活を仲間と一緒に送ることができます。妊娠や出産が可能になるケースもあるのです。

 今、医療技術の進歩に伴い、新たにマス・スクリーニングによって早期発見、治療が可能となる疾患が増加しています。ところが、対象が拡大される兆しが見えないことに、心を痛めています。

 背景にはマス・スクリーニングに対する社会的な認知度が低いことが挙げられると思います。疾患の拡大を積極的に進めている自治体もありますが、公費負担ではなく、有料となる場合もあります。対象疾患の拡大と、自治体によってスクリーニングできる疾患の種類や数に差が出ないような仕組みも必要なのではないでしょうか。

 欧米ではマス・スクリーニングの対象となる疾患数が日本よりはるかに多いのが実情です。日本の将来を担う子どもたちの健康に、社会はもっと目を向けてほしいと願っています。

―小児対象の在宅医療充実にも注力されています。

医療的ケア児を地域で支えていこうという動きが進んでいます。当教室も文部科学省の支援を受けて、重症児の在宅医療支援を担う医療職を養成する事業に取り組んできました。

 昨年度で予算は終了しましたが、地域の要望もあり今年から事業を当教室で引き継ぎ、プログラムをより充実させていくことにしました。

 対象は小児の在宅医療に関わる医師、看護師、保健師、医療ソーシャルワーカーなど。 成人の在宅医療に携わるクリニックの医師で、小児にも対応できる体制を整えたいと思っている方や、病院の小児科医で、小児に対する訪問診療などが可能なクリニックとつながりたいと考えている方などが参加しています。多職種が一堂に会して研修する場は少ないこともあり、定員40人の講義が初回、満員になりました。

 参加者には事前にeラーニングで基礎知識を得てもらい、講義ではグループワークを中心に連携のノウハウを学びます。「実際の現場ですぐ生かせる」内容を目指しています。将来的には、本学医学部、看護学部、生活科学部といった学生の教育の場にもなっていけばと考えています。

大阪市立大学大学院 医学研究科 発達小児医学
大阪市阿倍野区旭町1―4―3
☎06―6645―2121(代表)
https://www.med.osaka-cu.ac.jp/pediat/

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