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産業医科大学医学部 第1内科学講座 リウマチ・膠原病の寛解・治癒を目指す

産業医科大学医学部 第1内科学講座 リウマチ・膠原病の寛解・治癒を目指す

田中 良哉  教授(たなか ・よしや)
1984年産業医科大学医学部卒業。米NIH(国立衛生研究所)客員
研究員、産業医科大学医学部第1内科学講座講師などを経て、
2000年から現職。

 患者第一の姿勢でリウマチ・膠原(こうげん)病の寛解・治癒に取り組んできた田中良哉教授。地域医療を支えながら、新たな治療法に挑み、その研究成果が世界に認められている。これまでの歩みと、今後の抱負を聞いた。


―就任から約20年です。

 就任した2000年前後は、関節リウマチを取り巻く状況が大きく変化した時期。免疫抑制薬を使った疾患制御が可能になり、ほとんどの方が関節変形を免れ、寛解に入ることができるようになりました。

 一方、日本における免疫抑制薬メトトレキサートや生物学的製剤の承認には、欧米と比較して5年から10年のドラッグ・ラグがあり、国際的な治験にも参加できない状況で、まず、このドラッグ・ラグをなくすことが私の大きな目
標でした。ドラッグ・ラグを解消しようという厚生労働省の方針もありましたが、治験を行っている世界のトップリーダーの一員になるため、留学時のコネクションなどを生かし研究者、製薬会社とのつながりを深めてきました。そのうち「日本も治験の対象施設に」と声がかかり、現在は欧米と同等のスピード、むしろ早く承認される薬剤もでてきています。

 北九州市唯一の大学病院として地域医療にも取り組んでいます。就任当時、市内にリウマチ・膠原病を診ている病院が少なく、地域の基幹病院に出張外来を実施しました。これにより紹介・逆紹介といった医療連携がスムーズになり、特に重症かつ新しい治療法が必要な患者さんを引き受けられるようになっています。

 生物学的製剤やJAK阻害剤などの治療を受ける患者さんには、短期間の入院で生活指導や検査を行うクリニカルパスを行い、当教室のレジストリに全員が登録しています。登録者は、福岡県西部と山口県、大分県などを中心に約4200人になりました。

 このレジストリは、治験や臨床試験、研究に非常に有益で、若手医師の教育にも役立っています。ドラッグ・ラグをなくすための国際的な努力、地域医療ネットワーク構築、レジストリ登録という三つの取り組みがつながり、一定の成果を上げたと考えています。


―人材育成について。

 現在、大学院生が20人、留学生が10人います。火曜の教授回診前にはカンファレンスを行い、新規入院患者全員について、主訴や症状、病歴、診察所見、検査成績、画像所見などをA4用紙2ページのレポートにまとめ発表してもらいます。良い教育になると同時に、われわれも全員の患者さんを把握して治療方針を決めることができます。

 膠原病やリウマチは、内視鏡や手術で治す病気ではありません。まず全身をしっかりと見て触れて診察しないと、診断も治療もできない疾患です。まずは心を込めて、手を当てて診察することが、全ての治療の始まりだと考えています。


―今後は。

 関節リウマチの寛解後に、生物学的製剤を休薬する「ドラッグホリデー」の研究が、2010年の欧州リウマチ学会において「EULAR Award」を受賞。同学会のガイドラインや治療アルゴリズムにも影響を与えました。現在は、関節リウマチの寛解から治癒を目指し、二者を分けるものは何なのかを調べています。

 アジア太平洋リウマチ学会の副理事長と学術委員長を兼任し、地域特性や経済力を加味した上で、全身性エリテマトーデスの治療ガイドライン、リウマチ患者さんのCOVID― 19対応ガイドラインも発表。学生には「自分や大学、日本だけのために働くわけではない」ということも伝えたいと思っています。

 21年8月中旬、米国で全身性エリテマトーデスの新薬が承認されました。日本でも治験も進み、承認される見込みです。今後も世界と同等のスピードで、医療を発展させていきます。



●産業医科大学医学部 第1内科学講座
北九州市八幡西区医生ケ丘1─1 ☎093─603─1611(代表)) 
https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/1nai/intro_j.html

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