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「食事」によるアプローチで糖尿病治療を実践

「食事」によるアプローチで糖尿病治療を実践


理事長(えべ・こうじ)

1974年京都大学医学部卒業。
同大学胸部疾患研究所第一内科(現:京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)、
高雄病院医局長などを経て、2000年から現職。

 アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の治療で実績を重ねてきた高雄病院。糖質制限食に着目し、食事療法を取り入れた糖尿病治療に力を入れているのが特徴。全国各地から患者が足を運んでいる。

―アトピー性皮膚炎の治療に力を入れていますね。

 当院は京都市の中心部からは少し離れた地域にあり、アクセス面では不利な点があります。地域医療を担っていく中で、運営の柱となるような特徴的な診療を増やすことが必要だと考えていました。

 2000年代初めに増加していたのがアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の患者さんでした。当院では漢方治療に取り組み、その効果を実感していたこともあり、治療に本腰を入れるようになりました。

 当院の治療は、西洋医学と漢方医学の両方の良さを取り入れています。入院施設を活用して食事療法などを取り入れ、患者さんが疾患を自己管理する方法を教育していきます。この活動を「アトピー学校」と名付けました。アトピー性皮膚炎の患者が増加し、社会的にも大きな関心が集まった時期でしたので、当院の治療に注目が集まりました。

 また、雑誌、新聞、テレビで治療について取り上げられると、知名度は全国的に広がりました。治療のアプローチや自己管理するという点に独自性があったことが評価された理由の一つでしょう。

―現在は糖尿病治療にも広げているようですね。

 アトピー学校のノウハウを生かしています。糖尿病の治療もまさに自己管理が中心的な課題です。

 治療は、糖質制限食を柱にした食事療法を実践します。医師の他、看護師、栄養士など多職種が携わり、約2週間の入院を通して自己管理の方法を学んでいきます。入院中は血糖値を測る医療機器を24時間腕に装着。15分ごとに計測したデータをグラフ化し可視化することで、1日の中での変化などを理解できます。

 また、最初の1、2日はカロリー制限食を体験。これは糖尿病患者に実施されている従来型の食事療法で、食事全体のカロリーをコントロールするものです。

 私が勧めているのは糖質制限食。カロリーではなく糖質食品を制限するものです。三大栄養素のうち、血糖になるのは米やパンなどの糖質。それを制限することで血糖値の変化を抑制するのが狙いです。血糖値の乱高下、特に食後に血糖値が上昇するいわゆる血糖値スパイクが、血管を傷め、糖尿病合併症を引き起こす要因と考えているからです。血糖値スパイクに関しては、国際糖尿病連合(IDF)もそのリスクを示しています。

 糖質制限食を取り入れたきっかけは私自身が糖尿病を50代で発症したためです。カロリー制限、菜食、そして運動を実践しましたが血糖値は下がらない。

 そこで海外の論文に目をつけたところ、糖質制限食の情報を入手。自分自身の生活に取り入れました。それからは病院を挙げて研究を進めました。20年ほどこの治療に取り組んでおり、これまでに入院糖尿病患者さん約2000人以上の治療実績があります。

―書籍出版やWEBでの情報発信にも積極的です。

 国内のみならず、海外在住の方からも治療に関する質問を毎日のように受け、回答しています。当院で実践していることやデータをまとめることが患者さんの役に立ち、それが私の励みにもなります。2019年、米国糖尿病学会(ADA)はコンセンサスリポートにおいて糖尿病に対して糖質制限食が最もエビデンスが豊富と発表しました。

 最近では、国内でも大学の研究者も糖質制限の情報を発信したり、企業が糖質制限食品を発売したりと、私たちと同様の考え方が広がっていることを大変うれしく思っています。

一般財団法人 高雄病院
京都市右京区梅ケ畑畑町3
☎075―871―0245(代表)
http://www.takao-hospital.jp/

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