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「オール沖縄」で 未来に続く医療を

「オール沖縄」で 未来に続く医療を

整形外科学講座
西田 康太郎 主任教授(にしだ・こうたろう)

1992年鳥取大学医学部卒業、神戸大学医学部整形外科入局。
米ピッツバーグ大学整形外科特別研究員、
神戸大学大学院医学研究科整形外科学分野脊椎外科学部門特命教授などを経て、
2019年から現職。

患者さんの窮状を実感 神戸から沖縄へ

 兵庫県川西市出身。同級生を病で亡くしたのをきっかけに医師の道を志した。

 神戸大学に身を置き、椎間板の基礎研究を中心に、脊椎外科に関する幅広い分野を手掛けてきた。多忙な日々を送る中、特発性側弯(そくわん)症の患者が沖縄から手術を受けに来た。肺にも疾患がある重症患者で、沖縄県内では対応できず、医師を探し続け神戸大学にやってきたという。

 ようやく治療ができたことにとても喜び、経過観察のために遠路はるばる通院する患者。その姿に「以前から沖縄では脊椎外科を専門とする医師が不足し難渋していると聞いていました。患者さんと接して、その窮状を実感しました」と振り返る。

 前任の教授の退任が決まったことから、「自分が少しでも役に立てれば」と、慣れ親しんだ関西を離れ、南国の地に降り立った。

あらゆる症例に対応するために

 着任後、見えてきたのは沖縄県の整形外科分野の〝伸びしろ〟。「脊椎をチタンなどの金属で固定する、ゆがみを矯正するといった分野は、もっと発展させられる部分だと思いました」。他の疾患を併発して重症化した症候性側弯症、成人脊柱変形など未開拓の領域も多くあると感じている。

 そこで「琉球・脊椎カンファレンス」を立ち上げ、隔月開催している。「熱い思いを持った先生ばかり。議論も白熱しています」と手ごたえを感じている。

 1回目を開催した「骨転移カンファレンス」も順調だった。背骨は「がん」が転移しやすい部位の一つ。転移すると骨が溶け、崩れたり、神経を圧迫してまひが出たりする。激しい痛みを伴い動けなくなることもあり、神戸大学では、年間20例ほど骨転移の手術を行っていた。「2人に1人はがんになる時代。救える患者を痛みやまひから救いたい」と意欲を示す。

 もう一つ、気になっているのが骨粗しょう症の多さだ。沖縄県は、全国でも同症例に伴う骨折の患者数が男性は1位、女性は2位と非常に多いという。

 「太陽の恵みにあふれた沖縄県では少ないだろうと思っていました。骨粗しょう症予防に有効なビタミンDは、太陽を浴びることで多く体内に生成されるはずだからです。兵庫県も骨粗しょう症の多い地域です。ある意味、僕はその〝先進県〟を渡り歩いてきて、手術を含む治療に数多く関わってきました。その経験を生かしたい」

目の前にいない患者も救っていくために

 教室のコンセプトとして掲げたのが「目の前にいる患者だけではなく、目の前にいない患者も治療できるようになる」こと。

 「まずは来院した患者をしっかり治療できるスキルを磨くこと。その上で、経験や研究結果を論文にまとめて広く発信し、多くの患者さんを助けることも忘れないでほしいと思います」と、次世代の育成と新技術の開発にも意欲的だ。

 着任後すぐに県内の医療機関や施設にあいさつに回り、県立病院などとの連携や技術交流も始めた。医療過疎にある本島北部、診療所だけの小さな離島での医療提供など地域の課題もある。

 柔らかい関西弁に穏やかな笑顔を交え「整形外科のニーズは高まる一方。やりたいことがあり過ぎて困るぐらいです」と話は尽きない。「『オール沖縄』で、未来に続く地域医療を支えていきたいですね」

琉球大学大学院医学研究科 整形外科学講座
沖縄県中頭郡西原町上原207 ☎098─895─3331(代表)
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/orthop/

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