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コンセプトは「命の未来」予防の価値を提示したい

コンセプトは「命の未来」予防の価値を提示したい

 山形 専 院長(やまがた・せん)
1975年金沢大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院、米バロー神経学研究所、
国立循環器病センター(現:国立循環器病研究センター)、
倉敷中央病院副院長などを経て、2016年から現職。

 3月、米ニューズウイークが発表した病院ランキング日本部門において、地方の病院としては異例の第3位にランクイン。これまでもたびたび注目されてきた倉敷中央病院の最新の挑戦は、今年6月にオープンする「予防医療プラザ」だ。そのキーワードは「未来」。果たして、どのような医療を提示しようとしているのか─。

―どのような施設ですか。

 当院は1987年に「総合保健管理センター」を設立。年間延べ約4万3000人(2018年度)の人間ドックや各種健診を受け入れてきました。近年、受診希望者が増加し、数カ月待ちの状況が続いていました。

 予防医療プラザの面積は、現センターの約3倍。年間6万人の受け入れが可能です。コンセプトは「自分のいのちの未来を見よう」。NECのAI技術を用いた健康診断シミュレーションを導入しています。健診結果をもとに「未来の健康状態」を予測。それぞれの人に合ったヘルスプランを提案します。どんな行動変容があれば改善できるのか、患者さんに提示するのです。

 患者さんは、病気が発見されれば治療を受けたいと思われます。でも血糖値が少し高い程度では、なかなか受診に至らない。数値が何を意味しているのか、実感できないのです。過去に蓄積された当院の診療データと生活習慣の関連性を解析すると、その方の数年後、将来的には数十年後の健康状態が予測できます。

 どんな病気になるリスクが高いのか。そのリスクに対して今できることは何か。個々に応じた検診のプランを立てることができるのです。もちろん、リスクの低い項目の検査を取り除くこともできます。発症の可能性 が高い疾患に焦点を当てた検診というわけです。


―なぜ予防医療プラザをつくろうと。

 背景には「予防の価値」が各段に高まったことがあります。検査で脳動脈瘤(りゅう)が見つかったとしましょう。以前なら命がけだった治療も、現在の医療なら「危なくなったら治療」という選択肢があります。「見つける意味」が以前とは違うのです。

 もう一つの理由は高度医療です。ゲノム医療などが進めば進むほど、医療費は膨らんでいく。現行の保険制度のもとでは成り立たなくなるでしょう。症状を自覚したら病院に行く。そうではなく「病気にならないようにする」のが、医療の本来の役割の一つだと思うのです。

 地域のみなさんにその重要性を知っていただきたいと思い、予防医療プラザの1階にイベントスペースも設けました。意識の向上を呼びかけ、未病対策の発信に努めたいと思います。


―これからの医療機関のあり方をどう考えますか。

 当院は、2021年までの第4次中期経営計画の中で五つのテーマを掲げています。「高度専門医療の整備」「地域に信頼される救命救急センターとしての役割を果たす」「トリアージ機能の高度化」「デスティネーション医療の確立」「予防医療の強化」です。

 最初の二つは現時点の医療課題。残る三つは10~20年先の医療の姿を見据えた目標です。これから本格的に人口減の社会が到来します。高度急性期病院のあり方は、大きく転換していかざるを得ないでしょう。

 病院が単独で考えるのではなく、地域の各病院が有機的につながるトリアージシステムをつくる。患者さんにより適した医療を提供するために、効果的な人材や医療資源を活用する「ボーダレス医療チーム」が活動する環境にする。こうした取り組みが重要だと考えています。

 予防医療プラザは、私たちがイメージする「未来の医療」の象徴の一つです。AIやロボット、ゲノム。新しい時代に、常に対応できる病院でありたいと思っています。


倉敷中央病院
岡山県倉敷市美和1―1―1
☎086─422─0210(代表)
https://www.kchnet.or.jp/

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