九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

地域医療に貢献し続ける

獨協医科大学病院窪田 敬一 病院長(くぼた・けいいち)1981年東京大学医学部卒業。スウェーデン・カロリンスカ研究所移植外科研究員、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科、獨協医科大学病院副院長などを経て、2020年から現職。獨協医科大学第二外科主任教授兼任。  栃木県のほぼ中央、壬生町にある獨協医科大学病院は、1195床の病床を擁する。2020年4月、病院長に就任した窪田敬一氏は、より高度な医療を提供しつつも、地域と連携し、「優しい病院」を目指したいと語る。 移植医療など新しい治療に挑む  栃木県の特定機能病院であり、地域の基幹病院としての責務を担う獨協医科大学病院。その役割の一つである救急医療に関しては、栃木県のドクターヘリの基地病院になっている。県内のみならず茨城県、群馬県、埼玉県北部の3次救急をフォローする体制を整えており、救命率の向上や後遺症軽減に貢献している。 「災害時に、すぐに対応できる医療チームを準備しているほか、がん治療・研究などに関しても、地域の中心的な存在として日々取り組んでいます」と、窪田病院長は語る。 臨床面の主な特徴としては、移植医療が挙げられる。生体膵移植、膵腎同時移植、肺移植など積極的に取り組んでおり、特に生体膵移植に関しては関東でも少ない認定施設の一つとなっている。「今後は糖尿病患者さんの治療法の一つとして、膵移植を積極的に提案したいと考えています」 2020年の5月に設置した「脳卒中ケア・ユニット」も注目されている。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの患者さんに対して、迅速かつ濃密な対応ができる体制が整った。 さらに今後も果敢な挑戦を続けていきたいと語る。「特に多領域でロボット手術を導入することは今後の大きな目標の一つです。加えて、医療安全の面でも新規医療技術、新規医療機器、未承認薬の使用などについて、しっかり対応し、大学病院として、新しい医療を安全に提供できればと考えています」 地域と連携し、「優しい病院」に  2018年に「地域連携・患者サポートセンター」が立ち上がり、そこに入退院サポート部門、医療福祉相談部門、医療連携部門が設置された。以降、各部門が積極的に活動することで、患者さんの受け入れ、転院、退院などの管理がスムーズになり、同時に地域の医療機関との病診・病病連携も強固なものになりつつある。 さらに、新たな医療連携体制の構築として、2013年から「Dokkyo Alliance Clinics&Hospitals(DACH)」が進められている。 「これは地域の医療機関と当院が、互いに連携体制を強化し、地域医療に貢献することを目指すものです。幸い、近隣の開業医の先生には当大学の卒業生が多く、中には地域の医師会で主要なメンバーになっている先生もいらっしゃるため、DACHの活動は円滑で緊密なものになっています。これからも〝顔の見える連携〟を心がけて、地域医療を守りたいと考えています」 病院全体の方針として「優しい病院」を目指している。患者さんが十分に納得して医療を受けられるよう、インフォームドコンセントを徹底する方針だ。「当院は、もともと優しい医師やスタッフがそろっており、患者さんと気軽に話せる環境を大切にしています。その強みをさらに伸ばしていきたいですね」 「第62回日本消化器病学会大会」に向けて  窪田病院長は、2020年11月5日~7日に開催される「第62回日本消化器病学会大会」で、会長を務める。「これは五つの学会が力を合わせて開催する『第28回日本消化器関連学会週間』の一つです。今回は、欧米の著名な教授の講演や、特に大腸の研究・治療法に関しては数多くのセッションを予定しています。COVID―19の影響で流動的な面はありますが、開催に向けて準備を進め、大会を成功させたいと思います」 獨協医科大学病院栃木県下都賀郡壬生町北小林880 ☎️0282ー86ー1111(代表)https://www.dokkyomed.ac.jp/hosp-m/

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第38回日本肝移植学会学術集会 肝移植医療の新たな展開 Advance toward the New Stage

 第38回日本肝移植学会学術集会が6月25日(木)・26日(金)に松山市で予定されている。改正臓器移植法施行10年、MELDスコア導入1年などの節目を迎え、「日本の肝移植医療は新たなステージに入る」と話す髙田泰次集会会長に、見どころを聞いた。 増加見込みの臓器提供件数 集会会長 髙田 泰次 氏 (愛媛大学大学院医学系研究科 肝胆膵・乳腺外科学講座教授)  改正臓器移植法の施行からちょうど10年。脳死による臓器提供条件が緩和されたことにより、脳死下での臓器移植は年間70件近く実施されるようになりました。 厚生労働省や日本移植学会は今後10年で、脳死下での臓器提供件数がさらに増えると予測。今学会では手術数が増加した場合に、病院や医師はどう対応していくのかを、議論する予定です。 脳死や心停止下での臓器移植は常に緊急手術になるので、手術室とスタッフの確保、その時に予定されていた他の手術のリスケジュール、ドナーのいる病院からレシピエントのいる病院までの臓器の効率的な受け渡しなど、調整すべきことは多岐にわたります。移植チームのスタッフがオーバーワークにならないよう、うまくシステムを作っていきたいと思います。 MELDスコアが導入されて1年になろうとしています。MELDスコアというのは、肝機能や腎機能を示す数値を基に計算して出した指標です。この指標を基準として、重症の人から移植することにしました。MELDスコアが高い人は移植後の成績が悪いということが分かっていますので、合同検討会で検証する予定です。 今学会では日本移植学会や日本肝臓学会、日本臓器移植ネットワーク、厚労省や臓器移植コーディネーターなど多くの関係者に参加いただき、医療的側面と社会的側面の両方から肝移植医療の在り方を検討していく方針です。 移植医療が直面する課題  肝移植医療の直面する課題として、若手人材の確保があります。若い人に興味を持ってもらえるよう、肝移植の醍醐味(だいごみ)を伝える目的のシンポジウムを準備しています。生体肝ドナーに対する低侵襲の肝切除手術の様子をビデオで流すことも予定しています。 また、移植医療全体の社会的な課題として、臓器移植コーディネーターの育成や移植患者の就労支援があります。臓器移植コーディネーターの育成については、今回初めてパネルディスカッションを企画しました。移植患者の就労支援については、各地の現状を取りまとめて検討しようと、要望演題のテーマにしています。 ほかにも、適応基準が昨年拡大された肝細胞がん治療における肝移植の役割についてのシンポジウム、肝移植術後の疼痛管理とリハビリについてのワークショップなど、目新しいトピックを導入しています。 脳死下での臓器移植件数は伸びていますが、ドナー不足はまだまだ深刻です。臓器提供の啓発や、心停止ドナーによる提供臓器の機能回復など、臓器確保の努力が全方向で行われています。 iPS細胞による臓器作成も期待されるところです。ヒト肝臓作成の研究に取り組む、東京大学医科学研究所の谷口英樹教授に特別講演を依頼しました。 生体肝移植は特別な治療ではない  島根医科大学(現:島根大学医学部)で日本初の生体肝移植が行われてから約30年。総肝移植数は今年、1万件を超える見込みです。生体肝移植は保険診療であり、特別な治療ではありません。かかりつけ医から患者さんに提案する一つの選択肢としてもらいたいと思っています。 今回は、次の10年の方向性を決める重要な節目となります。肝移植医療に関わる多くの医療者に参加いただくことを願っています。 開催地となる松山市は、じゃこ天や寿司などの食や道後温泉もあります。どうぞ楽しみにお越しください。 学術集会の主なプログラム(予定) ●特別講演「iPS細胞を用いたヒト肝臓の再構成」6月25日(木)午後1時40分~同2時30分(予定) 谷口 英樹氏(東京大学医科学研究所教授)●パネルディスカッション「臓器移植法改正後10年のあゆみと、これからの10年」●シンポジウム「『肝移植の醍醐味』の伝承」 会期:6月25日(木)・26日(金) 会場:ANAクラウンプラザホテル松山運営事務局:メッド jlts38@med-gakkai.org 学術集会HP: https://ww2.med-gakkai.org/jlts38/

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福岡大学病院 病院長 岩﨑 昭憲

 明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては健やかな新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。 福岡大学病院長に就任し初めての年始を迎えました。2019年は、一世一元により平成から新元号「令和」になり、2020年は東京オリンピック開催が予定され大きな出来事がめじろ押しです。また医療に目を向けると、今春からの診療報酬改定は大学病院にとって期待と不安が交錯する年初でもあります。医師らの人件費や技術料に当たる「本体部分」が0.55ポイント増加、一方で薬価は1%、全体でもマイナス改定のようです。また医療情勢は、今後、団塊の世代が後期高齢者となり疾病構造や受療行動が変化することや、働き方改革関連法(時間外労働の上限規制、有給休暇取得の義務化等)を受けて各医療機関の共通課題になっています。 勤務軽減に、他職種へ一部委譲するタスクシフティングなどが提案されていますが、思うように運営できているものは少なく、まだまだ今後の課題です。診療報酬に働き方改革を後押しするための費用0・08%が見込まれ、少し明るい兆しもあります。これら社会情勢のなか私たちは、「人にやさしく、業務に厳しく」を掲げた取り組みを行いたいと思っています。 福岡大学病院の対象医療圏は、福岡市西部・南部地区の約100万人であり、地域医療の中核機関として高度医療を安全に提供するさまざまな創意工夫を行っています。 可能な限り施設・設備充実をはかるとともに、病院組織改編や多様な施設との連携推進に取り組んでいます。絆病院や連携医療機関登録を増やすための地域連携室の強化や、大学関連の医療機関である福大筑紫病院、福大西新病院、博多駅クリニックとも緊密な医療協力を行っています。まさに2019年の流行語大賞にもなった「ONE TEAM」です。 また新本館建設は、基本設計が終わり2023年竣工に向けて順調に準備が進んでいます。 大学病院内ではさまざまな業務が増えていることもあり、副院長の補佐職を倍増させました。この中には、大学病院機能の一つである教育、研究を意識した増員も含まれています。私たちには優秀な医療職を育て社会に送り出す責務があります。また専門性の高い人材を育てることは、ひいては特定機能病院としてのレベルを維持することにつながります。 多様化するがん医療、掲げてきた「断らない医療」の継続や救急医療体制の充実、ロボット支援手術や移植医療などの高度先進医療を安定的に提供し、さらなる飛躍の年にしたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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年間の透析導入患者を「3万5000人以下」に

 今年度から「慢性腎臓病(CKD)診療提供体制構築モデル事業」がスタートするなど、腎疾患の早期発見、治療を継続的に実施できる診療体制の整備が進められている。2017年12月から2018年7月にかけて開かれた「腎疾患対策検討会」の報告書を踏まえた取り組みの一環だ。 10年間で一定の成果 減少には届かず  前回の腎疾患対策検討会の報告書が取りまとめられた2008年当時、透析療法を受けている患者数はおよそ26万人(2007年末現在)。国が生活習慣病の予防、透析療法や移植医療といった腎不全対策を呼びかける中、CKDの重症化予防に関しては、施策としての方向性が明確に示されていなかった。 そこで検討会において腎疾患対策のあり方が議論され、「透析導入への進行の阻止」「CKDに伴う循環器系疾患(脳血管疾患や心筋梗塞など)の発症の抑制」が掲げられた。 市民や医療関係者に対する啓発活動、かかりつけ医と専門医療機関のスムーズな連携体制の整備などを推進。高齢化の影響を除外した年齢調整後の新規透析導入率に減少傾向が見られるなど、10年間で一定の成果を残した。 しかし、近年の慢性透析患者数の伸びは鈍化しているものの、減少に転じるまでには至っていないのが現状だ。 各県でモデル構築 均てん化を目指す  2017年末における慢性透析患者数は33万4505人(2017年日本透析医学会統計調査報告書)。人口100万人当たり2640人で、有病率は年々大きくなっている。また、新規の透析導入患者数は4万人を超え、毎年の死亡患者数も増加傾向にある。 CKDの認知度はいまだ十分に浸透しているとは言えず、軽度の腎機能の異常は自覚症状が乏しいため患者本人も医療者も気づきにくい側面がある。「潜在的なCKD患者」が数多く存在すると考えられており、また高齢化が進むことで腎疾患患者は今後も増加していくと予測される。 国は「2028年度までに年間新規透析導入患者数を3万5000人以下に減らす」との成果目標(KPI)を設定している。 今回の腎疾患対策検討会で示された5本の柱は①普及啓発②医療連携体制構築③診療水準の向上④人材育成⑤研究の推進。それぞれの進捗や成果の「見える化」を目指す。 目標達成に向けた活動の軸の一つとなるのが「慢性腎臓病(CKD)診療提供体制構築モデル事業」だ。 国が都道府県を対象に補助金を交付。地域の特性に応じて行政と医療者が連携し、CKD対策モデルを構築する。都道府県が中心となって市町村への「横展開」を実施し、さらに各地で確立されたモデルを活用して全国の均てん化へと広げる狙いだ。 広島県呉市や埼玉県の先行事例の横展開を目指して策定された「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」との連動など、すでに構築されたネットワークと結びつくことで、より効果的なCKD対策への発展も期待されている。

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九州大学病院 病院長 赤司 浩一

新年あけましておめでとうございます。皆さまには、健やかに2019年の新春をお迎えのことと、お慶び申し上げます。平成は、昭和の時代から持ち越されたがん治療や移植医療、さらにロボット医療などが、大きく飛躍的に前進、展開を示した時代でもありました。

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