九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

「必要とされる病院」はなぜ実現できたか?

「必要とされる病院」はなぜ実現できたか?

一般社団法人 巨樹の会 鶴﨑 直邦 理事長(つるさき・なおくに)
1975年九州大学医学部卒業。小文字病院外科部長、福岡和白病院副院長、
医療法人財団(現:社会医療法人財団)池友会理事長などを経て、2009年から現職。

一般社団法人 巨樹の会   院長(ふじた・ひろまさ)
1972年慶應義塾大学医学部卒業。産業医科大学第二外科学講座、独ミュンヘン工科大学留学、
久留米大学医学部外科学講座教授などを経て、2018年から現職。

 地域医療を支える公立病院は多くが厳しい経営状況に直面している。2000年に開設した武雄市民病院も例外ではなく、赤字は累積で10億円超。市は「抜本的な経営改革」として民間への移譲を決断した。2010年に「巨樹の会」が運営する「新武雄病院」として再出発。およそ10年で強固な経営基盤を築き上げた。成功の背景には何があるのか。鶴﨑直邦理事長、藤田博正院長に聞いた。

―移譲前の状況を教えてください。

鶴﨑直邦理事長(以下、理事長) 武雄市民病院は医師の不足によって救急医療体制を維持できなくなり、一部の患者は佐賀県嬉野市や佐賀市、あるいは長崎県佐世保市など、市外の医療機関に搬送されていました。機能は慢性期医療が中心で、補助金を交付されていたものの、それを上回る赤字が続いていたのです。

 当時の武雄市長であった樋渡啓祐氏は、解決策として民間への移譲を打ち出しました。公募によってカマチグループ(蒲池眞澄会長)が譲渡先に決定。名称も「新武雄病院」と改めました。


―どのような方針を。

理事長 こうした背景がありますので、私たち巨樹の会に託された最大の使命は救急医療の再開です。

 ここ武雄は、古くから交通の要衝です。そこで、アクセス性のいい国道沿いに移転して高度な機能を備えた急性期病院をつくる。医師や看護師が集まり、患者さんは遠くまで行かずに済む。患者さんが集まるようになれば、もっと医療者の雇用が伸びる―。

 これからの地域医療のモデルとなり得る「新武雄方式」のイメージを掲げました。地域の活性化の意味でも、医療を完結できる「いい病院」が市の中心部にあることが必要だと考えたのです。


―構想を形にする上で心掛けたことを教えてください。

藤田博正院長(以下、院長) 医師の確保を最も重視しています。もう一つ、若い医師ができるだけ多くの経験を積み、成長できる環境づくりに努めています。

 私自身の専門は食道外科です。合併症への対応なども含めて「全身を診る」ことに力を注いできました。

 当院では、研修医たちが総合診療科の外来を担当したり、救急患者が搬送されれば原則として全員が診療に参加したりと、多様な症例に対応できる力を養います。指導役の医師による講義や、若手が担当した症例のチェックも余念がありません。

理事長 救急医療に求められるのは、やはり総合的な力です。当院では診療科にかかわらず、医師全員が徹底的に気管挿管や麻酔のトレーニングを積みます。

 地方では近年、麻酔科医がいないために手術が実施できない。そうした問題を抱えている医療機関が少なくないのです。当院のほとんどの外科系医師は全身麻酔をかけることができます。運営が軌道に乗った大きな理由の一つは、この育成の仕組みにあると思います。

院長 医師に限らず、メディカルスタッフも「自分の業務はここまで」という既成の概念にとらわれません。例えば、診療放射線技師は部署内の検査機器のすべてを操作して検査できます。特定の機器しか扱えない技師は一人もいません。だからこそ昼夜を問わず患者さんをお待たせせず、その場にいるスタッフで多くのことに対応できる。当院の医療は、専門家が集まらなければ成り立たないものではありません。

 みんなが率先してさまざまな業務をカバーしようと意識した結果、それぞれが本来の役割に集中できる時間も増える。一人一人の負担の軽減にもつながる。そんな効果も生んでいます。


―今後は。

院長 これまで当院は、外科系を主な強みとして伸ばしてきました。地域の要望としては、「糖尿病の治療を充実させてほしい」との声も多いと感じています。そうした期待に応えていくためにも、これからは内科系の底上げも進めていきたいと考えています。

理事長 医療費を抑制するために国が病床数の削減を推進している中、日本の病院はさらに厳しい環境に立ち向かわなければならなくなるでしょう。

 診療報酬の改定にも表れているように、医師や看護師の数、設備といった側面から「医療の質そのもの」が問われる時代に入りました。私たちは引き続ききめ細かく、患者さんに安心してもらえる医療を提供していく。それが、必要とされる病院の条件だと思います。


一般社団法人 巨樹の会 新武雄病院
佐賀県武雄市武雄町富岡12628
☎0954─23─3111(代表)
http://www.shintakeo-hp.or.jp/




この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる