九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

めまい・難聴と頭頸部がん発信力を強化

めまい・難聴と頭頸部がん発信力を強化

耳鼻咽喉・頭頸部外科学
教授(きたはら・ただし)
1992年大阪大学医学部卒業。米ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科、
大阪労災病院耳鼻咽喉科部長、大阪大学医学部耳鼻咽喉科学教室准教授などを経て、
2014年から現職。

 めまい・難聴の分野に歴史と強みを持つ教室。2016年に開設した「めまいセンター」では、奈良県内外の悩める患者を多く引き受けている。メニエール病を中心とした治療や研究の現状について、話を聞いた。

—メニエール病について。

 原因究明と治療に取り組んできました。患者数は、人口10万人に対し20人前後。昔から原因は「ストレス」と言われていますが、これは実に使い勝手のいい言葉。患者さんは納得するものの、どうすればいいのかと困るわけです。

 ヒト内耳組織を用いた基礎研究で解明した発症の仕組みは、①脳下垂体からストレスホルモンが出る②それが内耳に存在するレセプター(受容体)にくっつく③結果、メニエール病の特徴である水ぶくれを起こして発症する、というもの。原理は簡単ですが、これにより治療できる可能性が見えてきました。

 メニエール病が、安易に診断されがちな病となっていることも問題かもしれません。そこで開発中なのが、シーメンス社の3テスラMRIを使った「ワンタッチ・メニエール病画像診断」。造影剤を内耳に取り込ませ、撮ったMRI画像を3D構築。データ解析することでメニエール病かどうかを判断できます。来年中くらいに完成予定です。

—原因不明のめまいは。

 めまいセンター外来の約10%を占めるのが、原因不明のめまい。患者さんには薬を飲んでもらって様子を見ますが、なかなか治りません。実はこの中に、耳石が剥がれることによるめまいが相当数含まれると考えられています。剥がれた耳石が就寝時に三半規管に落ち込むと、めまいが起こるからです。

 そこで昭和西川と共同開発して9月に発売したのがめまいを軽減する枕。折り畳んで傾斜をつけた背もたれに上半身を預けて眠る「〜耳石に優しい〜睡眠頭位調節マットレス」という商品です。ヘッドアップすることで、めまいを軽減することができます。

 耳石はCTやMRIには写りませんが、これで寝てめまいが改善すれば、耳石が原因だったことが推測できます。そうなればBPPV(良性発作性頭位めまい症)と、治療的診断が可能となります。

 当センターのめまいの症例のうち、最も多いのがBPPV、次がメニエール病。これで全体の7割になります。BPPV予備群を含む原因不明のめまいを合わせると、約8割にも上ります。これ以外は診断治療が確立されていますので、この約8割をなんとかしたいという思いがあります。

—研究開発に、多くの実績をお持ちです。

 前教授で、現学長の細井裕司先生から受け継いだのが聴覚部門。昨年11月には、先生が開発した軟骨伝導補聴器が発売されました。中耳炎患者、外耳道がん患者、先天的に耳の穴がない子どもに有効です。これも世界初、奈良県立医科大学発の特許製品です。

 もう一つ、柱としているのが頭頸部がんです。担当の上村裕和准教授は、奈良県立医科大学から優れた外科手術手技を持つ医師に与えられる「外科マスター」の称号を初めて受けました。彼が熱心にチームを率いてくれており、今後も楽しみですね。

 教室発展のためには、人材確保が一番のカギです。

 私の座右の銘は「明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり)」。磨けば光る珠は手元にあるという信念で、医局員一人ひとりを適材適所に導く。積極的に特色を発信したことで、研修医も増えてきました。メディアへの出演も、患者さんから興味を持ってもらえているようです。

 「現状でよいと思うことは死を意味する」。細井先生が常々言われている言葉です。挑戦し続けることをモチベーションに、また次のステップに進んでいけたらと思っています。

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学
奈良県橿原市四条町840
☎0744―22―3051(代表)
http://www.naramed-u.ac.jp/~oto/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる