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「切らずに治す」 醍醐味伝えたい

「切らずに治す」 醍醐味伝えたい


教授(きむら・ともき)

1995年高知医科大学(現:高知大学)医学部卒業。
広島大学医学部附属病院(現:広島大学病院)放射線科医員、
香川大学医学部附属病院放射線科講師、広島大学病院放射線治療科診療准教授などを経て、
2020年から現職。

 がんの標準治療の一つである放射線治療の分野で実績を積んできた木村智樹氏。低かった分野の認知度も成長の糧としてきた新教授は、全国的な課題でもある専門医の育成と地域偏在の解消に挑む。

治療拡充へ抜てき「母校」で恩返し

 旧高知大学と統合した高知医科大学の出身で、約四半世紀ぶりに「母校」に教授として戻ってきた。「お世話になった先輩、先生にこれまでの経験を生かして恩返ししていきたい」と力を込める。

 山上卓士教授が率いる放射線医学講座は2021年度に改編される予定で、画像診断分野と放射線治療分野に分かれることが決まっている。悪性腫瘍に対する放射線治療をさらに前進、充実させる役割を木村氏が任された。

 街中から離れた医学部は学生時代の雰囲気が残り懐かしさがあるが、勉強と両立してきつい練習に汗を流した野球部の球場は駐車場に姿を変えていた。「長い時間過ごした思い出の場所。時の流れを感じて少し寂しく思っています」

原爆から関心 知名度低さがバネ

 広島県福山市出身。幼少期、祖父に連れられて「原爆の日」の平和記念式典や広島平和記念資料館に足を運んだ。遺品や写真を通じて知った生々しい惨状に、「原爆、放射線は怖いな」との思いを抱いた。

 医学生になって放射線治療分野を知り、性質は異なるものの、「忌み嫌われていた放射線が、がん治療に役立つのか」と関心を持った。外科や内科に比べて専門医が少ないことも「若い時からいろいろなことを任せてもらえる」と前向きに捉え、進む道を決めた。

 若手の頃は、放射線治療が患者だけでなく他科の医師にも広く認知されていなかった。治療方針を説明しても他科の医師に十分には理解してもらえないこともあり、「放射線治療を認めてもらおうと逆に火が付いた」。

 広島県内の複数の病院で経験を積み、30歳代で香川大学医学部附属病院に赴任。進行胃がん患者の症例で、手術するにはがんが大き過ぎたため、放射線治療と抗がん剤治療を優先することになった。胃がんは放射線治療の効果が薄いとされていたが、手術前にがんを消失させることができた。

 別の症例でも同様の成果を上げると他科の医師が効果に理解を示してくれ、共同研究にも取り組んだ。一つ一つ症例を積み重ねて信頼を勝ち得ることが大切なのだと、この時痛感した。

専門医偏在解消へ 危機感が原動力

 高知県内では、定位照射やIMRTといった高精度放射線治療が可能で、かつ常勤専門医のいる医療機関が高知大学を含めて2施設しかなく、東部では設備のある施設自体がない。専門医のいない病院の治療計画を担う遠隔支援の実現も目指しているが、特に注力するのは人材確保だ。学生により関心を持ってもらうため、コンピューター上での治療シミュレーション体験などの計画を練っている。

 多くの生死に触れ、最近は自身と同世代の患者と向き合う機会も増えた。「やれることはやって後悔したくない」との思いは年々強くなっている。専門医の地域偏在の影響で放射線治療を選択肢にできない潜在的な患者に対する危機感が、日々の原動力になっている。

 広島時代の後輩からは冗談交じりで「指導が厳しい」と評されることも。厳しさは、患者と、同じ道を選んでくれた若手たちにこれまでの自身の経験を全て還元する、という強い決意の表れでもある。

 切らずに治せる。まだ明らかになっていないことも多く、貢献できる余地がある―。放射線治療の魅力と醍醐味(だいごみ)を時には厳しく、熱く、これからも後進に伝えていく。

高知大学医学部放射線医学講座(放射線腫瘍学分野)
高知県南国市岡豊町小蓮185ー1 ☎️088ー866ー5811(代表)
http://www.kochi-u.ac.jp/kms/fm_rdolg/

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