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キャリアを積み上げるために大切なのは?女性医師たちの視点は

キャリアを積み上げるために大切なのは?女性医師たちの視点は

 女性医師の割合はおよそ4人に1人(2016年「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より)。年代が下がるほど多くなる傾向にある。出産、育児、介護などのライフイベントとキャリアの両立をどう捉えるか。働き方改革は、女性医師の意識をどのように変えていくのか―。九州大学第三内科(病態制御内科学)女性医師の会「」メンバーたちの視点を通して、多様な人材の活用について考える。

将来をイメージするための「見本」が少ない

(おかだ・やすよ)氏
1977年九州大学医学部卒業。
社会保険仲原病院統括診療顧問

 「医学部生100人のうち女性は6〜7人ほど。当時は『女性医師は必要ない』と、公然と入局を拒否されることもあった時代です。私を含めて3人の女性医師が同時に入局するなんて、極めて異例のことでした」

 九州大学第三内科(病態制御内科学)女性医師の会「すずらんの会」の会長を務める岡田泰代氏(社会保険仲原病院統括診療顧問)は、1977年の入局当時を振り返る。

 「第三内科で当直した女性は私が初めてだったそうです。男女別に部屋が用意されているわけではありませんでしたから、当時の看護師長が心配してわざわざ掃除をしてくださって」

 さまざまな面で環境は整っていなかったが、業務内容や給与などの面で性別の差はないように感じていた。「その時代の社会においては、平等な世界だったのではないか」

ただ、「やはりガラスの天井が根強く残っていることはたしかだったと思う」と言うのは、岡田会長と同じく1997年第三内科入局組の1人、津田博子副会長(中村学園大学栄養科学部・栄養科学研究科教授)だ。

(つだ・ひろこ)氏
1977年鹿児島大学医学部卒業。
中村学園大学栄養科学部・栄養科学研究科教授

 「今はまさに分岐点。トビラは開かれつつあるのだから、若い人たちがキャリアを中断してしまうのはもったいないと思います」

 すずらんの会が発足したのは1989年。第三内科の女性医師は10人ほどになっていた。医局を円滑に運営していく上で、女性医師たちの意見を取りまとめたり、支えあったりできる仕組みが必要ではないか。そんな機運が高まったことで活動が始まった。

 定期的に集まる機会を設けていたが、年々人数が増えたことで、連絡が途絶えがちになる者もいた。10年間ほどの活動の後に、休止期間に。その後も入局者は右肩上がりで、現在160人を超える。

第三内科 女性医師の入局者数

 2016年に就任した小川佳宏教授による「女性の力を医局の柱に」との呼びかけもあって、かねてから活動を再開させたいと考えていた岡田氏が会長に就任。2018年3月の第1回総会、今年2月の第2回総会の開催にこぎ着け、それぞれ50人ほどが参加した。

 「全員にひと言ずつ挨拶(あいさつ)していただいたら、苦労した経験談や、職場ではきっと話しづらいような悩みなども続々と打ち明けてくれた。聞いてもらえる場所を求めていたのでしょう」(岡田会長)



女性医師だけの集まり 必要なくなる時代に

(まとば・ゆか)氏
1996年大分大学医学部卒業。
国立病院機構小倉医療センター糖尿病・
内分泌代謝内科科長

 1996年入局の的場ゆか氏(小倉医療センター糖尿病・内分泌代謝内科科長)は「中間」の世代。出産、子育てを経験し、キャリアの積み上げのさなかにいる。「後輩たちに背中を見せなければと意識することもあります。何か壁にぶつかったときに会の先輩方から『がんばって』と声をかけられることで、一人ではないという気持ちになりますね」

 いったん現場を離れると「前と同じようには働けなくなるのではないか」「ブランクがあることで迷惑をかけてしまうかもしれない」といった不安を感じる女性医師は少なくない。

 「睡眠時間を削って働くことが評価される時代があった。でも、男性も含めてそもそもすべての医師がそんな働き方を継続できるわけがない。みんなで仕事をシェアする方向に進めば、多様な人材を生かすことができる。女性が活躍できる機会は広がっていくと思う」

 若手の意識は、少しずつ「チャンスを逃したくない」との思いに傾いている。小倉医療センター糖尿病・内分泌代謝内科に勤務する谷口亮子医師は、出産しておよそ8カ月後に常勤医として復帰した。「やめずに働き続けることが第一。専門医の取得を目指している」

 また「認定医や専門医の取得とライフイベントの時期を事前にイメージしていた」と言う同科の田中奈津子医師は2度の出産を経験。4年ぶりに本格的な現場復帰を果たした。「手探りの部分もあったが、周囲のサポートで徐々に自信を取り戻している。誰かの役に立てるのがうれしい」

 柴田茉祐医師(九州労災病院内分泌代謝・糖尿病内科/内科専攻医)は「ずっと働きたいと考えています。すずらんの会で実際に復帰した方々の話を聞いて、やはり続けたいと感じました」

 彼女たちのように前向きに乗り越えるすべがあることを、復帰を悩んでいる人に届けられる場にもなれば。すずらんの会の役割について、的場氏は言葉に力を込める。

(左から)田中奈津子医師、柴田茉祐医師、谷口亮子医師

 すずらんの会の活動が刺激となって、九州大学の他の診療科でも、女性医師の会を結成しようとの動きもあるという。今は課題をどう解決していくかに重点が置かれているが、「いずれジェンダーの違いを意識する必要のない環境へと向かっていくのが理想」と津田氏。そして、岡田氏も声をそろえる。「女性医師だけで集まることに違和感がある、そんな感覚が当たり前の時代になればいい」



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