九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

「できることは何でも」 地域医療を守る経営努力

「できることは何でも」 地域医療を守る経営努力


加藤 博孝 院長(かとう・ひろたか)

1980年東北大学医学部卒業。仙台市立病院外科医長、いわて感染制御支援チーム統括、
岩手県立磐井病院副院長などを経て、2012年から現職。
東北大学臨床教授、岩手医科大学臨床教授兼任。

 岩手県立磐井病院がある両磐地区は、この10年で人口が約2万人減少。高齢化による疾病構造の変化に対し、同院は「DPCデータの解析」と「戦略的目標の共有」を柱に経営を強化。その成果が評価され、2017年度に「自治体立優良病院総務大臣表彰」を受けた。

―病院の状況は。

 岩手県には九つの2次医療圏があり、そこに県立病院20カ所と県立病院附属の地域診療センター6カ所が配置されています。人口の減少や高齢化、医師不足など、どこも厳しい経営環境にあり、特に交通の便が悪く、人口の少ないところは深刻です。「都市部の収益を頼りに、県全体で何とか頑張っている」というのが、県立病院の現状です。

 当院の圏域は県南の両磐地区で、人口は約12万人。この10年間で2万人ほども減少しました。高齢化も進み、骨折や肺炎、複数の健康問題を抱える患者さんが多くなっています。

 当院の理念である「地域の皆様に納得のできる医療を提供します」を実現させるためには、こうした変化に対応していかなければなりません。

―特徴について。

 救急車搬送の多さが挙げられます。年間3000台近くあり、ここから岩手県高度救命救急センターまで1時間以上かかるため、ある程度の重症にも対応しています。小児科を中心に、夜間にウォークインで来院する患者さんも多く、救急体制は見直しを考えているところです。

 近隣でお産のできる施設が減り、分娩が年間約700件と集中していることも特徴です。少ない人員で頑張っていたところ、2019年に、国連児童基金(ユニセフ)と世界保健機関(WHO)が認定し、国内審査を日本母乳の会が行う「赤ちゃんにやさしい病院」に認められたことは、大きな励みになっています。

 当院が母乳育児に力を入れるようになったきっかけは、東日本大震災です。大変な状況下でも元気に退院していく母子の姿に、改めて母乳のすばらしさを感じ取ったスタッフが、情熱をもって推進活動をしてくれました。

―「自治体立優良病院総務大臣表彰」の要因は。

 経営への貢献度が高かったのは、2009年導入の「DPC」です。医療情報の一元管理とデータの把握・評価が容易になりました。毎月、院長、副院長、各部門の長で構成する経営部会で、経営に関する詳細なデータと収支状況を共有し、ベンチマークとの比較や機能評価係数Ⅱを上げる検討を重ねています。

 病院全体で経営目標を共有するのに役立ったのは、「バランスト・スコアカード(BSC)」です。BSCの多角的視点から各部門の目標を設定することで、患者さんの満足度や職員のニーズといった多様な要素を盛り込んだ「戦略的事業計画」を立てています。実績評価も分かりやすくなりました。

 他にも、クリニカルパスの研究、教育に熱心なスタッフの取り組みや、各病棟の職種間の指示を速やかに伝える連絡体制など、さまざまな要因があります。電子カルテの使い勝手を向上させるシステムは、自ら開発もしました。根底にあるのは「地域医療を守るため、できることは何でもする」という思いです。

─今後の課題は。

 働き方改革です。クラークの増員で医師の時間外勤務が月8時間程度削減できることが分かり、さらなる増員を考えています。併せて、常勤医だけで救急外来を維持する体制も、早急に考えなければなりません。医師の頑張りが評価される人事考課制度についても検討しています。

 認定看護師の待遇改善も課題です。半年かけて勉強して資格を取っても、インセンティブが与えられなかったり、キャリアアップなどで認定業務から外れたりすれば、モチベーションが下がってしまいます。意欲ある若い人が「私もなりたい」と後に続くような仕組みが必要です。


岩手県一関市狐禅寺大平17
☎0191─23─3452(代表)
http://www.iwai-hp.com/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

[contact-form-7 404 "Not Found"]
メニューを閉じる