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がんは「待てない病気」 受診控えの患者に発信

がんは「待てない病気」 受診控えの患者に発信

独立行政法人国立病院機構
藤 也寸志 院長(とう・やすし)
1984年九州大学医学部卒業。
米MDアンダーソンがんセンター留学、九州大学医学部第二外科、
九州がんセンター統括診療部長、副院長などを経て、2015年から現職。


 コロナ禍で、がん患者が新型コロナウイルス感染症への罹患(りかん)を恐れるなどして通院、治療を中断する受診控えが全国的に問題となっている。九州がんセンターが、がん患者に向けて発信しているメッセージとは―。

―受診控えの状況は。

 がん患者らでつくる団体が2020年に行った全国調査では、がん患者の8人に1人がコロナの影響で受療内容を変更している実態が明らかになりました。さらに、薬物療法などの治療を受けている人の中では、4人に1人が受療内容を変更し、自己判断で内容を変更したと回答した人もいます。

 流行初期には、がん患者がコロナに罹患するとコロナが重症化しやすいとする研究結果が英国などで発表され、正確な情報も十分ではなく、「病院に行ったらコロナに感染してしまう」との認識で受診から遠ざかってしまったケースが多かったのではないかと思います。私はがんサバイバーでもあるこの団体の代表者から、「受診控えをしないように発信してほしい」という要望を直接受けました。

 当院でも、特に流行初期の20年4~6月の外来患者数は大幅に減少し、減少幅は最大で前年同期の6、7割に落ち込みましたが、情報発信をするには至っていませんでした。

―患者さんや家族にどのような発信をしましたか。

 がんの発見を遅らせてしまうのは、大変由々しき問題で、決して患者さんや家族のためになりません。21年1月、代表者から要望を受けてからすぐに当センターのホームページで受診をためらっている患者さんに向け、「がんは待てない病気」とした上で、院内で感染防止対策を図っていることを記し、「どうぞ安心して受診してください」と呼び掛けました。

 感染防止対策では、とにかく院内から感染者を出さないように細心の注意を払っています。感染の疑いのある患者さんは通常の患者さんと動線を別にして、手術前の患者さんにはPCR検査に加えてCT検査を行い、胸に少しでも影があったら感染を疑っています。余命わずかな患者さんもいて大変心苦しいですが、入院患者さんへの面会も制限しています。

 都道府県がん診療連携拠点病院として、当院だけでなく全国のがん患者さんへのサポートも使命だと思っています。情報発信では、例えば医師が診察時に「自己判断で来ないようにしないでね」「この病院は安全だからね」などと直接伝えることも重要で、私が座長を務める「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」で、厚生労働省に対して都道府県の拠点病院へ情報発信の重要性を周知するように要請しました。全国で同様の動きが広まることを願っています。

―ワクチンの先行接種を行いました。

 当院は医療従事者を対象にしたワクチンの先行接種の対象医療機関で、4月上旬までに先行接種対象の職員約600人が2度目の接種を終えました。2度目に副反応が起きるケースが多く、接種後、高熱が出た人が全体の3〜4人に1人の割合でいました。ただ、アナフィラキシーショックのような重篤例はなく、高熱が出た割合も想定の範囲内で、他の医療機関や市民に向け、大きな副反応がなく接種できたことを証明できたと思います。

 当院はこれまでコロナ患者さんを受け入れておらず、がんの診療に専念することができています。これは、他の医療機関が日々奮闘してくれているおかげ。「せめてワクチン接種では貢献しないと」との思いで、他の医療機関とは違った形でコロナと対峙(たいじ)しています。副反応が出た場合に備え、人員も設備も十分に整えておく重要性を感じました。高齢者を含めた市民らへの接種について、他の医療機関に助言していけたらと思っています。

独立行政法人国立病院機構
福岡市南区野多目3―1―1
☎092―541―3231(代表)
https://kyushu-cc.hosp.go.jp/

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