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「誰もが自分らしく生きる」 実現に向けた医療支援を

「誰もが自分らしく生きる」 実現に向けた医療支援を

日本赤十字社  楠井 隆 院長(くすい・たかし)
1984年京都大学医学部卒業。
米国立衛生研究所留学、京都大学医学部附属病院、
長浜赤十字病院副院長などを経て、2018年から現職。放射線科部長兼任。

 滋賀県の北端にある長浜市と米原市からなる湖北医療圏。急性期医療を市立長浜病院と二人三脚で担う長浜赤十字病院は、周産期や精神科医療の分野でも厚い信頼を得ている。院長の言葉には、患者や家族への思いやりがにじんでいた。

―湖北医療圏は完結率が高いと聞きました。

 北の拠点として、市立長浜病院と力を合わせて頑張ってきたという思いがあります。地域内での医療の完結率は外来95%、入院82%。急性期はどの項目も約9割が完結しています。

 ただ、回復期・慢性期は若干低い。さらに医療圏の人口は15~16万人で、厚労省が目安とする20万人には届きません。

―NICUを改修中。地域周産期母子医療センターとしての役割は。

 周産期医療は5疾病5事業の一つ。採算は取りにくく、高機能かつ中核的な施設は、補助金などで何とか回している状況です。特に新生児集中治療室(NICU)は体制の維持も課題。理想的には県内3~4カ所に集約して昼間は他施設の外来を手伝いに行く体制が確立すればいいが、なかなか難しいでしょう。

 NICUは今まで6床での運用でしたが、これを改修後は9床に増やします。

 新生児集中治療を受ける子どもの中には一定数、後遺症が見られます。守山の県立小児保健医療センターや、びわこ学園の診療所が中心となってカバーしていますが、遠方から通うのは大変です。ある程度状態が落ち着いたら地元でサポートできるよう地域の先生方と話し合っています。

 家族を支える仕組みも大事です。昨今ニュースで取り上げられることが増えていると感じる虐待も、生活に不利な状況を抱える家庭で起こりやすい。児童相談所は人手不足ですし、行政や地域の医療施設と連携しながら目を配りたいと思っています。

 お産に関しては、近くのクリニックが12月に分娩の受け入れを中止。対応に迫られています。分娩と外来が増加しているため、12月に完了するNICUの工事に続き、産婦人科も改修にかかる予定です。

 滋賀県の産婦人科医の平均年齢は60代。これからの10年を同じように続けられるとは思えません。今後はハイリスク以外の妊婦さんまで引き受ける必要があるでしょう。そうすると周産期医療の教育の場としては強くなる。これを生かし、意欲的に育てたいのは助産師です。妊産婦と深く関われる立場ですので、産前産後の支援に力を発揮してもらいたいと願います。

―高規格の専門病棟を持つ、精神科医療の担い手です。

 2017年、県内では初めて、精神科救急入院料の施設基準を取得。精神疾患の急性憎悪だけでなく、身体疾患を合併する方にも対応します。近年はいい薬ができ、日常生活への影響を抑えられる可能性が高まりました。精神疾患も身体疾患も本質的にはコントロールできるという立場で支援します。

 そして認知症です。長期にわたる患者さんは近隣のセフィロト病院が中心的な役割を担いますので、それ以外を受け入れています。

 滋賀県内の総合病院で精神科の入院ができるのは、当院と滋賀医科大学医学部附属病院だけ。頼まれたら引き受けますし、社会復帰のサポートまで考慮します。

 急性期の医療は例えば精神科医療で最新の薬を使ったり、周産期では高度技術で未熟児を救ったりと、日常生活の感覚とはやや距離がある。でも福祉にも関わる認知症の分野では常に裾野を見渡しながら当事者の代弁者になれるよう考察することが大事です。

 多様性を許容する社会ほど、変化に強いと言います。人が自分らしく生きていくためのサポートを続けていきます。

日本赤十字社 長浜赤十字病院
滋賀県長浜市宮前町14―7
☎0749―63―2111(代表)
https://www.nagahama.jrc.or.jp/

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