九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

「未破裂脳動脈瘤外来」でくも膜下出血を防ぐ

「未破裂脳動脈瘤外来」でくも膜下出血を防ぐ

三重大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 鈴木 秀謙 教授(すずき・ひでのり)
1990年三重大学医学部卒業。
米ロマリンダ大学メディカルセンター脳神経外科留学などを経て、2012年から現職。

 脳血管疾患に対する血管内治療に力を入れてきた三重大学大学院医学系研究科脳神経外科学。2018年9月、「未破裂脳動脈瘤外来」を開設し診察にあたる。その狙いとは。

―「未破裂脳動脈瘤」を冠した外来名は珍しいですね。

 脳動脈瘤は、脳の血管に〝こぶ〟のような膨らみができる疾患です。この脳動脈瘤が破裂することによって、くも膜下出血を起こしてしまうことがあります。くも膜下出血は、重度の脳障害が残ったり、死に至ったりする可能性が高い疾患です。

 この脳動脈瘤が破裂する前に発見された状態を「未破裂脳動脈瘤」と呼んでいます。

 くも膜下出血も未破裂脳動脈瘤も、女性の患者さんが多く、大まかに言うと女性を6とすると男性は4の割合です。理由ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンの影響があるかもしれません。患者さんの平均年齢は65歳ほどで、高齢の方が多く、障害が残ることもあるため社会的な損失も大きい疾患です。

 近年、めまいや頭痛といった症状や脳ドックの検査でMRI検査を受け、未破裂脳動脈瘤が発見されるケースが増加。その割合は100人中3人から5人とも言われます。

 未破裂脳動脈瘤の多くは破裂するものではありません。しかし、その大きさや部位、形態によっては破裂しやすいものがあるということがわかってきています。

 未破裂脳動脈瘤が発見された場合は、血圧管理などをしながらリスクが低いものは経過観察で対応します。また、手術による予防も可能です。手術に関しても、従来は開頭手術が中心でしたが、現在はデバイスの進化もあって、ほとんどが血管内治療になっています。

―「未破裂脳動脈瘤外来」開設の理由は。

 「未破裂脳動脈瘤」についてはまだまだ一般的に知られていません。患者さんにとって受診する診療科がわかりにくいだけでなく、開業医の先生方も、当院のどの診療科を紹介していいのかわかりにくいところもあったと思います。

 そこで未破裂脳動脈瘤外来をつくり、診療窓口を一本化。診療科を行き来するような手間を患者さんにかけることがないようにしました。

 また、病状や見通しについて脳卒中の専門医が首尾一貫して説明するようにしました。そうすることで、患者さんも安心して治療を受けられるようになったと考えています。

 現在、外来は週1回の開設。毎週平均して2、3人の患者さんが受診され、すでに手術につながった方もいらっしゃいます。

―未破裂脳動脈瘤研究にも力を入れていますね。

 当講座を中心に三重県内の関連病院と連携しながら「流体解析に基づいた未破裂脳動脈瘤多施設共同前向き観察研究」(スマートミエ)を7年ほど前から実施しています。

 近年、コンピューターテクノロジーの進歩に伴い、血流の数値流体力学解析が可能になっています。こぶの中の血液の流れの速度や向き、瘤壁にかかる力などが計測できます。

 講座では、患者さんのCTやMRIデータをもとに、この数値流体力学解析によって、脳動脈瘤の血行力学的特徴を明らかにしています。特徴が脳動脈瘤の増大や破裂に関与することもわかってきていますので、どのような脳動脈瘤が破裂しやすいのか、しにくいのかなどを明らかにすることが、未破裂脳動脈瘤の治療の方針を決める指標づくりにつながります。まずは10年を目安に患者さんの追跡調査を続けているところです。

 これまで、三重県全体で約550例の症例が集まっています。手術を実施した場合の外科的治療成績との関連も調査。最終的に予防医学に役立てられるような内容を目指しています。

三重大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学
津市江戸橋2―174
☎059―232―1111(代表)
http://www.medic.mie-u.ac.jp/neurosurgery/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる