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ロボット麻酔システム開発麻酔科医の働き方に貢献

ロボット麻酔システム開発麻酔科医の働き方に貢献

器官制御医学講座 麻酔・蘇生学分野
教授(しげみ・けんじ)

1984年京都府立医科大学卒業。
米ジョンズ・ホプキンス大学医学部生体医用工学教室博士研究員、
愛知県心身障害者コロニー中央病院(現:愛知県医療療育総合センター中央病院)麻酔科などを経て、
2006年から現職。日本循環制御医学会理事長兼任。

 我が国の全身麻酔手術件数は年々増加している。しかも件数の増加だけでなく、手術時間の長期化など麻酔科医を取り巻く労働環境は厳しさを増している。重見研司教授は、麻酔を自動制御する「ロボット麻酔システム」をこのほど開発。麻酔科医の働き方に一石を投じる研究に、注目が集まっている。

—「ロボット麻酔システム」の概要や進捗状況は。

 手術中の全身麻酔は意識レベルを下げる「鎮静」、痛みを抑える「鎮痛」、筋肉の収縮を止める「筋弛緩」の3種類の麻酔薬を投与しています。

 術中、麻酔科医は患者さんの血圧など体の状態を示すバイタルサインをチェックしながら、麻酔薬の投与量を調節し、最適な麻酔の状態を維持しています。

 「ロボット麻酔システム」は、①バイタルサインを測定して催眠のレベルや筋弛緩の状態を出力するモニター②制御用コンピューター③麻酔薬を静脈に注入するシリンジ(注射)ポンプの三つで構成されています。

 当講座は手術の実績をもとに、術中の麻酔薬の投与量と麻酔の経過を予測するプログラムを開発しました。このプログラムが術中の患者さんの状態の反応に沿って、シリンジから注入する麻酔薬の量をコントロールするというものです。

 開発に当たっては、国立国際医療研究センター、日本光電工業株式会社と共同研究チームを組みました。約60人の患者さんに対して通常の手術と「ロボット麻酔システム」を使った手術の比較のための臨床評価を実施し、7月までに終了し、引き続き2020年度末までに医師主導治験を完了し、製品化を目指しています。

—システム開発のきっかけや狙いは何でしょうか。

 一般的に全身麻酔手術は、術者と一緒に麻酔科医も対応しますが、手術件数の増加や手術の高度化、そして高齢患者の増加などによって麻酔科医への負担は大きくなっています。

 福井県では麻酔科医の数が十分でなく、術中において研修医の応援は不可欠でした。その際、麻酔薬の管理は数値予測をして、それに沿った作業を進めるように指示をしていました。この実績が積み重なっていくうちに、医療機器に連動させることができないかと考えついたのです。

 このような研究は、世界各地で長年行われていたものの、製品化はできていません。近年、薬を切ればすぐ目覚める、つまり調整のしやすい薬剤が登場したり、注入の精度が高いシリンジポンプが開発されたりしています。さらに、高度なコンピューターの小型化も進み、自動化への環境が整ってきたのです。

—今後どのような可能性が広がりますか。

 現状のシステムは、全身麻酔のすべてを自動化するというようなものではありません。あくまで患者さんの状態が安定している時は、「ロボット麻酔システム」が全身状態や麻酔薬を管理し、その間は麻酔科医が術中に必要な別の作業をするなど仕事を分担できないかと考えています。

 例えば、旅客機の操縦も自動操縦によってパイロットの負担が一部軽減されます。自動車の運転も、自動運転技術の実用化が実現しようとしています。バイタルサインの長時間の監視、単純な実務など一部の作業をロボットが担うことで麻酔科医の負担が軽減します。これは医療安全の面にも貢献すると考えています。

 まずはプロトタイプを作り、問題点や課題をより明確にしたいと考えています。良性疾患でリスクの少ない患者さんへの適応からスタートしたいと思います。将来的には複数の手術をすることや遠隔での操作も不可能ではないと思います。

 「もう製品化されましたか」と問い合わせがあるほど、現場の期待は大きく、私たちも責任の重さを感じています。

福井大学医学部 器官制御医学講座 麻酔・蘇生学分野
福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23―3
☎0776―61―3111(代表)
https://www.med.ufukui.ac.jp/laboratory/anesthesiology/

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