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アトピー性皮膚炎を改善 世界初の外用JAK阻害薬

アトピー性皮膚炎を改善 世界初の外用JAK阻害薬

京都大学大学院医学研究科 皮膚科学
教授(かばしま・けんじ)

1996年京都大学医学部卒業。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部免疫学教室、産業医科大学皮膚科助教授、
京都大学大学院医学研究科創薬医学融合拠点(皮膚科専任)准教授などを経て、
2015年から現職。

 2020年6月下旬、椛島健治教授が率いる京都大学大学院医学研究所皮膚科学と、日本たばこ産業(JT)が共同開発した、JAK阻害薬の外用剤として世界初となるアトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム軟膏0・5%」(販売:鳥居薬品)が発売された。椛島教授に開発の経緯、コレクチムの特徴、今後の研究などを聞いた。

―発売後の評判はいかがでしょうか。

 おかげさまで現在までのところ、売れ行きは予想を大きく上回っているようです。研究者の一人として率直にうれしく感じるのと同時に、開発関係者および薬を治療に使用してくださる医療従事者の方々に感謝を申し上げます。

 私の教室でもこれまでアトピーに悩む40人以上の患者さんにコレクチムを使用しています。総じてかゆみが軽減して楽になり、皮膚もハリやツヤを取り戻してみずみずしくなった、という感想や評価をいただいております。

 アトピーの治療として用いられるステロイドは、長期の使用によって皮膚が薄くなる、弾力を失う、萎縮するなどの副作用がみられます。非ステロイドのコレクチムは、そのような副作用が出づらく、刺激も少ないので、治療目標に到達するまで、長期に使用し続けることが可能です。

 これらの特徴が理解されたことが、発売からまだ日が浅いにもかかわらず、予想以上に注目された理由になっていると思います。

―コレクチムの炎症抑制メカニズムの概略を。

 外部からの異物の侵入を防ぐ皮膚バリアーが破られると、近辺をパトロールしていた〝異物の情報収集〟を担う免疫細胞が取り付きます。収集した情報をもとに対策を練り、その内容を記した指示伝達物質〝サイトカイン〟を作成します。

 次に情報収集免疫細胞は〝異物の攻撃排除〟を行う免疫細胞が待機する場所に急行して接触、サイトカインの指示内容を伝えます。攻撃免疫細胞は指示に従い出撃し、異物を探し出してこれを排除します。

 この免疫反応が時に活性化しすぎて、自己組織を傷つける場合があります。これがアトピー性皮膚炎の原因です。コレクチムは、さまざまな指示が書かれたサイトカインの中で、免疫活性化の指示を伝える物質〝ヤヌスキナーゼ(JAK)〟の働きを妨げて、免疫の過剰反応を抑える薬です。

 これまで国内では数種類のJAK阻害薬が承認されていますが、いずれも経口薬で、外用剤として承認されたのはコレクチムが世界初となります。

 このアイデアは、約10年前、私どもより提案させていただきました。JTでは当初、経口薬を開発されていたのですが、飲み薬よりも塗り薬にしたほうが副作用を低減できる、という私どもの考えに賛同いただきました。

―ほかに進行中の研究開発は。

 中程度から重度までのアトピー性皮膚炎の患者さんのかゆみを軽減する注射剤の開発を、中外製薬と行っています。臨床試験は第3相まで進んでおり、それほど遠くない時期に承認されると思います。

 アトピーはあと5年もすれば治療がかなり進むと私は考えています。今後は強皮症、円形脱毛症、皮膚がんなど、治療法が見つかっていない病気のメカニズムを、精力的に解明したいと思っています。

 私はもともと内科医を志望していました。しかし、自分の目で直接観察し、触れることができる診療のほうに興味を抱き、皮膚科に進みました。目に見える病気だけに、命に関わるものではなくても、患者さんは大変に苦しみ、悩まれます。

 今後もそうした方々の力になりたいと考え、研究はもちろん、皮膚科を目指す医学生や研修生の教育にも、一生懸命取り組んでいきたいと思います。

京都大学医学部附属病院 皮膚科
京都市左京区聖護院川原町54
☎075―751―3111(代表)
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

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