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「REIC」製剤で再発グリオーマに挑む

「REIC」製剤で再発グリオーマに挑む

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経外科学 伊達 勲 教授(だて・いさお)
1982年岡山大学医学部卒業、1990年岡山大学大学院医学研究科修了。
米ロチェスター大学留学、岡山大学脳神経外科助手などを経て、2003年から現職。

 2000年に岡山大学で発見されたがん抑制遺伝子「REIC(レイク)」。同大脳神経外科は今年6月、悪性度の高い脳腫瘍である「神経膠腫(グリオーマ)」に対して、REICを用いた製剤を投与する治験をスタートした。治療法の確立につながるイメージは│。関心が高まる中、伊達勲教授が答えてくれた。

―あらためて「REIC遺伝子」について教えてください。

 REICという名称は「Reduced Expression in Immortalized Cells」の頭文字を合わせたものです。

 ヒトの正常細胞では通常、REIC遺伝子は発現している状態にあります。しかし、がん細胞においてはREIC遺伝子の発現の低下が認められるのです。

 REIC遺伝子を用いた製剤をがん細胞に投与すると、がん細胞のみアポトーシスを誘導します。また、免疫を活性化し、がんを攻撃する力を高めることも分かっています。

 これまでに、岡山大学では前立腺がんや肝細胞がんに対するREIC遺伝子を活用した治療の臨床研究に取り組んできました。

 今回、私たち脳神経外科では、悪性度の高い脳腫瘍「グリオーマ」の患者さんを対象にした遺伝子治療を実施。製剤の安全性や有効性を調べます。

 グリオーマの治療はグレード(悪性度)によって異なりますが、基本は外科療法によってできる限り腫瘍を切除し、放射線療法、化学療法などを行います。

 グリオーマに対する治療法はいまだ確立されておらず、再発する方が一定数います。再発したグリオーマはさらに治療が難しく、苦戦を強いられています。当教室が開始した治験は、手術や放射線療法、化学療法を受け、再発した患者さんが対象です。

 REIC遺伝子は正常な細胞には影響せず、REIC遺伝子をうまく作れなくなっているがん細胞だけに選択的に作用します。前立腺がんや肝細胞がんでの臨床研究では、大きな副作用は報告されていません。

 また、REICによる全身的な免疫機能の活性化によって、転移したがんにも効果があるのではないかと期待されています。 

―どのように進めていくのですか。

 がん細胞にREIC遺伝子を届ける「運び役」として、無害化したアデノウイルスを使用します。これまで行われてきた他のがんの研究と同様に、脳の領域でも問題がないかどうかを確認。また、再発した方が対象ですから、患者さんそれぞれのタイミングを見計らって段階的に投与量を変化させていきます。

 まずは安全性をしっかりと検証し、2021年から2年ほどをかけて、有効性を検証していく計画です。動物実験では大きな成果が得られており、REIC遺伝子への期待の高まりを感じています。将来的には創薬につなげたいと考えています。

―他にはどのようなことに注目されていますか。

 今年、当教室は「エクソスコープ(外視鏡)」を導入しました。専用の眼鏡を装着して、ディスプレー上の3D画像を見ながら手術を行います。

 術者でない者も同じ画面を見て情報を共有することができますので、例えば学生たちも、自分が術者となったときのイメージをより具体的に描くことが可能です。手術のトレーニングにおいても、大きな意味を持っています。

 正面に設置されたディスプレーを見ながら手術を進めますので、従来の一般的な手術のように、長時間にわたって頭を下げた姿勢を維持する必要がありません。術者の負担が軽減できるでしょう。

 高度な医療と教育が求められる大学病院だからこそ、こうした先端的な機器を取り入れ、活用していく役割があると思います。エクソスコープをはじめ、さまざまな技術を積極的に活用したいですね。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経外科学
岡山市北区鹿田町2─5─1
☎086─223─7151(代表)
http://neuro.hospital.okayama-u.ac.jp/

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