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アミロイドーシスの診断は「疑うこと」から始まる

アミロイドーシスの診断は「疑うこと」から始まる


神経難病診療体制構築事業
アミロイドーシス診療センター
山下 太郎 特任教授・センター長(やました・たろう)

1991年熊本大学医学部卒業、1998年同大学院医学研究科修了。
熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)、
独立行政法人国立病院機構熊本南病院神経難病センター長などを経て、
2016年から現職。

 熊本大学病院脳神経内科は家族性アミロイドポリニューロパチーや全身性アミロイドーシスの診断・治療において豊富な実績がある。アミロイドーシス患者の数は増加していくとの見方もある。早期発見・治療で大切なことは。山下太郎特任教授・センター長が答えてくれた。

―カバーする領域は。

 血管障害、パーキンソン病やアルツハイマー病といった変性疾患、さらにはアルツハイマー病による認知症のほか、しびれなどの末梢神経から起こる障害、多発筋炎なども診療しています。

 当教室では、伝統的に熊本県に多く見られる「家族性アミロイドポリニューロパチー」の研究に取り組んでいます。この疾患は、1970年代からその存在が注目され始めました。原因は不明であり、熊本県と長野県に限定的に発生するものだと認識されていました。しかし1990年代に入って、全国各地にも患者が存在することが報告されました。

 現在、九州一円だけでなく、遠くは北海道からも診断や治療の依頼が熊本大学病院に届きます。まずは血液採取による遺伝子検査を実施。診断がついた患者は一度診察にお越しいただき、治療計画を立てていきます。

 家族性アミロイドポリニューロパチーの発症後、生命予後は10年ほどです。症状としては、感覚が鈍くなったり、しびれを感じたりといった変化のほか、体の痛みや激しい下痢、心不全、腎機能障害など、多岐にわたります。認知症の原因になることもあります。線維状の異常なたんぱく質である「アミロイド」が全身のさまざまな臓器に沈着し、症状を引き起こすのです。

 診療の機会が限られているため、診断が難しく、また地域差もあります。熊本県では発症して2年ほどで見つかるケースが多いのですが、それ以外の地域では診断までに4年以上を要することもあります。

―どのような治療法がありますか。

 根治的な治療法として肝移植が有効であることが分かっています。熊本県ではこれまでに53人の患者さんが移植を受けました。経過は比較的良好です。しかしながらドナーが不足しているのが現状。肝移植になかなか至らないのです。

 たんぱく質を安定化してアミロイドの形成や臓器への沈着を抑えるアミロイドーシス治療薬「ビンダケル(一般名:タファミジスメグルミン)」の投与によって、進行を遅らせることが可能です。

 私たちが行った治験では、アミロイドの形成を抑制する「siRNA」の点滴投与で、8割程度の症例で進行を抑えることができました。現在、厚労省の認可を待っているところです。大切なのは早期発見、早期治療です。早く介入するほど薬剤の効果が期待できます。こうした事実について、もっと啓発活動が必要だと感じています。

―大切なのは。

 医師は「疑う」ことが必要です。原因不明の多臓器不全などのケースでは、アミロイドーシスの可能性を考えていただきたいと思っています。

 熊本県におけるアミロイドーシス患者の平均的な発症年齢は30代。親やきょうだいにもアミロイドーシスを発症している患者がいる傾向があります。他の地域の患者は主に60代で発症。親やきょうだいは発症しておらず、いきなり発症する人が多いのが特徴です。

 実は、世界でも同様の傾向があるのです。ポルトガルの患者は30代、スウェーデンの患者は60代で発症。この違いが何なのかは、まだ分かっていません。高齢化に伴う老人性全身性アミロイドーシスも注目されています。早期発見、診断で、より良い治療を目指したいと思っています。

熊本大学病院 脳神経内科
神経難病診療体制構築事業
アミロイドーシス診療センター
福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1─1
☎096─344─2111(代表)
http://kumadai-neurology.com/

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