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「がんゲノム医療拠点病院」指定 実践的で質の高い医療を

「がんゲノム医療拠点病院」指定 実践的で質の高い医療を


病院長(にわ・やすまさ)

1983年名古屋大学医学部卒業。
愛知県総合保健センター消化器診断部、名古屋大学医学系研究科消化器内科学准教授、
愛知県がんセンター中央病院(現:愛知県がんセンター)副院長兼内視鏡部長などを経て、
2015年から現職。

 2019年9月、「愛知県がんセンター」は、がんゲノム医療拠点病院に指定された。がんゲノム医療はこれまでのがん医療のあり方を大きく変えようとしている。丹羽康正病院長に同センターにおける診療の特徴と現状、課題と今後の展開について聞いた。

─「がんゲノム医療拠点病院」になった経緯は。

 2007年4月に「がん対策基本法」が施行され、同年6月には第1期の「がん対策推進基本計画」が策定されました。その後、第3期の基本計画が2018年3月に策定され、その中で初めて「がんゲノム医療の推進」という言葉が盛り込まれたのです。

 当院は、2019年3月に指定された「がんゲノム医療中核拠点病院」に応募したのですが、臨床研究中核病院などでなければ難しいということで、全国で156カ所の病院が選ばれた「がんゲノム医療連携病院」となりました。

 ところが、新しく自施設でゲノム医療を完結できる「がんゲノム医療拠点病院」の指定への公募があり、同年9月に全国で34カ所が指定を受け、そのうちの一つに選ばれたのです。

─愛知県がんセンターでのがんゲノム医療の現状は。

 中核病院、拠点病院ともに自分の施設でがんゲノム医療が完結できること、これまでに多くの臨床試験や治療を行っていることが条件です。違いは、中核病院には研究や教育、人材育成といった役割が課せられています。

 これまでのがん治療は原発部位ごとに行われ、できるだけ早期発見で、外科的治療、放射線治療、薬物治療などが行われてきましたが、がんゲノム医療は全く違います。がん組織を採取し、多数の遺伝子を同時に調べることでその変異を明らかにし、個別治療を行うというものです。

 当院では2019年3月に「がんゲノム医療センター(ゲノム外来)」を開設。同年10月ごろから実質的に稼働し始め、12月末までに43人が受診されています。

 ゲノムを調べるに当たっては「がん遺伝子パネル検査」を実施し、その後、結果をもとに各分野の専門家による「エキスパートパネル」という治療についての検討会をします。しかし、誰でもパネル検査を受けられるわけではありません。

 対象者は当院の診療科にかかっていて、標準治療の見つからない原発不明がんや希少がん、または標準治療では難しいとされた患者さんで、全身状態が良く、担当医から検査の対象になると判断された方です。2019年12月末までに20症例について、エキスパートパネルが開かれました。

─今後の展開は。

 ゲノム医療と聞いて、患者さんは治らないとされたがんも治るのではないか、と期待を持って受診されます。しかし、現段階ではパネル検査をして、遺伝子異常が見つかっても、効果を期待できる薬がある患者さんは1割程度。9割の方は効く薬がないというのが現状です。

 当院では最初に検査の内容や限界をきちんとお話しして、納得いただいた方を検査しています。

 ゲノム外来を受診し、検査を経て結果が判明するまでには1~2カ月を要し、保険を使っても高額な費用がかかります。検体も腫瘍の割合や保存の状態によっては検査できないことがあり、どこでもがんゲノム医療ができるというわけにはいきません。 

 いかに患者さんに実践的かつ質の高い医療を提供していくか。そのことに主眼を置き、最善の体制を整えて頑張りたいと思います。

 現在、日本のがんゲノム医療は欧米に比べるとかなり立ち遅れています。保険診療の範囲でできるよう模索しているようですが、今は改善しつつ仕組みをつくっている段階です。これらが解決できれば、今後はすごいスピードで進んでいくのではないでしょうか。

愛知県がんセンター
名古屋市千種区鹿子殿1―1
☎052―762―6111(代表)
https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/

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