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がん拠点と高度救命救急 2本柱で地域に貢献する

がん拠点と高度救命救急  2本柱で地域に貢献する


病院長(しば・なおと)

1982年久留米大学医学部卒業。
米メイヨークリニック整形外科バイオメカニクス研究室、
久留米大学病院リハビリテーション部教授などを経て、2020年から現職。
同医学部整形外科学講座主任教授兼任。

 福岡県南部と隣接県を合わせ、約100万人の医療圏において高度先進医療を提供している久留米大学病院。2020年4月、病院長に就任した志波直人氏は、がん拠点病院と高度救命救急を核とした病院運営を目指すとともに、地域医療全体の将来像にも視線を向けている。

「リハビリの一翼に」 恩師の手紙が転機

 整形外科医だった父親の姿を見て育ち、久留米大学医学部に進学。卒業後は同大学整形外科学教室へ入局する。5代目教授だった井上明生氏に、多大な影響を受けたと言う。

 「入局2年目のとき、井上先生が教授として赴任されてきました。先生の専門は股関節。テーマに股関節を選んで博士号を取ったのも、先生との出会いが大きかったと思います」

 その後、米国メイヨークリニック整形外科バイオメカニクス研究室に留学する。その留学中に、井上氏から、1通の手紙が届いた。

 「井上先生はリハビリテーションの分野に注力したいと考えられていました。当時はまだメールも普及していなかったので手紙だったのですが、その中で私に『リハビリの一翼を担ってほしい』といったことが書かれており、これが大きな転機になったのは間違いありません。また、1998年に久留米大学リハビリテーションセンターが完成したことも大きかったですね。帰国後は、股関節の研究をしばらく続けながらも、次第にリハビリの臨床・研究に取り組むようになりました」

宇宙飛行士の筋力・骨の衰えを防ぐ

 帰国をきっかけに、新たな研究へ。脊髄損傷や脳卒中などでまひした手足に対し、電気刺激で負荷を与えながらリハビリを行い、機能再建する研究に取り組み始める。

 電気刺激による運動効果に着目し、小型で運動効率の良い「ハイブリッドトレーニング装置」を開発。この研究が、国際宇宙ステーションでの長期滞在で衰える宇宙飛行士の筋力・骨の衰えを防ぐことに応用される。

 「2014年、航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究で、国際宇宙ステーションで宇宙飛行士を対象に実験を行うことができました。結果は非常に良く、研究論文は米科学誌『PLOS ONE』に掲載。現在も後輩たちが中心となって研究を続けています」

 この論文掲載と同時に、装置がパナソニックから発売されている。「下肢につけるタイプで、ひざ周りの筋力アップに効果があり、コロナ禍で増えている高齢者のロコモやフレイル予防につながればと思います」

がん拠点病院と高度救命救急を柱に

 2016〜2017年に久留米大学病院長を一度経験し、2020年4月に再就任した。前回と大きく異なるのは、就任直後から新型コロナウイルス感染症への対応を余儀なくされていること。

 久留米大学病院は、感染症指定医療機関ではないものの、高度な救急医療が必要な患者さんを断らないというスタンスで、高度救命救急センターで重症患者を受け入れている。院内においては、入院前などのPCR検査を実施。水際での対策が、大学病院としての機能の維持に不可欠だと語る。

 さらに、今後の病院運営も、しっかりと見据えていかなければならない。

 「当院は高度救命救急センターがあること、地域がん診療連携拠点病院であることが大きな強みです。今後はこの2本柱をさらに充実させることが重要だと考えています」

 これまで課題とされていた病床の再編などの検討も進めている。 「大学病院として、本当に必要な機能かどうかをしっかり精査したいと思っています。医療安全に留意しながら、効率的な運営を行うこと。そして治験などにも力を入れ、経営を安定化させていくつもりです」

100万人の医療を支えていく

 久留米大学病院、久留米大学医療センターの二つを中心に、関連医療施設は109施設(2019年12月調べ)。福岡県南、隣接する県までも含まれており、対象となる人口は約100万人にもなる。

 久留米医師会の参与も務め、地域医療に対する思いも強い。国が進めている地域医療構想に関しては、幾つかの課題を感じている。

 「地域医療構想や専攻医シーリングでは都道府県単位で考えられていますが、都市部とそれ以外の地域で大きな偏在があります。また、大学病院で研究に従事する医師などを含めると、地域の実態から乖離(かいり)してしまう。これらの課題を多くの人と共有して、より良い地域医療の姿を構築したいと思っています」

 好きな言葉は、徳川家康の〝堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え〟。「この言葉に出合ったのは、管理職になった頃です。何があっても気持ちを平静に保ち、冷静に対応することを常に心掛けたいと思います」

久留米大学病院
福岡県久留米市旭町67 ☎️0942ー35ー3311(代表)
https://www.hosp.kurume-u.ac.jp/

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