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「肥満症外科手術実施施設」中四国エリア初の認定

「肥満症外科手術実施施設」中四国エリア初の認定

愛媛大学大学院医学系研究科 消化管・腫瘍外科学講座
渡部 祐司 教授(わたなべ・ゆうじ)

1983年愛媛大学医学部卒業、同第二外科入局。
独ゲッチンゲン大学生化学研究所、ハノーバー医科大学、
愛媛大学医学部外科学第二准教授などを経て、2009年から現職。

 2020年10月、日本肥満症治療学会が定める「肥満症外科手術実施施設」に、中国・四国エリアで初の認定を受けた愛媛大学医学部附属病院。肥満治療の選択肢が一つ増えたことでどのような効果が期待できるのか渡部祐司教授に聞いた。

―「肥満症外科手術実施施設」の認定を受けて。

 何よりも責任を重く感じています。認定を受けたということは安全に手術ができ、トータルとしてのチームワークがしっかりできていなければなりません。外科医をはじめ内科医、整形外科医、麻酔科医、精神科医がチームになり、看護師や臨床心理士ら多くのスタッフが一つになって取り組んでいます。

 特に必要とされているのが、手術後のフォロー体制。手術は大学で実施しますが、リバウンドしないよう維持するには、地域の内科の先生方の協力が必要不可欠です。協力いただける医療機関を増やしていくことも、われわれの責任の一つと捉えています。

 当院で手術を希望されている患者さんは愛媛県内だけで現在30人ほど。今回の認定を受けて、四国はもちろん、広島や岡山などからも患者さんが来ることが予想されます。内科的治療を半年以上続けてからの判断となりますので、時間がかかっても取り組んでいける強い意志が、患者さんにも求められます。


―対象となる患者さんは。

 身長と体重から肥満度を示すBMIが35以上で、、高脂血症、高血圧症、SAS(睡眠時無呼吸症候群)の方は保険適用になります。また、変形性膝関節症などで人工関節が必要な場合に体重を落とす必要がある方、肥満が原因による不妊症の方に対する治療効果も期待されています。

 「メタボリックドミノ」、代謝ドミノとも言いますが、ドミノが倒れた先、最終列には糖尿病による透析や失明、、下肢切断、あるいは高血圧による脳卒中があります。これまでの医療はその最終地点での治療をいかにするかでした。しかし、ドミノの出発点にある肥満を改善することで、倒れるのを防げる。それが、この手術の発想の原点になっています。

 実際に、インスリン投与が不要になった患者さんもおられます。手術の見学や、論文データを通して頭では理解していましたが、実際に手術をした自分の患者さんの変化を実感して、この治療は間違いないと確信しました。若い人で糖尿病の罹患(りかん)期間が短い人ほど、効果があることも分かってきています。

 手術はあくまでも治療の選択肢の一つですが、薬を使い続けることが困難な患者さんにとって、選択肢が増えたことは喜ばしいと思います。

―今後の取り組みは。

 医療者はもちろん、一般の方にも、このような治療がオプションの一つとしてあることを認識していただきたいと思っています。肥満はあらゆる病気の原因になり得ます。200㌔以上ともなれば、例えば手術台に乗ることも難しく、術中にも心筋梗塞などのリスクが高まります。肥満を解消することで、メタボリックドミノが起きることなく、ましてやその方が社会復帰すれば、社会への貢献や経済的なメリットも生まれてくるのです。

 現在、日本での保険適用は、胃を切除する腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状胃切除術)のみですが、海外では、よりリバウンドが少ない胃を直接小腸につなげるスリーブ・バイパス術が多く実施されています。現在、保険適用外での実施も可能ですが、保険適用になるよう働きかけていきたいと思っています。

 技術的には可能であるのに、経済的な問題で手術を受けることができないのは、患者さんにとって不幸です。それを解決していくことが、これからの私たちの挑戦になると思います。

愛媛大学大学院医学系研究科 消化管・腫瘍外科学講座
愛媛県東温市志津川454
☎089―964―5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/surgery3/

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