九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

労働者健康安全機構 理事長 有賀 徹

 明けましておめでとうございます。皆々さまには、健やかな新年をお迎えになられたこと心からお喜び申し上げます。 さて、わが国では少子高齢化の傾向がまだまだ続き、そのなかで社会保障の一層の充実が喫緊の課題です。同時に、総労働力の低下に伴う三重苦も知られていて、それらは社会保障の維持が困難になること、生産と消費とがともに低下することの三つとされます。 後二者の低下は国内総生産(GDP)の低下そのものであり、社会保障と総労働力とを同時に維持せねばならないゆえんでもあります。 従って、男性の生産年齢層を補うべく、女性や高齢者の社会参加がうたわれ、治療中であっても仕事を続けられるように療養・就労両立支援指導料の診療報酬への収載も周知のことでしょう。 このような状況のなかで現在の医療を俯瞰(ふかん)すると、「量から質へ」のパラダイムシフト(新思想体系)が進行中です。すなわち、高齢社会を迎えた循環型の連携システムにおいては、どの医療機関も自らの役割に応じて他施設との時宜を得た円滑な連携が問われ、医療の質を測る評価指標もしばしば俎上(そじょう)に載ります。 そしてもちろん、費用対効果も生産性たる質を求めるものです。タスク・シフティングなど、生産性の筋からの議論も必要です。 以上により「医師の働き方改革」について病院管理者にとってはガバナンスそのものであり、そこでは医師の研鑽(さん)と労働とを切り分けるなどの管理に焦点を当てることになります。 しかし、医師を志した情熱は今も患者を診ることにつながっていますので、研鑽と労働とについての限りない連続性は〝深層〟においてその通りかも知れません。その意味で四六時中仕事について考えている心象風景もあり得ます。 町工場の創意も、農業や漁業における工夫も同じことかもしれません。つまり働く立場からは、そのような仕事を「減らせ」は難しいので、休みを「増やせ」となりましょう。働き方改革は〝休み方改革〟こそ主軸のように思います。 先に病院のガバナンスについて言及しましたが、より一層高い次元のガバナンスを社会に求めるとすれば、病院の集約化、つまりは勤務医らの集約化もあり得ましょう。 いずれにせよ、働くことは社会や経済のみならず、医師にとっての情熱との兼ね合いもあって、一筋縄では行きにくいテーマです。しかし、働き方改革つまり〝休み方改革〟は「待ったなし」です。 多くの有意な知恵が発せられる良い年となりますよう心から祈念いたします。

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ロボットの進化が生み出す人工関節のパラダイムシフト

近畿大学医学部整形外科学赤木 將男 主任教授(あかぎ・まさお)1983年京都大学医学部卒業。米ロマリンダ大学人工関節摩耗学研究所、近畿大学医学部整形外科学教授などを経て、2012年から現職。近畿大学医学部教学部長兼任。  2017年4月、赤木將男教授らは「近畿大学医学部附属病院(現:近畿大学病院)人工関節センター」を設立。2019年4月、日本初導入の人工膝関節手術支援ロボットによる単顆人工膝手術(UKA)を実施した。人工関節のエキスパートは、手術支援ロボットの将来をどう見据えているのか。 ―「人工関節センター」の役割とは。  強力な他科のバックアップのもと、総合的な医療を行えることが一番の強み。併存症のある患者さんにも幅広く対応しています。他で断られた方、例えばうつ病や統合失調症の患者さんも精神科と薬物コントロールしながら診ています。 手術件数は年間250件弱。キャパシティーの関係で受け入れには限界がありますが、手技を向上して患者の負担を減らし、術後回復を早め、在院日数を減らす努力を続けています。 入院は人工膝関節で2週間、人工股関節で2週間半から3週間ほど。再手術や難治症例、歩けなくなった方への手術では長くなりがちです。ただこの1年で地域連携がずいぶん進んで後方支援病院が増えましたので、入院期間はそれほど延びていません。 ―人工膝関節手術支援ロボットを導入しました。  1週間に1件のペースで手術しています。件数が限られる中で適用となる症例は、比較的軽症の変形性膝関節症。前十字靱帯(じんたい)を温存する人工膝関節置換術に、最も能力を発揮できるからです。 重度の方に行う全人工膝関節置換術(TKA)は手技が確立されていて従来の方法で多くの症例に対応できます。ただ、前十字靱帯を残すとなると急激に難度が高くなる。そこで役立つのがロボットの機能。赤外線カメラで得られる情報をもとに術中にプランニングし、高精度でインプラントを設置することで術後の膝機能を最大化できます。 しかし、保険収載されていないことから、まだ積極的に広げていく体制にはなっていないのが現状です。 すでに日本に6台が導入された今、保険適用を国に認めてもらうための働きかけが必要です。具体的には、導入施設に声をかけて研究チームを作り、有効性をデータで示してエビデンスを積み重ねていく作業です。数年かかると思いますが、今後の発展のために自ら取り組んでいかなくてはと考えています。 ―今後の展開は。  前十字靱帯を残したTKAで元の膝を「再現」する。これはある意味、人間の能力を超えた手術。そこにコンピューターの価値があるわけです。 ロボット支援手術は、従来とは全くコンセプトが異なるもの。例えば今、膝のアライメントの角度などは2次元パラメータで計算していますが、3次元データを用いることで限りなく正解に近づく。二つの球体を重ねたときに球面がピタッと誤差なく合わさるよう設計するイメージです。 しかし、現段階ではここまでは実現できていません。だからこそパラダイムシフトとなる手法だという前提でソフトとハードの両方を改善してこそ意味がある。そうメーカーのエンジニアと話し合ってきました。人工知能(AI)の学習能力をもってすれば、いずれ実現できると信じています。 人工関節置換術は、多くの人に満足をもたらしています。持って生まれた膝を取り戻したい、あと10年、15年スポーツを楽しみたいという50代、60代にとっては、前十字靱帯を温存する意義は大きい。それを実現するのが、ロボット支援手術なのです。 「病気はその臓器があることを意識することだ」という言葉があります。関節も同じ。あることを忘れて運動や旅行、生活を楽しむことができたら最高でしょう。そんな人を1人でも増やせたらいいですね。 近畿大学医学部整形外科学大阪府大阪狭山市大野東377―2☎072―366―0221(代表)https://www.med.kindai.ac.jp/ortho/

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地域で全体最適化された医療の提供を目指して

医療法人和同会髙橋 幹治 理事長(たかはし・かんじ)1989年山口大学医学部卒業。同神経精神科、山口県立中央病院(現:山口県立総合医療センター)神経科などを経て、1996年医療法人和同会片倉病院院長。2008年から現職。院長兼任。  宇部市、山口市、防府市の山口県央部と広島市で医療法人と社会福祉法人を展開する和同会グループは、地域のニーズを意識しながら、信頼される医療・福祉の提供を目指している。近年は、超高齢社会を背景に、地域における全体最適化された医療システムの実現に向けた準備も進めている。 ―「全体最適化された医療の提供」とは。  日本の急激な人口減少と少子化を伴った超高齢社会においては、従来の治す医療から「治し支える医療」、さらには、そもそも病気にならないための「予防法の確立」など、医療・福祉におけるパラダイムシフトが求められています。  こういった課題を解決するため「全体最適」という視点が重要です。構造・機能面では地域包括ケアシステム構築、そのための地域医療構想調整会議、オンライン診療の制度化などで、まさにこれらは全体最適で行っています。  しかし効率性・実効性の面からは医療デバイスの進化に利用法や価格低下が追い付かず、運用できないことが多かったり、呼吸器疾患関連の介入が山口県では弱かったりといった要改善点があります。  そこで和同会では、地域の医療機関をはじめ、医師会や行政と連携し、地域の高齢者を包括的に支え健康増進を図る「呼吸器・地域包括ケアシステム」の構築の提案を計画しています。 ―具体的には。  現在、がん、心疾患、脳卒中が死亡の主因ですが、最終的には肺炎でも同様に多くの方が亡くなっています。肺炎に限らず、呼吸器疾患は高齢者の生活の質を低下させるため、予防や適切なケアが大切です。しかし山口県は呼吸器内科専門医の絶対数不足などにより対応が十分とは言えない状況です。そこで山口大学医学部に寄附講座を申請し、今年4月に呼吸器・健康長寿学講座を開設。肺炎予防に焦点を当てた診療と研究が始まりました。  具体的な取り組みは大きく二つ。ビッグデータを用いた肺炎のリスク因子の解析と肺炎予防への具体的な介入です。肺炎予防については、今年4月から山口大学呼吸器・感染症内科の非常勤医師2人、歯科口腔外科医師2人、歯科衛生士らによる肺炎予防外来を開始しました。基礎疾患の適切なコントロールやワクチン接種など、実効性のある予防策を実施しています。  また、口腔内の細菌の減少は肺炎の発症を抑制し、肺炎による死亡率を減少させるとの報告があることから、オーラルケアの啓発活動も行っています。高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎対策として、摂食・嚥下機能向上に体操などで介入するほか、予防・再発防止のための呼吸器リハも強化しています。  こうした取り組みを始めて半年が過ぎ、2〜5年の実績を見なければ厳密に効果を語れませんが、高齢者施設から肺炎で入院する比率は減少傾向にあります。 ―今後の展望は。  健康長寿社会の実現に向けて、現在、グループ病院の一つでメディカルフィットネスを運営しています。医師などから医学的なアドバイスを受け、健康増進・介護予防などが行える運動施設です。将来的にはすべての病院に併設したいと考えています。  以前より24時間365日の安心・安全確保の体制を整えるため、他の業界とのタスクシェアのような形で特定看護師やケースワーカーが駐在する小さな拠点づくりを起案してきました。しかし、コンビニの24時間営業も困難になりつつある今、難渋しているのが現状です。  変化の激しい現代社会では、ターゲティングを間違えると運用できても時代に合わず、労力や投資が無駄になってしまうので気を付けなければなりません。  社会の動きに柔軟に対応しながら、より効率的な医療システムを構築し、地域の健康長寿に貢献したいと考えています。 医療法人和同会山口県宇部市西岐波229─3(片倉病院)☎0836─51─6222(代表)http://www.wadokai.or.jp/

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“患者第一”のために 医療の効率化を追求

順天堂大学医学部附属順天堂医院髙橋 和久 院長(たかはし・かずひさ)1985年順天堂大学医学部卒業。米マサチューセッツ総合病院留学、順天堂大学医学部呼吸器内科学講座教授、同大学医学部附属順天堂医院副院長などを経て、2019年から現職。  順天堂大学医学部附属病院は都内および埼玉県、千葉県、静岡県の6病院を擁する。その中で順天堂医院は、病床数1032床、1日外来患者数約4500人、病床稼働率95%以上という規模を持つ。2019年4月に就任した髙橋和久院長が取り組む、「Patient First(患者第一)」のための医療の効率化とは。 医療の効率化と救急医療の充実を  私たちが重視しているのは、「Patient First(患者第一)」です。この基本理念を決して忘れることなく、特定機能病院としての、確実な医療安全のもと、高度で質の高い医療技術を提供する使命を果たすべく努力しています。  具体的には、まず医療の効率化に取り組んでいます。当院の紹介率は約80%、逆紹介率も同等の78〜80%を誇っており、地域医療機関との連携が良好であることを示しています。しかし、この数字に甘んじることなく、さらなる病診連携・機能分化を進めていきます。 機能分化によって、外来患者数は減少しますが、一方で、患者さんが特定機能病院に求めている高度で先進的な医療を、一人ひとりに時間をかけて提供することが可能になります。  救急医療の充実も重要です。「Patient First」だからこそ、患者さんが困っているときに、しっかり対応できる体制を整える必要があります。当院は2次救急が主体であり、救急要請を断ることはほとんどなく、積極的に受け入れる方針です。また、今年8月より院内救急車を導入しました。これにより、ベッド満床時に附属病院や関連病院への転送がスムーズになり、クリニックや近隣病院からの救急受け入れ時の使用も視野に入れています。  外来・入院医療の効率化を図るため、2019年5月、B棟2階に入院支援センターと術前外来、歯科口腔外科を集約。入院における事務手続き、薬剤師による持参薬の管理、麻酔科による術前診療や歯科による口腔ケアなどを一つのフロアで効率よく行えるようになりました。これにより、術後合併症の発生率の減少、在院日数の短縮、医療費の削減などが可能になります。 先進医療やグローバル化にも対応  高度な先進医療の提供として、手術支援ロボット(ダビンチ)の導入、手術室の拡充などを図っています。  また、複数の専門医による集学的治療を行うセンターがいくつかあります。例えば、「足の疾患センター」は下肢の疾患について、各科専門医、フットケア指導士の資格を持つ看護師、リハビリスタッフなどがチームで治療に当たります。「脊椎脊髄センター」では、脳神経外科と整形外科が連携して外科治療を担います。こうした病気別の診療体制は、患者さんにも分かりやすいと思います。  近年のグローバル化に対応すべく、当院では、2015年に病院機能評価であるJCI認証を取得し、2018年には更新審査もクリアしました。また、国際診療部を発足させ、国際水準の医療を提供する体制を整えています。 難治の肺がん治療にあえて挑戦したかった  肺がんの薬物治療の進歩には目を見張るものがあります。分子標的薬が次々と登場し、その後、免疫チェックポイント阻害薬の登場が、肺がん治療にパラダイムシフトを起こしました。かつて、Ⅳ期の進行肺がんの治療は延命が目的でしたが、今では治癒も不可能ではない時代になっているのです。  私が呼吸器内科医を志したのは、がんの中でも難治と言われた肺がん治療にあえて挑戦したかったから。このような画期的な治療法に出会うことができ、自分の選択は正しかったと確信しています。こうした経験を若い医師にも伝えていきたいと思います。 順天堂大学医学部附属順天堂医院東京都文京区本郷3—1—3 ☎03—3813—3111(代表)https://www.juntendo.ac.jp/hospital/

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攻めの姿勢で医療現場にパラダイムシフトを起こす

千葉大学医学部附属病院 山本 修一 病院長(やまもと・しゅういち)1983年千葉大学医学部卒業。東邦大学眼科教授、千葉大学大学院医学研究院眼科学教授、同大学医学部附属病院副病院長などを経て、2014年より現職。  千葉大学医学部附属病院は、特定機能病院として大学病院でしかできない最先端医療の提供で、地域における役割を担っている。現在、新中央診療棟を建築中で、2021年にはオープンの予定だ。 ―病院の役割について。  当院は、1874年、地域の有志の方々の拠金によって共立病院が設立されたのが始まりです。その後、いくつかの名称を経て現在の千葉大学医学部附属病院となるわけですが、いつの時代も、設立の原点であった〝地域のための医療〟を忘れることはありません。 当医療圏には多くの急性期病院があります。それらの病院とうまく機能分化し連携しながら、地域医療を進めていきたいと考えています。その中で、当院の役割は、大学病院でなければできない最先端医療の提供であると認識しています。最先端医療という点では、研究分野にも重点を置いています。そして、その研究成果を「千葉から世界に発信する」ことが、使命でもあります。 当院がモットーとする地域に根差した医療、そして最先端医療の研究・発信を遂行するには、施設や機能の老朽化が問題でした。そこで、2007年の新病棟(ひがし棟)の建設を皮切りに、既存の診療棟の改修、新外来診療棟の建設などを進めてきました。 2021年の1月には、新中央診療棟がオープンする予定です。新中央診療棟の1階には救命救急センターが入り、全県対応で3次医療を超えた救命救急をめざしています。4階の手術室は17室から20床に増床し、ハイブリッド手術室と日帰り手術センターを設置します。そのほかにも、放射線治療機器を増設して、放射線治療の充実を図ります。 当院はがん診療を得意分野の一つとしており、がんゲノム医療にも積極的に取り組んでいます。近年主流となりつつあるがん外来治療の体制を整え、地域がん診療連携拠点病院としての役割を担います。すでにオープンしている外来診療棟などについては、患者さんから、外装の新しさだけでなく「スタッフの対応がとても親切になった」という声をいただいています。設計の当初から重視していたゆとりのある空間は、スタッフの業務に余裕をもたらし、それが患者さんにも好影響を与えていると思います。 ―現在の取り組みは。  当院は、2017年、臨床研究中核病院に承認されました。臨床研究開発推進センターでは、新規臨床研究の立ち上げを支援・推進しています。そのほかにも、メドテック・リンクセンターでは、工学研究者や企業のエンジニアを院内に招き入れ、医療の現場から医療機器の開発に取り組んでいます。 近年の病院経営を取り巻く厳しい現状から、医療の特殊性を理解した経営マインドを持った人材を育てることも重要です。そこで「ちば医経塾」を立ち上げ、病院経営スペシャリストの養成を行っています。受講生は医療従事者、病院事務職員、行政職員など。将来的には、履修者の全国ネットワークを築き、医療の活性化に役立ててほしいと願っています。 これからの大学病院は、収益力を高めるための企画力が求められます。それには、異なる発想を持った大学外部の人材との協力が不可欠です。それが可能なのが大学病院であり、新しいものを創り出すことこそ大学病院でしかできないことだと自負しています。 地域医療においても、他施設との連携強化こそが収益力アップにつながり、大学病院に求められている高度先進医療のリソースの投入にもつながります。さまざまな面で厳しい状況ではありますが、だからこそ医療現場にパラダイムシフトを起こすため、攻めの姿勢で取り組んでいくつもりです。 千葉大学医学部附属病院千葉市中央区亥鼻1―8―1☎043―222―7171(代表)https://www.ho.chiba-u.ac.jp/

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三重県看護協会 会長 西宮 勝子

謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆さまにおかれましては健やかに2019年を迎えられたことと存じます。日ごろから公益社団法人三重県看護協会の活動に対し、ご支援を賜り感謝申し上げます。さて、今年は、元号が変わり新しい時代に入ります。このような大きな節目の時は社会全体も大きく変化するということを聞きます。

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三重県看護協会 会長 西宮 勝子

謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆様におかれましては健やかに2018年を迎えられたことと存じます。日頃から公益社団法人三重県看護協会の活動に対し、ご理解とご支援を賜り感謝申し上げます。昨年は創立40周年記念式典を、多くの団体の皆様にご参列いただき開催することができました。重ねてお礼申し上げます。

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