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ロボット支援手術の課題と今後の展望

ロボット支援手術の課題と今後の展望

佐賀大学医学部一般・消化器外科学講座 能城 浩和 教授(のしろ・ひろかず)
1985年九州大学医学部卒業。同第一外科(現:臨床・腫瘍外科)
九州厚生年金病院(現:九州病院)外科部長などを経て、2010年から現職。

 消化管(胃・食道・直腸)領域のロボット支援手術が保険適用となって1年余り。適用後の医療現場における状況の変化、課題、そして今後の展望について、ロボット支援手術のけん引者でもある能城浩和教授に聞いた。

―保険適用後の変化は。

 保険適用以前は、費用は患者さんがすべて負担。私たち医師は、ロボット支援手術に自信があっても、積極的に提示できませんでした。しかし適用後は、患者さんに他の手段と同じように選択肢として示し、比較してもらえるようになりました。

 当院では適用後、食道がん、直腸がんの手術は全例でロボット支援手術が選ばれています。食道がん手術では1割未満だったものが、今は100%ですから、これは大きな違いです。

 ロボット支援手術の最も大きなメリットは、合併症が激減すること。特に胃がん手術では、2014年から2017年の全国336例の集計で、腹腔鏡手術よりも統計的に下回ったことが証明されています。

 合併症が少なければ入院期間が短くなります。合併症の有無が生死を分ける場合もありますから、大きなメリットであると言えるでしょう。

 直腸がん手術では、日本には名医が多く、腹腔鏡手術でも非常に良い成績を挙げています。合併症がもともと少ない手術では腹腔鏡手術を選択するという努力もするべきだと思います。

―課題は。

 全国的には、ロボット支援手術は増えています。しかし、九州ではまだまだ進んでいません。理由の一つとして、患者さんの意識の違いがあるのではないかと感じています。

 関東や関西では患者さんがセカンドオピニオンを受ける意識が高く、平均2・5件の病院を回るというデータもある。その上でロボット支援手術を選択される方も多くいます。

 一方、九州は「(かかりつけの)お医者さんにお任せ」という方が、比較的多い。患者さんに、もっとセカンドオピニオンの意識を持っていただけるような啓発と、ロボット支援手術を選択肢に入れていただけるような仕組みの構築、人材育成を進めていきたいと考えています。

 ただハードルもあります。ロボット支援手術を開始する場合、指導医を呼び、講習を受けて、安全を担保した上で手術を行いますが、指導医を派遣できるのが九州には佐賀大学医学部しかありません。指導医が圧倒的に少ないのです。

 私も、一時期、指導のために毎週どこかの病院に出かけていました。各地の大学病院で指導医が育つように協力していきながら、ロボット支援手術の裾野を広げていかなければならないと思っています。

 また、ロボット支援手術が保険収載されたといっても、今はまだ導入によって加点がされるわけではありません。何億もする機器を導入するわけですから経営面で躊躇(ちゅうちょ)される医療機関もあるわけです。導入したとしても操作、知識の習得にはある程度の
時間がかかります。

―この分野のけん引者としての抱負と今後の展望は。

 とにかく、安全にロボット支援手術を導入してもらえる基盤づくりが重要です。もともと日本外科学会では、全国の手術例を登録制にして、何か起きた場合の検証に利用しています。ロボット支援手術の登録も義務化すれば、全国的な観点から安全性を突き詰めていくことができます。臨床件数が増え、結果を示すことができれば、保険点数の加点にもつながると期待しています。

 手術が自動化できるようになるまでには、まだ時間がかかると思いますが、着実に進んでいくでしょう。今はまだ実験段階である遠隔操作での手術も、現実味を帯びていくはずです。今の進歩が、外科医不足の解消にもつながるはずだと期待感を持っています。

佐賀大学医学部 一般・消化器外科学講座
佐賀市鍋島5─1─1
☎0952─31─6511(代表)
http://www.surgery.med.saga-u.ac.jp/

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