九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

「医療の原点に戻ろう」 対話を重ねて、V字回復

「医療の原点に戻ろう」 対話を重ねて、V字回復


院長(すずき・しげひこ)

1977年京都大学医学部卒業。
静岡労災病院(現:浜松労災病院)、香川医科大学(現:香川大学医学部)形成外科学教授、
京都大学大学院医学研究科教授などを経て、2018年から現職。

 創傷治療のスペシャリストとして、長年、形成外科学の発展に寄与してきた鈴木茂彦氏。医師として最初に赴任した縁から「第2の故郷」と呼ぶ浜松労災病院へ、2018年4月に戻ってきた。重視しているのは、周囲との相互理解だ。

―病院の現状について。

 前院長は強力なリーダーシップで、応需率の低かった救急医療を立て直し、業績向上に大変尽力されました。一方で、私の着任前には神経内科、小児科が存続不可能に。病院の収益は、着任直後の2018年4月~9月の上半期に悪化しました。二つの診療科がなくなったことに加え、救急が限界まで頑張っていた反動がきたのかもしれません。

 救急は非常に大切です。それは間違いない。しかし、極端にやり過ぎると現場は疲弊してしまう。

 そこで母体である労働者健康安全機構とも相談し、もう一度医療の原点に立ち戻って、職員自らが意欲を持って取り組むための支援をしようと決意。さらに、病院の理念である「仁愛の病院~ヒューマニズムとアカデミズム」を実践するため、患者さんの痛みを理解し、しっかり勉強して最良の医療を提供しようと、この二つを目標に掲げたのです。このことについては、医師や各部門長のみならず、できるだけ多くの職員と直接話をしました。

 ある先生が、自分の専門外だからという理由で救急の患者さんを断ったことがありました。ところが、当院にはその患者さんの疾患を専門とする医師がいるのです。もっと病院全体のことを把握して、自分のためだけでなく全体のレベルアップを目指そう、少数精鋭でしっかりチーム医療をやっていこうじゃないかと、膝を突き合わせて話をしました。先生は分かってくれたと思います。そんな対話を、一人ひとりと重ねてきました。

―その取り組みの効果はありましたか。

 幸い2018年10月以降、業績は回復。2019年の上半期は過去10年で1番の結果を残せました。下半期も順調に推移しています。

 2018年4月に神経内科、2019年度から耳鼻咽喉科外来を再開した効果もあったでしょう。V字回復を果たした経緯を知りたいと依頼があり、関東東海地区の労災病院長会議で話をしたところです。

 その直後です。今後、方針を再検証すべきという公立・公的病院のリストが発表されたのは。浜松市では7病院が輪番制で救急を引き受けていますが、そのうち当院を含む3病院が名指しされました。

 私自身、思うところはいろいろありますが…。幸い、運営状況は良いので内部の動揺は少なかったものの、地域の方々には不安が広がったようです。

―今後の方向性は。

 これまで、患者さんが病院に来るのは当たり前のように思っていたことを反省し、病院を広く知ってもらうための新たな試みを始めました。

 一つは、市民公開講座の実施です。「心臓血管センター」を立ち上げたタイミングで、2019年4月に開催した市民講座では、新聞折り込みチラシも初めて活用し、300人ほどに参加いただきました。今後も2カ月に一度、開催予定です。

 二つ目は病診連携懇談会です。それまで狭い地域の部会はありましたが、東区、南区、中区、磐田市に範囲を広げ、医療関係者との会を、同じく2019年4月に初開催。ようやく顔が見える関係が築けましたので、毎年続けていく予定です。

 2020年12月には、「日本職業・災害医学会」の学術大会を引き受けることになりました。そのテーマに掲げたのが、禅宗の言葉である「看脚下(かんきゃっか)」。自分の足元を見る、原点に戻るという意味です。これを病院のモットーに広げられたらと思っています。

独立行政法人労働者健康安全機構 浜松労災病院
静岡県浜松市東区将監町25
☎053―462―1211(代表)
http://www.hamamatsuh.johas.go.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる