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より高い満足度を目指して整形外科でロボット導入

より高い満足度を目指して整形外科でロボット導入


副病院長(くぼた・けんじ)

1983年熊本大学医学部卒業。同附属病院整形外科、
関東労災病院スポーツ整形外科、社会保険大牟田天領病院整形外科部長などを経て
2007年から現職。

 より患者満足度の高い医療のために─。こうした思いを原動力に、人工膝関節置換術のロボット支援下手術を導入。従来の術式との違いやメリット、導入したからこそ見えてきた課題は何か。そして医療分野でのAI活用についての展望なども聞いた。

─導入の背景は。

 人工膝関節の置換術は、関節が変形して機能しない患者さんに行う手術です。私はこれまで1500例ほど手がけてきました。おおむね満足していただいていると感じていますが、中には術後、「痛くはないけれど違和感がある」などとおっしゃる方もいました。

 人工膝関節置換術を成功させるための三つの要素は正確な骨切りとアライメント(骨の位置調整)、適切な軟部組織バランスの評価です。その精度をさらに高めるために、ロボットの手を借りることが選択肢として浮上してきたのです。

 2020年3月に人工膝関節置換術支援ロボット「NAVIO」を購入。骨モデルを使用した院内研修を約1カ月にわたって集中的に行い、北海道の病院に赴いて2日間のレクチャーを受けてから4月に導入しました。人工膝関節置換術のすべてに使用するわけではありませんが、9月8日現在、すでに19例を行いました。現時点では私が1人で手がけていますが、近い将来、他の医師も使用できるよう、トレーニングをしています。

─メリットと手応えについて教えてください。

 正確に手術することで、その分だけ術後の負担が軽くなります。例えば、目標と少し異なる形状になった場合、人工関節に負担がかかって、早いタイミングで交換が必要になることもありますが、その心配が払拭(ふっしょく)されます。

 今は、人工膝関節手術の際、前十字靱帯を温存する術式があります。前十字靱帯は膝の安定性や感覚のアンテナ機能を果たす重要な器官なので、できれば残したいもの。従来の手術では切除せざるを得ないケースも多く、人間だけの力で温存しようとすると、非常に煩雑で難度が高かったのです。

 しかしロボットの支援を受けることで、正確な施術が可能になりました。まさにロボットの真価が発揮されると言えるでしょう。

 これまでは、導入直後ということもあり、比較的難度の低い症例に関して適用してきました。その中でも正確な骨切りとアライメント、軟部組織のバランスなど、手術直後にわかる要素に関してはおおむね期待通りの成果が出ています。

─課題と今後の展望は。

 どうしても機械との共同作業になるので、機械の特性を人間が会得していかないといけません。今のところは、機械と相談しながらやっている…というイメージで、手術時間の長さや出血量に関しては改善の余地があります。

 ロボット活用前は2時間以内にできた手術が2時間半〜3時間ほどかかっており、理想は従来と同程度までの短縮。赤外線反射板設置などの作業時間は短縮できますし、削り方も慣れればさらなるスピードアップが見込めます。

 さらに練度が向上すれば、より難度の高い症例に対しても適用できていくのではないかと思っています。適用範囲を広げ、症例数を増やしていきたいと考えています。

 手術の正確さという点では手応えを得ている一方で、術後成績を出すには、まだ早い段階です。今後、中長期的な経過観察を通じて、正確に評価していく必要があると感じています。

 将来的には、膝関節だけでなく股関節や足関節にも応用できるのではないかと思っています。機械が学習してくれ、人間の意志と機械の操作が同じベクトルを向くことが、理想ではないでしょうか。今後のAI活用の拡大について大いに期待しています。

社会保険 大牟田天領病院
福岡県大牟田市天領町1─100
☎0944─54─8482(代表)
https://omutatenryo-hp.jp/

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