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「全科診療医」を育てるモデル病院へ

「全科診療医」を育てるモデル病院へ

松前町立松前病院
山本 和利 (やまもと・わり)

1978年自治医科大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院講師、
札幌医科大学医学部地域医療総合医学講座教授などを経て、2019年から現職。
札幌医科大学名誉教授兼任。

 松前町立松前病院は6月、2019年度自治体立優良病院表彰総務大臣表彰を受賞。「全科診療」を掲げ、質の高い医療を提供していることが評価された。病院事業管理者である山本和利氏に、就任にあたっての抱負と病院経営への取り組みについて聞いた。

職員全員が経営者の意識を

 松前地区周辺に住む約1万人の方々の健康を支える立場にある「地域医療拠点病院」です。

 函館から2時間離れたこの地域で、質の高い医療を持続させていくためには、健全な経営が欠かせません。病院全体の取り組みとして、各種業務の外注化、経費削減といった民間的な経営意識、経営手法を取り入れました。

 「職員全員が経営者」という意識を高め、病院を運営したこともまた、経営の黒字化に大きく貢献したと思っています。

 もう一つ特徴的なことが、当病院に在籍する医師が全員「全科診療医」であることです。診療科を問わずにすべての病気を診ることを理念に、医師、看護師をはじめ職員全員がその意識で診療に当たっています。眼科や耳鼻科といった専門診療においては、診療応援という形で外部から月2回、医師に来ていただいています。

 当院は最先端の機器がそろっているわけではなく、そのような意味では常に最新の医療を提供できる環境ではないかもしれません。しかし、患者さんの身近な存在として医師が寄り添い、終末期まで納得できる医療を提供できるのは、この病院をおいて他にはない。そんな気持ちを大事にしています。

人生を丸ごと診る「全科診療医」を育成

 現在、月に2人のペースで研修医を受け入れ、年間で24人の研修医が「全科診療医」としてのキャリアを積んでいます。

 研修プログラムでは、実にさまざまなことを学びます。その中で最も大切なことは、医師としての人間力を磨いていくことです。

 限られた医療資源の中、患者さんにとって何が最良の治療か。マニュアル通りの答えはありません。病気と共に生きる、という難しい選択を受け入れなければならない場面がいくつもあります。その過程で、患者さんらしい暮らしを一緒に考えていく、医師としての総合力を鍛えていく必要があります。

 「人生を丸ごと診る」。まさに全人的医療が実地で学べる貴重な場なのです。その魅力を若い先生方にも知っていただきたいと思っています。今後も優秀な「全科診療医」を輩出するモデル病院として、成長していきたいですね。

地域が求めるのはどんな医師か?

 自治医科大学卒業後、医師になって最初の頃は「何でも治せる、高度な医療に関わる医師になりたい」と思っていました。しかし、地域の病院で勤務を続けるうちに考えが変わりました。「地域から求められるのは何でも診ることのできる医師なんだ」と。地域医療に貢献する「全科診療医」に強く引かれました。

 その後は「全科診療医」として勤務を続け、その必要性を発信すると共に後進の育成にも取り組みました。45歳で札幌医科大学の教授に就任してからは、「全科診療医」の教育により一層尽力しました。

 地域医療に携わって30年余り。今、感じていることは、患者さんを診察することは、やはり私にとって大きなやりがいであるということです。

 現場にあらためて立ってみると、地域によって異なる習慣、価値観が、患者さんの生き方に大きく影響していると痛切に感じます。今後は、より地域に根付いた診療、そして「全科診療医」の育成に取り組んでいきたいと思います。

松前町立松前病院
北海道松前郡松前町大磯174―1 ☎0139―42―2515(代表)
http://matsumae-hospital.com/

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