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中等度進行肝がんに対する新たな治療法を確立

近畿大学 医学部消化器内科学 工藤 正俊 主任教授(くどう・まさとし)1978年京都大学医学部卒業。同附属病院、神戸市立中央市民病院、米カリフォルニア大学留学などを経て、1999年から現職。近畿大学理事(医学部・病院担当)兼任。  工藤正俊主任教授らの研究グループは、中等度進行肝がんに対する新たな治療法を考案し、生存期間を2倍近く延長させる証明をした。工藤教授は、2019年「高被引用論文著者(Highly Cited Researcher)」の臨床医学部門で最も影響力のある医師として、日本から唯一選ばれている。 ―中等度進行肝がんに対する新治療法について。  肝細胞肝がんは早期がん、中等度進行肝がん、進行肝がん、末期がんの四つのステージに分かれています。今回発表したのは中等度進行肝がんでも進行期に近いがんに対する新しい治療法です。  中等度進行肝がんは患者の層が幅広く、肝がんの中でも最も多い集団です。中等度進行肝がんのサブ分類でB2に当たる患者さんに、これまでの標準治療である肝動脈化学塞栓法(TACE)を行うと、効果が低く肝機能が落ち、結果的に命が短くなってしまうことがありました。こうした問題点がありながら、これまで新しい治療法は誰も提唱していなかったのです。  肝臓の両葉に多発しているがんの場合は、抗がん剤と塞栓物質を混和して流すため、効果が弱くなり正常部分も傷めてしまいます。一方、がんが四つか五つ程度の場合は、腫瘍の近くで超選択的に塞栓物質を入れることができ、肝機能を落とすことなく治療効果を高めることができます。  そこで、これまでは進行肝がんにのみ使っていた抗悪性腫瘍薬「レンバチニブ」を、中等度の肝がんに対して先に投与したのです。腫瘍を小さくしたり、少なくしたりしてから残った腫瘍に塞栓療法を行うことで、二つの高い効果を得ることができました。  一つは塞栓療法を行う際に腫瘍血管を正常化することができ、薬の効果を保つことができる点。もう一つは血管新生因子を抑制し、がんの進行を抑える効果があるという点です。この新しい治療法によって、再発防止や生存期間が延長することがわかりました。  これまではTACEを繰り返して肝機能が悪化し、2年以内に亡くなることが多かった中等度進行肝がんの患者さんに対し、根治的な治療ができるようになっていくでしょう。 ―研究の今後の展望は。  近畿大学の消化器内科では肝疾患に限らず、最先端の医療を行うよう心掛けることは当然のこととして、取り組んでいます。  最先端医療を継続していなければ、まだ解決されていない問題点や限界が見えてきません。そこから限界を突破するにはどうすればいいのかを考え、新しい治療法になり得るかどうかを臨床試験で検証します。  より良い治療を確立するために臨床試験は不可欠であり、そこで証明しなければエビデンスレベルは低くなってしまいます。私たちは経験から治療するのではなく、臨床試験によって一つひとつ証明してきました。  また研究の成果を論文で発表することで、世界中に広がっていきます。目の前の患者さんはもちろん、世界中の患者さんの治療につながることは、医師にとって大きなやりがいにもなります。 ―医局について。  最終的には患者さんのためになる成果を出すこと、そして「和とフットワーク」を重視しています。救急患者さんやほかの診療科から相談を受ければ、すぐに対応します。それこそが〝患者ファースト〟にもつながるからです。  教室には学会や論文発表、臨床への意欲の高い人が集まってくれています。中堅以上の医師たちが熱意を持って取り組んでいるため、その下にいる若い医師たちも積極的で、英語の論文は年間100本程度発表しています。 今後も臨床や研究、論文発表に力を入れ、世界でもトップレベルの医療を誇る消化器内科を目指していきます。 近畿大学 医学部消化器内科学大阪府大阪狭山市大野東377―2☎072―366―0221(代表)https://www.med.kindai.ac.jp/shoukaki/

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