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がんを総合的にみる 外科医を育てる

がんを総合的にみる 外科医を育てる

大分大学医学部 呼吸器・乳腺外科学講座 杉尾 賢二 教授(すぎお・けんじ)
1982年九州大学医学部卒業。1988年同大学院修了。産業医科大学第二外科助教授、
国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科部長などを経て、2013年から現職。
大分大学医学部附属病院副病院長、同大学学長特別補佐を兼任。

 医学部の使命は「診療・教育・研究のバランスよい推進」とする杉尾賢二教授。医学部の学生に敬遠されがちだった外科の志望者が、ここ5年間で増え始めたという。肺がん治療と研究の権威でもある杉尾教授がリードする実践的な外科医の育て方とは。

―外科志望者の動向は。

 最も少なかったのは、全国的に15年ほど前でした。「外科はきつい、汚い」と敬遠されていたのが、最近は少し増えています。当医学部の場合は、過去10年間のうち14年までの前半が18人、後半は31人と大幅に増えました。

 私が赴任して呼吸器・乳腺外科、消化器・小児外科、心臓血管外科の三つの外科教室が5、6年生を対象に合同説明会を始めました。臨床実習を経験する時期ですので、自分が進むべき道を考え始めるタイミングです。「外科とは何たるものか」「どのような教育を経て資格を取得するか」を、具体的に説明し、アドバイスを行っています。

―外科の魅力をどのように伝えていますか。

 講義ばかりでは学生も面白くありません。特に外科を目指す人は、技術的なことに関心が高いので、早い時期から実習を体験させています。

 まず、5年生から模型を使ったドライラボで縫合や糸結びをじっくり行います。6年生になると、豚の肺臓と心臓を使うウエットラボで肺の切除などの実習です。学生は実に生き生きして目が輝いていますよ。

 さらに6年生と研修医を対象に、アニマルラボ(生きた実験用動物の手術)を体験させます。その専用施設サージカルラボ(略称SOLINE)は、北野正剛学長の肝いりで2015年4月に開設しました。医学生の時から、アニマルラボがカリキュラムに組まれていて手術手技の実習ができるのは、大分大学だけだと思います。

 昨年度から始まった新専門医制度では、専門医資格を取得する道筋をしっかり提示して目標を持って歩めるように教育しています。

 例えば肺がん手術の最大のトラブルは出血です。止血は1分1秒を争うので、内視鏡手術から開胸手術に素早く切り替えるケースもあります。素早い止血法や開胸手術などトラブルの対処法を訓練します。私は日本呼吸器外科学会の指導医。学会ではこのような高度なトレーニングを受けないと専門医の受験資格が得られないと厳しく定めています。

―研究にも力を入れていらっしゃいます。

 九州大学時代からがんの遺伝子解析を続けています。がんの遺伝子診断が今では当たり前になって、どの治療法を選択するか、どの薬を使うかを決める時代です。ただ、同じ薬でも人によって効果が違う。新薬でも効かなくなる薬剤耐性のメカニズムはどうなのかを解明するため大学の研究プロジェクトとして継続しています。

 がんの薬剤耐性の研究にトランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)があります。臨床での疑問を基礎研究にフィードバック、解析や研究開発して臨床に戻す仕組みで、臨床と研究が直結することで創薬技術や治療の考え方が大きく進化しています。

 九州の臨床試験グループ「九州肺癌研究機構(LOGiK)」の代表世話人として九州全体の研究を取りまとめる役目も担っています。

 内視鏡やロボット手術など機器は発達していますが、「外科医の役割は手術だけ」ではありません。外科医であっても、がんを総合的にみること。腫瘍学といった、がんの科学を若い人に勉強してもらうことが大切です。

 肺がんに関しては、年に2回、県内の内科、外科医を対象に一流の講師を招いて講演と勉強会を実施。さらに呼吸器外科医を対象に年2回、手術実技の勉強会をしています。今後も大分県内の医療の底上げに貢献したいと思います。

大分大学医学部 呼吸器・乳腺外科学講座
大分県由布市挟間町医大ケ丘1―1
☎097―549―4411(代表)
http://www.med.oita-u.ac.jp/surgery2/

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