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ジェネラルな視点も持ち呼吸器の専門性を究める

ジェネラルな視点も持ち呼吸器の専門性を究める

   矢寺  和博 教授(やてら・かずひろ)
1994年産業医科大学医学部卒業、同第2内科・呼吸器科入局。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学留学、産業医科大学病院感染制御部、
同呼吸器病センター部長などを経て、2016年から現職。

 地域の中核医療機関である産業医科大学病院。「呼吸器病センター」を設置し、患者の受け入れも工夫する。呼吸器疾患の診療には「人としての優しさが必要」という矢寺和博教授に考えを聞いた。

―呼吸器疾患の現状は。

 10~20年前と比べて呼吸器疾患の患者さんの高齢化が明らかで、特に肺がんと肺炎で顕著です。呼吸器疾患によって当院に入院する方の約6割も肺がん。今後は75歳以上の肺がん患者の増加が予想され、これらの患者さんの多くは同時に心疾患や腎疾患なども伴います。

 呼吸器内科医といっても肺がんだけでなく、内科医として全人的に対応する必要があります。肺がんは新たな治療法や新薬の登場も目覚ましく、選択肢が広がるのはいいことですが、特に高齢者にとっては治療・検査内容が複雑で理解が難しい状況です。

 高齢の患者さんの場合には初診の段階で、意思決定で重要な役割を果たす「キーパーソン」を定めることを徹底。キーパーソンが居住する地域の病院に転院していただき、治療を開始するケースもあります。単に病態を診るのではなく、家庭の状況まで見極めて検査や治療を開始することが重要だと考えています。

 高齢化に比例して、誤嚥(ごえん)性肺炎も増えており、肺炎で亡くなる方も多くいます。呼吸器疾患は直接的に死に関わる可能性もあります。患者さんがどのように人生を終えたいかまでともに考え、寄り添って治療していく必要がある領域です。

―「呼吸器病センター」の現状はいかがでしょうか。

 2015年10月に呼吸器・胸部外科と呼吸器内科が連携した「呼吸器病センター」を開設しました。特定の施設や部屋があるわけではなく、他病院やクリニックの医師からの問い合わせを医師が直接受けるための相談窓口で、直通の電話番号を近隣施設に周知しています。

 外科と内科どちらに紹介していいのか判断が難しい肺がんや、気胸、肺炎、間質性肺炎などの疾患に、両科のへだたりなくお答えします。呼吸器は内科と外科の領域が重なる疾患が多く存在します。手術ができる症例は外科の先生にすばやく情報共有するなど、スピーディーで適切な治療につながっています。

 この窓口を通したやりとりを繰り返すことで、他院の先生方にも、呼吸器疾患に対する理解が進んでいる実感があります。

 ただ、呼吸器病センターができたことによる一番の効果は、広報の部分。内科と外科がタイアップし、呼吸器疾患に集学的治療を提供していることを周知できたことだと思います。

―今後の展望は。

 課題は病病連携、病診連携です。当院で呼吸器疾患があるすべての患者さんを受け入れるのは困難です。呼吸器の専門医がいない病院に、当院の医師を定期的に派遣することで、軽症の方への対応や緊急時の処置といった専門的なアドバイスをする試みも始めています。こうしたネットワークを通し、対面での関係構築を図ることが、信頼関係を築く上でとても大切だと思います。

 呼吸器内科医に向いている人がどんな人かと問われれば、私は、全人的な対応ができる「人として優しい人」と答えます。

 呼吸器疾患は、根治が難しいものも多く、必然的に、医師と患者さんがお付き合いする期間が長くなる。患者さんの人生を最後まで設計する必要のある分野だからこそ、「何とかしてあげたい」という気持ちで丁寧に診る人材が育てば、患者さんにとっても、非常に安心です。

 またアレルギーや悪性腫瘍、間質性肺炎、膠原病、感染症、COPDと専門性も幅広く、研究も深く掘り下げられる分野です。私も専門の一つである職業性肺・胸膜疾患に関して引き続き粉塵解析の研究を進めるなど、新たな健康障害の予防に努めていきます。


産業医科大学医学部 呼吸器内科学
福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1―1
☎093―603―1611(代表)
http://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/kokyuki/


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