九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

ロボットの進化が生み出す人工関節のパラダイムシフト

ロボットの進化が生み出す人工関節のパラダイムシフト


主任教授(あかぎ・まさお)

1983年京都大学医学部卒業。米ロマリンダ大学人工関節摩耗学研究所、
近畿大学医学部整形外科学教授などを経て、2012年から現職。
近畿大学医学部教学部長兼任。

 2017年4月、赤木將男教授らは「近畿大学医学部附属病院(現:近畿大学病院)人工関節センター」を設立。2019年4月、日本初導入の人工膝関節手術支援ロボットによる単顆人工膝手術(UKA)を実施した。人工関節のエキスパートは、手術支援ロボットの将来をどう見据えているのか。

―「人工関節センター」の役割とは。

 強力な他科のバックアップのもと、総合的な医療を行えることが一番の強み。併存症のある患者さんにも幅広く対応しています。他で断られた方、例えばうつ病や統合失調症の患者さんも精神科と薬物コントロールしながら診ています。

 手術件数は年間250件弱。キャパシティーの関係で受け入れには限界がありますが、手技を向上して患者の負担を減らし、術後回復を早め、在院日数を減らす努力を続けています。

 入院は人工膝関節で2週間、人工股関節で2週間半から3週間ほど。再手術や難治症例、歩けなくなった方への手術では長くなりがちです。ただこの1年で地域連携がずいぶん進んで後方支援病院が増えましたので、入院期間はそれほど延びていません。

―人工膝関節手術支援ロボットを導入しました。

 1週間に1件のペースで手術しています。件数が限られる中で適用となる症例は、比較的軽症の変形性膝関節症。前十字靱帯(じんたい)を温存する人工膝関節置換術に、最も能力を発揮できるからです。

 重度の方に行う全人工膝関節置換術(TKA)は手技が確立されていて従来の方法で多くの症例に対応できます。ただ、前十字靱帯を残すとなると急激に難度が高くなる。そこで役立つのがロボットの機能。赤外線カメラで得られる情報をもとに術中にプランニングし、高精度でインプラントを設置することで術後の膝機能を最大化できます。

 しかし、保険収載されていないことから、まだ積極的に広げていく体制にはなっていないのが現状です。

 すでに日本に6台が導入された今、保険適用を国に認めてもらうための働きかけが必要です。具体的には、導入施設に声をかけて研究チームを作り、有効性をデータで示してエビデンスを積み重ねていく作業です。数年かかると思いますが、今後の発展のために自ら取り組んでいかなくてはと考えています。

―今後の展開は。

 前十字靱帯を残したTKAで元の膝を「再現」する。これはある意味、人間の能力を超えた手術。そこにコンピューターの価値があるわけです。

 ロボット支援手術は、従来とは全くコンセプトが異なるもの。例えば今、膝のアライメントの角度などは2次元パラメータで計算していますが、3次元データを用いることで限りなく正解に近づく。二つの球体を重ねたときに球面がピタッと誤差なく合わさるよう設計するイメージです。

 しかし、現段階ではここまでは実現できていません。だからこそパラダイムシフトとなる手法だという前提でソフトとハードの両方を改善してこそ意味がある。そうメーカーのエンジニアと話し合ってきました。人工知能(AI)の学習能力をもってすれば、いずれ実現できると信じています。

 人工関節置換術は、多くの人に満足をもたらしています。持って生まれた膝を取り戻したい、あと10年、15年スポーツを楽しみたいという50代、60代にとっては、前十字靱帯を温存する意義は大きい。それを実現するのが、ロボット支援手術なのです。

 「病気はその臓器があることを意識することだ」という言葉があります。関節も同じ。あることを忘れて運動や旅行、生活を楽しむことができたら最高でしょう。そんな人を1人でも増やせたらいいですね。

近畿大学医学部整形外科学
大阪府大阪狭山市大野東377―2
☎072―366―0221(代表)
https://www.med.kindai.ac.jp/ortho/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる