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グローバルな知識をローカルな活動に

グローバルな知識をローカルな活動に


センター長・特任教授(たかはし・ひろかず)

2002年佐賀大学医学部卒業。米ハーバード大学医学部、
佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科、同診療准教授などを経て、2020年から現職。

 佐賀県の肝がん対策の中心を担う佐賀大学医学部附属病院肝疾患センターに、高橋宏和センター長が就任した。啓発のためのユニークな施策や、根底にある思いなどを聞いた。

肝疾患予防に多方面と連携

 「肝がんは、肝機能の異常がない〝元気な肝臓〟には、ほぼできません。裏を返せば、肝疾患の予防・治療ができれば、100%なくすことができるのです」

 肝臓の専門医としてキャリアを積んできた。「沈黙の臓器」とも呼ばれる肝臓は、異常があっても自覚症状が出にくいため、肝臓に異常がある患者を早期に発見し、医療につなげるアプローチを重視する。

 「肝がんの背景となる肝疾患は、主にB・C型肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性肝疾患があります。この四つに対する啓発活動と、継続的な検査、治療、フォローアップが大切です」と力説する。

 そのための各種施策は、初代センター長で、前任の江口有一郎医師(現:医療法人ロコメディカル副理事長)から引き継ぎ、県、県医師会などと連携。2012〜13年は地元出身のタレント・はなわさんを起用してテレビCMを展開。「(検査に)い肝(かん)ば、い肝(かん)」と佐賀弁のキャッチフレーズで啓発を図った。さらに県内のイベントやJリーグの試合などにブースを出し、肝炎の無料検査も実施した。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、各種イベントが制限された2020年もウェブでの発信に加え、地元紙・佐賀新聞とのコラボレーションで「佐賀肝聞」と題した冊子を折り込み配布。「最も注意喚起したい世代である50〜60代に最も届きやすい方法を」と考えたという。

佐賀県の肝がん対策 新たなステージに移行

 こうした取り組みの背景には、佐賀県の「不名誉な数字」がある。1998年以降、肝がんの粗死亡率で全国ワーストの状況が続いていた。「そもそも佐賀県はC型肝炎の罹患(りかん)率が高い県でした」。そこで、まず肝炎の検査を呼びかけ、ハイリスク患者をピックアップしてきた。

 2018年には、肝がん粗死亡率の全国ワーストを20年ぶりに脱却。折しも次なるステージへ踏み出すタイミングで、センター長のバトンを託された。「良い流れを断ち切らず、佐賀県の肝がん対策を継続、加速していくことが最初の抱負になります」

 注目しているのは、肝炎医療コーディネーターの養成。県内では現在、1300人超が登録されている。「患者に対するアンケートで受診の動機を聞くと、最も効果があったのが、かかりつけの医師や看護師、保健師の『一押し』。行動変容にはコミュニケーションが一番大切だとわかり、肝炎を広く啓発する人材である肝炎医療コーディネーターに期待しています」と話す。

米留学で価値観形成 知見を地域に

 草の根まで分け入る取り組みのバックボーンには、グローバルな体験がある。2012年、米ハーバード大医学部ジョスリン糖尿病センターに留学。「研究に対するマンパワーの割き方、予算、情報の速さなどに驚きました」と振り返る。

 現在も、日夜を問わず米欧の研究者らと情報交換。「地球上では誰かが起きているので、メールボックスを開くのが怖い」と笑いながら、収集した最先端の知見を地域に還元するのが使命だと言葉に熱をこめる。

 「グローバルな知識をローカルな活動につなげたい。病院での診療だけではなく、地域に対する啓発というアクションが加わり、非常にやりがいを持って仕事をしています」

佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター
佐賀市鍋島5ー1ー1 ☎0952ー31ー6511(代表)
https://sagankan.med.saga-u.ac.jp/

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