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「患者のための医療とは」 その本質を問い続ける

「患者のための医療とは」 その本質を問い続ける

大阪大学大学院医学系研究科 脳神経外科学 貴島 晴彦 教授(きしま・はるひこ)
1991年大阪大学医学部卒業、1998年同大学院医学研究科博士課程修了。
大阪厚生年金病院、仏アンリモンドー病院などを経て、2017年から現職。

 「物事に対して一生懸命に取り組むことが、医師の責任である。一生懸命とは優れた準備、実践、検証から成り立つ」と貴島晴彦教授は語る。まもなく開設50年を迎える大阪大学脳神経外科を率いて3年目。目指す人材育成と具体的な手法を聞いた。

―教授として3年目に入りました。

 良いパフォーマンスのためには教育も診療も下準備が必要で、やればやるほど成果は上がります。

 しかし物理的な限界もありますから、そのバランスが難しいですね。脳神経外科領域は手術件数が年々増加。人材育成と仕事の効率化が当面の課題です。無駄を省くことは、どのような組織でも簡単なことではないと思いますが、スタッフの慣習的な仕事など気付いたところから見直しをしています。
 
一方で、会議などは無駄だと思われがちですが、その場で問題が解決できるのであれば、むしろ時間がかかってもすべきだと思います。若い医師もカンファレンスで質問できれば効率的ですし、教育の場としても意義があります。

 また、個人が能力を上げるだけでは、できる人のところに仕事が集まってしまいます。時間はかかりますが組織全体として能力を上げるための教育も組織づくりには重要でしょう。
お互いの仕事を理解し、根本的な意識を共有することは大切ですが、全員が同じ方向を向かないといけないわけでもないと考えています。自由な発想は医局としても大切にしています。

―若い世代が、自由で柔軟な発想を持つための仕掛けは。

 「教授、大丈夫か?」。そう思われるくらいの奇抜な発想をあえて投げかけると、若手は、さらに新しい考えで応えてくる。その繰り返しです。例えば研究についても、見えていないものを提示することで、型にはまらない自由な発想が生まれると思います。

 研究は成果も重要ですが、思考過程を学べることが大きなメリットです。臨床だけでもスキルは上がりますが、問題に直面した時に、仮説、実証、評価を繰り返すということで培われるものは、臨床医にとっても必要なものでしょう。

 この講座は、まもなく開設50年になります。先進的な研究と高度な診療で、できるだけ広い分野を満遍なくカバーすることを方針としてきました。責任者は、学生や医局員が興味を持ったことを自由な発想で取り組めるようバックアップすべきだと考えています。とはいえ、医療は大前提として安全でなくてはいけませんので、まずは基礎の部分の力をつけることが重要です。

―臨床面で重視していることは。

 「患者さんのためになる医療とは何か」。この当たり前とも思える、本質的な問いを持って診療に当たることです。脳神経外科の手術には予防的なものも多く、実施しようと思えば適応となる場合も多い。しかし長期的な視野で検討し、経過を見るという選択も重要です。

 「患者さんが希望したので手術をします」という判断は、一見、患者側の立場に立っているように思えますが、個々に事情の異なる患者さんに対して、単に選択肢を提示して選んでもらうことが、プロとして正しい判断と言えるでしょうか。

 さらに言えば、医療の発展や保険制度の持続性まで考えると、目の前の患者さんのためであることはもちろん、この地域の住民や国民など「マス」までも考慮すべき場面もあります。そんなバランス感覚を持ち、「目の前の患者さんにとってとるべき手段は」「この国全体を見たときに必要な方法は」と掘り下げて本質を問えるプロを育てたい。そうすれば、患者さんは信頼し、集まってくださると信じています。

大阪大学大学院医学系研究科 脳神経外科学
大阪府吹田市山田丘2―2
☎06―6879―5111(代表)
http://www2.med.osaka-u.ac.jp/nsurg/

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