スポーツ医の役割は、アスリートを最大限輝かせること

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医療法人利光会 五反田病院
五反田 清和 院長

2005年久留米大学医学部卒業。
済生会二日市病院、同福岡総合病院、同日田病院を経て2016年から現職。
日本体育協会公認スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医。
2014年から7人制ラグビー日本代表チームドクター。
2020東京オリンピック強化スタッフ。

 ラグビー 経験のある五反田清和院長。自身の経験も生かしながら、子どもから高齢者まで、また地域でスポーツを楽しむアマチュアから世界で戦う日本代表選手まで、医師としてサポートしている。スポーツドクターの現況と展望を聞いた。

―スポーツドクターの現状について。

 スポーツにおける救急処置の国際資格「PHICIS(Pre Hospital Immediate Care In Sports)& ICIR(Immediate Care In Rugby) 」を持つスポーツドクターは、5年ほど前、国内で数人程度でした。この資格がないと国際試合の現場に立てないのです。香港とロンドンでしか受験できなかったのが一因で、東京オリンピックを視野に国際資格を持つドクターの養成が急務でした。

 2019年、日本でラグビーW杯が開催された影響もあって東京での受験が可能になった結果、取得者数は約300人になりました。

 ドクターの数や、高気圧酸素治療装置を備えた大規模病院、外傷に対応する拠点病院は十分整っており、世界水準に達していると思います。ただ、英国やアメリカはピッチサイドケアの方法など新しい研究が日々進んでいて、日本もそこから学んでいる状況です。

 私は7人制ラグビー日本代表のチームドクターとして海外遠征にも帯同しています。東京五輪の強化スタッフも務めており、7人制ラグビー日本代表選手をサポートします。

 すべての競技においてスポーツ選手が輝けるのは一瞬です。その一瞬のために数年間、ドクター、トレーナー、コーチ、栄養士、フィジカルコーチなど多職種によるチームが一つになって、選手をしっかり輝かせることに重きを置いています。

 大切なのはチームと選手、サポートチーム内のコミュニケーションです。例えば鹿児島県で合宿中にケガをした場合、県内または九州での初期治療の後、すぐに東京に連れて帰るというメディカルネットワークが国内では構築されています。

 特にラグビーの分野では、メディカルディレクターが各地方都市の医療機関と連絡を取り合っていますので、選手は安心して戦える環境だと思います。

 海外だと、欧米や豪州など先進国には後方支援病院があるので、事前に協力依頼をしています。医療施設が十分でない国だと、その日のうちに帰国させて手術したケースもあります。遠征チームに帯同するドクターは、現場で迅速・的確な診断をするために超音波診断装置を持参しています。

―地域との関わりは。

 近年は、スポーツをしている子であっても、体が硬くて体幹が弱いことが多いので、地域の高校の要請でスポーツ専門のトレーナーを派遣して体を痛めない指導をしています。

 サポートしている高校は複数あり、部活は野球部、ラグビー部、バスケットボール部など。関わって3年目で甲子園に出場したチームもあります。病院併設のメディカルフィットネスジムの会員は小学生から現役のアスリートまで約400人。夕方から夜にかけて、小中高生が多数来院するので、病院はにぎやかになります。高齢の患者さんと子どもたちが仲良くなって会話が弾み、病院全体が明るくなりました。今までになかった新しいコミュニティーが生まれたような感じです。

 地域での取り組みで体づくりの意識が高い中高生が増えてきました。その中から一つ上の世界で輝けるアスリートが育ってくれたらいいなと期待しています。

 東京オリンピックはゴールではなく、暑さの中で戦う方法など、次の世代に何を残せるか試される機会だと思います。

 クラブチームであれ部活動であれ、多職種の専門家や保護者がチームを支える体制を整えていく文化が定着することが大切です。モデルケースを当院がつくれたらうれしいですね。

医療法人利光会 五反田病院
大分県日田市若宮町395―1
☎0973―23―8386(代表)
http://gotanda-hospital.jp/

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