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「実用化」キーワードに積極的に連携

「実用化」キーワードに積極的に連携


江口 晋 教授(えぐち・すすむ)

1992年長崎大学医学部卒業。同大学第二外科、
米シーダーズサイナイ医療センター留学、長崎大学移植・消化器外科助教などを経て、
2012年から現職。

 2021年に就任10年目の節目を迎える江口晋教授。歩みを振り返りながら再生医療、医工連携、離島医療、人材育成などの展望を聞いた。共通するのは、テクノロジーの進歩が未来を切り開くことだった。

─注力してきたことは。

 最初の5年間は手探り状態であらゆることに挑戦したイメージですが、直近5年は、「移植・再生医療」と「がん」の研究にターゲットを絞って取り組んできたつもりです。

 再生医療に関しては、細胞シートを用いた研究を消化管で臨床応用することができました。メーカーが寄附講座を設けてくださり、金高賢悟教授を中心に開始。AMED(日本医療研究開発機構)の事業採択を受け、2021年からは十二指腸がんの再生医療の治験を長崎で行うことができます。この10年の成果だと感じています。

 直近5年間の大きな変化の一つに、特許を9件取得したことがあります。今の時代の大学病院の存在意義として、研究成果を論文で発表するだけでなく、実用化し、製品としてアウトプットすることもキーワードになると思います。これまで再生医療などの分野で申請。腹腔鏡下で消化管に細胞シートを届けるためのデバイスの開発では、製品化の一歩手前までこぎ着けています。

 また、水産学部の教授が開発した、魚体の粗脂肪量を判定する装置を、脂肪肝の評価に応用する共同研究を実施するなど、他学部とのコラボレーションも推進してきました。

 工学部との医工連携も進めています。長崎県は離島が多く、十分な数の外科医やその他の医療職の配置が難しい地域もあります。そうした場所で腹腔鏡下手術をする際、従来はカメラを持つ役割の外科医や看護師を大学病院から派遣してきました。そこで現在、AI(人工知能)にカメラの動きを学習させ、術者の意を汲んだカメラ操作ができるようロボットの開発を進めているところです。

 このほか離島医療に関しては、最終的に大学病院でロボットを操作する場合もあるため、通信遅滞を起こさないよう、長崎県のプロジェクトとして、腫瘍外科の先生方とともに5G規格の研究に着手しています。

─教育については。

 人材育成も特に力を入れてきた分野の一つです。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、外科の実習をオンライン会議システムで進めることになりました。従来は手術室で五感をフル活用していたのに、画面越しで手本だけ見ても、現場の雰囲気や感情は伝わりませんし、実際に手を動かさなければ技術は向上しにくいものです。

 最初は途方に暮れましたが知恵を出し合い、解決策を模索しました。手術器具をパッケージ化して学生宅に郵送し、担当の大学院生とリアルタイムで通信しながら一緒に縫合練習をする手法を実施。術前後のカンファレンスも、電子カルテの匿名化モードを使って個人情報を消してPDF化し、オンラインで共有しながら進めました。

 オンラインだからこそ実現したこともありました。アメリカに留学している教室員や、琉球大学の高槻光寿教授らに、若手に向けて話をしてもらったのです。コロナ禍でも「ピンチをチャンスに」のスタンスです。

─今後は。

 やはり最終的には患者さんの役に立つような外科医療、再生医療を臨床に取り入れていきたいと思います。人材育成・情報発信が大切です。未知なるテーマにチャレンジして成績を論文などで公表することで大学に人が集まり、それによって地域医療の人材も安定する─。そのサイクルが大学の使命。これからも役割分担を踏まえ、離島を含めた長崎県の外科医療のあり方を考えていきます。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科学
長崎市坂本1―7―1
☎095―819―7200(代表)
https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/surgery2/

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