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オンライン診療による離島型総合病院を目指す

オンライン診療による離島型総合病院を目指す


院長(たけした・かずよし)

1986年滋賀医科大学医学部卒業。
米ピッツバーグ大学留学、奥尻町国民健康保険病院副院長、
岸和田徳洲会病院腹膜播種センター長などを経て、2016年から現職。

 北海道南部の日本海に浮かぶ奥尻島。同島全体を町域とする人口約2600人の奥尻町は、ウニとアワビが人気の漁業と観光のまち。奥尻町国民健康保険病院は同町唯一の医療機関で、島民の健康管理から2次救急まで担っている。竹下和良院長に離島医療の現状と今後の展望を聞いた。

―病院の概要を。

 診療科は5科。ベッド数は急性期病床22、療養病床32、病床稼働率は約60%。年間外来延べ患者数約2万人。年間救急車受け入れ数約70件。うち島外搬送は3割程度です。

 常勤医は私を含め2人。ほかに奥尻島に駐屯する航空自衛隊の医官、当院の支援病院である市立函館病院および東京の病院から派遣される医師、合わせて3人が月10日間程度、外来診療や週末の日当直を応援してくれています。

―冬季の診療について。

 奥尻町の高齢化率は40%を超えています。島民の医療ニーズに応えるには新たな総合病院の整備が理想ですが、慢性的な赤字経営が続く当院のリニューアルは計画されていません。

 当院で対応し切れない診療が必要な患者は、フェリーで本島に渡り江差町などの病院を受診します。夏季は朝夕往復2便運航なので日帰りが可能ですが、冬季は往復1便となり最低でも1泊が必要。患者の時間的、経済的な負担が大きくなります。

 奥尻島は孤島なのでフェリーが数日欠航するだけで食料など日常物資が不足します。病院も治療に必要な血液や薬品が足りなくなることがあります。冬は特に海がしけやすく、島民の不安が高まる時期。悪天候による孤立化は、奥尻町の宿命的な課題です。

―救急搬送の現状を。

 症状が安定しており長時間のコントロールが可能な場合は、フェリーで島外の病院へ搬送します。緊急の場合は、市立函館病院が基地病院となる道南ドクターヘリを要請します。

 夜間や悪天候の場合は、道の防災ヘリ、航空自衛隊の救難ヘリ、海上保安庁の船舶などに応援を求めます。ドクターヘリ以外は当院の医師が同乗しますが、2人しかいないためタイミングによっては対応困難な事態が発生することも。

 また1994年12月、奥尻島に向かっていた航空自衛隊の救難ヘリが悪天候で遭難し、隊員5人の命が失われる事故が起きています。このような危険も常につきまとっています。

―オンライン診療効果は。

 2018年に導入したオンライン診療は、効果を発揮している部分と、期待外れの部分があります。効果を発揮しているのは、当院から車で30分ほど離れた島内唯一の高齢者施設「特養おくしり荘」の診療効率がアップしたこと。従来は月2回往診していましたが、その回数が激減しました。

 救急車にも端末を設置し、患者情報の確認と位置情報の把握が可能になり、当院の受け入れ準備がスムーズになりました。市立函館病院にも端末を設置し、両院の担当医が患者のCT画像などをリアルタイムで共有。ドクターヘリによる救急搬送の必要性、受け入れ可否の判断を行うなど、急患対応が円滑化しています。

 残念だったのは、私の願いだった島外の専門医による遠隔診療が、患者の安全性担保のために設置された制限事項「緊急時に30分以内の対面診療が可能」「3カ月に一度の対面診療が必要」の要件を満たせず実現できなかったことです。

 安全性はかかりつけ医である当院の医師による診療を、遠隔診療と並行して実施することで担保できます。診療報酬は専門医から指示されて実施した検査料や薬剤料を当院へ。遠隔診療を行う専門医がいる病院へは、医学管理料や処方箋料などを支払う。仕組みを工夫すればICTを活用した離島型総合病院も夢ではなくなる。一日も早い実現を望んでいます。

奥尻町国民健康保険病院
北海道奥尻郡奥尻町奥尻462
☎01397―2―3151(代表)
http://okubyouin1.web.fc2.com/

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