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「安全な手術」の実現のためには?

「安全な手術」の実現のためには?

聖マリアンナ医科大学外科(・一般外科) 大坪  毅人 教授(おおつぼ・たけひと)
1986年聖マリアンナ医科大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器外科講師などを経て、
2004年から現職。2014年からは聖マリアンナ医科大学病院副院長も兼任。

 聖マリアンナ医科大学の特徴の一つに、運営4病院が、隣接する川崎市と横浜市に集中していることが挙げられる。この4施設の手術内容などを共有しスキルアップにつなげ、「チーム医療で安全な手術を目指している」と話すのは消化器・一般外科の大坪毅人教授。同教室は、救急の腹部外傷から消化器・消化管のがんまで、あらゆる手術に対応する。

―合併症を防ぐための取り組みについて、聞かせてください。

 消化器・一般外科では上部消化管チーム(食道・胃)、下部消化管チーム(大腸)、肝胆膵チームに分け、大学病院ならではの高度な医療を提供しています。

 病気の状態や進行度によって治療方針を組み立て、治療が患者さんにどのような影響を与えるかなどを、それぞれのチームで話し合い、さらに全体のカンファレンスで検討します。

 合併症は、手術時間が長かったり出血が多かったりすると、起こりやすくなります。このため、病気の進行度と患者さんの状態から手術方法を選択するようにしています。かならずしもガイドラインに沿った治療が患者さん本人にとって最適な手術とはならないこともあります。

 これまで独自に行ってきた工夫として、肝切除術での出血への対応では、肝下部下大静脈を遮断することで中心静脈圧をコントロールし、肝静脈からの出血を減少させられるとの結論を得たことで、輸血のリスクも減り、術後の経過も非常によくなりました。

 また膵頭部がんの膵頭十二指腸切除は複雑な手術です。膵臓と空腸をつなぐ膵空腸縫合の方法を工夫することで、膵液漏の合併症が大きく減っています。

―手術の安全性向上のための、毎朝の日課があるそうですね。

 前日に消化器・一般外科で行われたすべての手術について、かかった時間と出血量などを確認しています。長時間手術や出血量の多い手術については、その原因を術者に必ずヒアリング。これが抑止力になり、安全性の向上を促していると思います。

 また毎週のカンファレンスで合併症の評価基準となるClavien―Dindo分類に沿って、術後起こった合併症について報告してもらっています。術後の経過などを見ることでさまざまなことも分かってくる。それをフィードバックすることでより安全な手術に近づけるのです。

 手術室全体の取り組みとしては小松秀樹先生(亀田総合病院元副院長)の著書で書かれていた「バリアンス報告制度」を参考にさせていただき、手術室内でのさまざまな通常の経過以外のことについて把握し、早期に対応するようにしています。

―運営4病院が近くにあることのメリットを教えてください。

 聖マリアンナ医科大学は、附属病院として聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)、聖マリアンナ医科大学東横病院(川崎市)、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(横浜市)を有しています。また、指定管理者として川崎市立多摩病院(川崎市)を運営。四つの病院それぞれが、同じ台帳を使って合併症の状況などを確認しています。

 定期的に4病院間で成績を検討します。ある病院で行っている良い方法や工夫しているポイントについては、他の3病院の手法に反映させています。

 情報の共有が、それぞれのスキルアップにつながり、手術におけるクオリティーコントロールも推進できる。スムーズなコミュニケーションも、それを後押ししています。

 病院全体としても、医師と他職種のスタッフが、話しやすい雰囲気で情報を交換できる職場が一番だと考えています。質の高い医療を提供するために、より良い人材を育成し、環境を整備する。私の仕事は、そこに尽きるのだと思います。

聖マリアンナ医科大学外科学(消化器・一般外科)
神奈川県川崎市宮前区菅生2―16―1
☎044―977―8111(代表)
http://www.marianna-u.ac.jp/stmsurgery/

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