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さらなる成長のために必要な要素は「想像力」

さらなる成長のために必要な要素は「想像力」

愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経外科学講座 國枝 武治 教授(くにえだ・たけはる)
1993年京都大学医学部卒業、2003年同大学院医学研究科修了。
大津赤十字病院、米クリーブランドクリニック、
京都大学医学部附属病院脳神経外科などを経て、2016年から現職。

 脳腫瘍、高齢化に比例して増加すると言われるてんかん、昨年成立の対策基本法に関連する脳卒中の体制整備―。多様な役割が求められる中、國枝武治教授は「やはり〝人〟が重要」と強調する。県内の現状も踏まえて今の思いを語ってもらった。

―育成についてどう感じていますか。

 どのような種類の手術が、どれほどの難易度であるのか。画像診断技術などの向上によって、一定程度、予測できるようになりました。もちろん若い先生にいきなりすべてを任せるわけにはいきませんが、安全性が確保できる範囲で、積極的にチャンスを提供したいと考えています。

 逆に言えば、十分な経験があり、後進の指導に当たる立場にいる者が、いつまでも手術の中心にいてはいけない。何らかの事情によってその人が対応できなくなったときに、医療の「空白」を生んでしまいかねないからです。1977年に開設された当講座の1期生が定年を迎える時期に入りました。愛媛県内の脳外科を支えるために「引き続きサポートする」とおっしゃる先生も多く、心強く感じています。

 愛媛県の脳外科の専攻医はここ数年、1~2人ほどいます。いい傾向ではあるのですが、これから引退していく医師と、この領域を目指す医師の数のバランスがとれていない。これまでは「医師がなかなか増えない」状況だったのが、いよいよ「全体数が減っていく」時代に転じるのです。

―何が大事でしょうか。

 人材を集める努力は当然のこととして、今いるメンバーを「いかに早く育て上げるか」が問われています。

 さまざまな機器の技術を活用することで「玄人の勘」に頼らずとも、標準的な技術を身に付けることが可能です。そこから先へと進む上で大切なのは、イメージを広げること。自身が術者となる症例だけでなく、例えば人の手術を見て「自分だったらこうする」。そんな想像力を働かせることも欠かせないと思います。

 若い医師にどこまで任せることができるのかは、指導する側の技量が左右します。指導する側のレベルが上がれば、おのずと教わる者のレベルも上がる。その積み上げによって、講座全体の力を引き上げていくことを目指しています。

―関心があることは。

 前教授である大西丘倫先生の時代から神経膠腫(グリオーマ)、そして特に悪性度が高い膠芽腫(グリオブラストーマ)の治療に力を入れています。腫瘍をできるだけ広範囲に切除したいが、脳の重要な機能は温存しなければならない。浸潤していくタイプの腫瘍であるグリオーマの手術は「どこでやめるか」という判断が極めて難しいのです。

 ニューロナビゲーションシステムや神経モニタリング、エコー、5│ALAを用いた光線力学的療法(PDT)など、さまざまな手法を駆使して腫瘍の最大限の摘出に挑みます。現在、術中に採取した細胞のDNAの量を測定してグリオーマの悪性度を診断したり、腫瘍が浸潤している範囲を推測したりする研究も進めています。

 私の専門の一つである機能的脳神経外科では、今年からてんかんやパーキンソン病の手術を開始しました。四国での広がりは、まだこれからという段階です。覚醒下開頭手術などの手法は、もともとてんかん治療で発展してきた技術を応用したもの。高齢化が進むほどてんかん患者は増えるとされ、診断のニーズ、さらなる治療法の開発などが求められるでしょう。

 そこで得られた知見はさまざまな疾患に役立つ可能性があり、「脳の機能を守る」ための医療にフィードバックされるはずです。当講座の新たな特徴として、推進していきたいですね。

愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経外科学講座
愛媛県東温市志津川
☎089─964─5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/neurosurgery/

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