九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

オンライン診療の活用で「働く人」の支援を

オンライン診療の活用で「働く人」の支援を

 2月、中部ろうさい病院が「治療と就労の両立支援」の一環として、スマートフォンを活用した「糖尿病のオンライン診療」を開始した。環境さえ整えば勤務先でも受診が可能。通院の負担を軽減し、患者の働き方の可能性を広げる。運用のポイントはどこにあるのか。

◎離脱が多い糖尿病治療受診継続の後押しに

 糖尿病は多くの場合、痛くもかゆくもなく、かなり進行しなければ症状が現れない。治療を中断してしまう人が少なくないのはそのためだ。特に「働き盛り」の世代は多忙なため、医療機関から足が遠のきがち。重症化の一因だ。

 糖尿病の治療をどうやって継続してもらうか? 受診の後押しとして、中部ろうさい病院はオンライン診療の導入を決定。同サービス利用者については毎月の定期的な受診を「対面」から「対面とオンラインを交互」に切り替えた。

 患者は自身のスマートフォンに、オンライン診療サービス「curоn(クロン)」のアプリケーションをダウンロード。インターネット上で「問診・診察・処方・決済」が可能になる。処方せんは自宅へ配送される(医療費のほかにアプリ利用料が必要)。

 予約の日時になれば、医師が患者に電話をかけ、ビデオ通話による診療が始まる。インターネット環境があれば場所は問わないが、プライバシー保護の観点から、第三者が個人情報や診療の内容を知ることができない空間に移動しておく必要がある。

 自宅や職場の会議室などのほか、「車の中」を利用する人もいるという。「便利な使い方に気づかされました」と言うのは、オンライン診療の導入を進めた中心メンバーの1人である医事課の藤田実課長。

 診療担当の医師、患者の勤務先の産業医や上司らが情報を共有できる機能なども備える。望ましい働き方や周囲のサポートを考える上で重要な情報となる。

◎利点を引き出すには相互の協力が不可欠

 2018年の診療報酬改定で「オンライン診療料」などが新設された。同院ではどのような形で取り入れていくべきか、かねてから検討を重ねてきた。

 もちろん、糖尿病の患者すべてがオンライン診療の対象となるわけではない。まずは「働きながら治療を受けている」人で「状態が安定している」ことが条件だ。初診から6カ月以上の対面での診療が必要。オンライン診療を治療に組み込めるかどうかを判断する。

 ポイントとして「医療機関と患者の信頼関係」が挙げられる。外来診療では予約した時間が少々前後することがあるが、医師と患者が離れた場所にいるオンライン診療では、臨機応変な対応がなかなか難しい。患者が勤務中であれば、なおさら時間帯は限られる。

 また、日常的にスマートフォンの操作に慣れている人でなければ、オンライン診療のアプリケーションを使おうにもハードルが高い。ベースは実際に顔を合わせる診療。現時点では、あくまで治療を続けやすくするためのツールの一つと捉えるべきだろう。

 超高齢社会を迎え、高齢者の糖尿病もさらに増加の傾向にあるとされる。3月に公表された厚労省の調査結果によると、糖尿病の患者数は過去最多(2017年患者調査)。

 中部ろうさい病院が立地する名古屋市港区は海に面し、大規模災害発生時の津波を懸念して人口流出も起きているという。「移住が困難な高齢者が地域に残り、高齢化に拍車がかかっている」(今関信夫経営企画係長・情報企画係長)。

 例えば急性増悪を起こした高齢の患者を再び慢性期の状態へ。医療者の意識は「治す」から「治める」への転換が必要だと加藤文彦院長は語る。疾患と付き合いながら誰もが活躍できる社会。オンライン診療も含め、多様な支援の選択肢が求められている。

 

独立行政法人労働者健康安全機構
名古屋市港区港明1─10─6
☎052─652─5511(代表)
http://www.chubuh.johas.go.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる