九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

 厚労省は9月、毎年11月を「」と定めた。医療者の疲弊が危ぶまれ、地域医療が厳しい状況に直面している中で求められるのは、国や自治体、医療者、市民などそれぞれが従来の枠や慣習にとらわれず思考し、行動すること。そんな呼びかけが本格化しそうだ。

医療者が働きやすい地域 実現に必要なのは

 「延岡市の地域医療を守る条例」が制定されて10年が経った。当時、宮崎県立延岡病院の医師の退職が問題化するなど、延岡市の地域医療は危機的な状況にあった。軽症患者が救急外来を利用するといった「コンビニ受診」の増加が主な要因だ。

 地域医療の崩壊を防ごうと市民も動いた。「宮崎県北の地域医療を守る会」を組織し、適正な受診の啓発活動をスタート。およそ15万人の署名を集めた。

 2009年9月、全国の市町村では初めての「延岡市の地域医療を守る条例」を制定。市民、医療機関、行政それぞれの責務を明確に規定したことで大きな注目を集めた。市民の役割は①かかりつけ医をもつ②適正な受診(時間内の受診等)③医師等に対する信頼と感謝④検(健)診の積極的受診と日頃からの健康管理の4項目。

 県立延岡病院の夜間・休日救急患者数はピーク時の9237人(2007年度)から半減(2012年度時点)。市民が医療者へ感謝の思いをつづった手紙を贈るなど、現在も地域ぐるみの「医療者が働きやすい街づくり」が続く。

国民の理解を促す五つの方策を提案

 兵庫県西脇市「」、香川県「」、埼玉県「」などがここ10年ほどの間に生まれた。

 しかし、患者の適切な医療機関、診療科の選択が広く根付いているとは言い難い。そこで厚労省は2018年10月から計5回、「上手な医療のかかり方を広める懇談会」を開催した。

 資料として示された「横浜市救急相談センターへの問い合わせの結果」を見ると「6時間以内の受診」27・4%、「翌日日勤帯に受診を勧奨」16・6%、「経過観察」6・2%。

 また、「日頃から決まって診療を受ける医師・医療機関を持たない理由」として「適切な医療機関をどう探してよいのか分からないから」「適当な医療機関を選ぶための情報が不足しているから」との回答が目立った(2017年9月「医療・医療保険制度に関する国民意識調査報告書」)。

 会は医師の長時間労働を是正し、患者が安心して医療機関を受診できる環境をつくるためには、「医療の上手なかかり方をみんなで考え広める必要がある」と指摘。医師の人材確保や地域医療の提供体制構築なども踏まえた、中長期的な視点が必要だとした。

 議論は2018年12月に「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」として取りまとめられ、五つの方策の実施が提案された。

①患者・家族の不安を解消する取り組みを最優先で実施すること

②医療の現場が危機である現状を国民に広く共有すること

③緊急時の相談電話やサイトを導入・周知・活用すること

④信頼できる医療情報を見やすくまとめて提供すること

⑤チーム医療を徹底し、患者・家族の相談体制を確立すること

それぞれに要因があり「今できること」がある

 取りまとめでは「医療危機」の要因を四つに大別。 医師・医療提供者の要因として「医師が一番という構造・意識がまん延している」「男性を中心とした働き方や慣習がはびこり限られた人材で業務を回さざるを得なくなっている」など、厳しい指摘も盛り込まれた。

 これからのアクションの例として「あらゆる機会に医療のかかり方を啓発する(待合室、母子健診、小児健診、高齢者健診、学校健診、職域健診、公開講座)」「かかりつけ医として必要な能力を維持・向上し、かかりつけ医の所在・役割を市民に分かりやすく伝えるように努める」などが挙がった。

 毎年11月を「みんなで医療を考える月間」と定め、各種キャンペーンなどの啓発活動を集中的に行う。医療を提供する側、受ける側のあらゆる人が「協働」の認識を深め、コミュニケーションが活発化されることが期待される。

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