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シミュレーション教育で単科大学の弱みを強みへ

シミュレーション教育で単科大学の弱みを強みへ

 片野  光男 学長 (かたの・みつお )
1974年九州大学医学部卒業、同第一外科入局。九州大学大学院医学系研究科腫瘍制御学分野教授、
九州大学大学院医学研究院長などを経て、2015年から現職。

  開学以来10年、全国的にも珍しい看護に特化した「シミュレーション教育センター」をはじめ、附属病院を持たない看護大学であることを逆手に、常に新しい挑戦を続ける。

―なぜシミュレーション教育が必要なのでしょうか。

 看護師に求められているのは、今も昔も「優しさ」。ただ、働く現場では、優しさだけでは難しいものがあります。人に優しくあるためには、豊かな人間性、そして知識と専門性を伴った「強さ」を身に付ける必要があります。

 しかし、それらを身に付ける臨床実習の現場は基幹病院が中心で、高度な医療技術を必要とする患者さんが多くいます。その中で、実習生や若手が経験できることは非常に限られています。さらに、現場は人材育成に対しての人的、時間的余裕がなくなっており、即戦力となる看護師が必要とされています。

 その結果としてできたのが本学の「シミュレーション教育センター」です。ここでは失敗が許されますし、教員が見守りながら育てていくことが可能です。

 シミュレーション教育センターがある大学は他にもありますが、主に医学生が利用します。でも、ここは看護だけ。実習についても、この大学は附属病院がないだけに、学生はインターンシップさながらに、2年次から10~20もの病院で臨地実習を行います。学生たちは、これらの経験から自分に合う病院がどういうところなのかマッチングがよくでき、就職率も100%となっています。


―どのような実践教育が行われていますか。

 「シミュレーション教育センター」では、臨地実習先の病院との連携教育を行っており、実習先の若手を指導している看護師の方に来ていただいています。また、全領域の教員が一丸となってカリキュラムを作成する必要があり、教員のモチベーションが高まるきっかけにもなりました。

 学生にとっては、楽しく学べる場であると同時に、気の引き締まる場でもあるでしょう。同級生の前でシミュレーションをして恥ずかしい思いをすることもありますし、優れている学生と自分自身との差を感じることもあります。

 しかし、それらを乗り越えて、自分に足りないこと、できることを感じとってほしい。技術だけではありません。例えば患者さんが亡くなった時のシミュレーションでは、音をたてない、雑談をしないといったことも覚えていきます。国家試験に直結するわけではありませんが、「疑似体験することで自信を持つ」ことが大切だと思います。

 日本でも珍しい試みですので、全国はもちろん、看護大学を計画している海外からも見学の方が訪れています。自由な発想ができる大学だからこそできたこのセンターが、今は大学のシンボルになりました。


―新コースが設置されました。今後の計画について。

 2018年4月には「多言語医療支援コース」を設置し、今は教員育成のための大学院設立に向けて動いています。

 多言語医療支援コースでは、外国語で専門的な話ができる看護師を育成。海外で活躍するためだけでなく、日本にやってくる外国人に質の高い医療を提供するためにも必要な力を養います。3、4年次には同じ法人の福岡女学院大学で英語の授業が受けられます。

 他にも「グリーンキャンパス構想」としてオリーブ基金を設置。寄付を募り学内を200本のオリーブの森で彩る計画があります。また、パソコン上の仮想の街で、住民の健康状態や家族や生活環境なども考慮しながら看護のシミュレーションができる教材「ミッションタウン」の開発も行っています。

 この大学は「不便な場所にある」「附属病院を持たない」「歴史も浅い」という点を逆手にとって、だからこそできる新しい挑戦を、これからも続けていきたいと思います。


福岡女学院看護大学
福岡県古賀市千鳥1―1―7
☎092―943―4174(代表)
https://ns.fukujo.ac.jp/


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