「ファクトフルネス」がどのような本であるかを伝えるための定番クイズを、本欄でもいくつか。
①世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
(A)50歳 (B)60歳 (C)70歳
②世界中の1歳児の中でなんらかの病気に対して予防接種を受けている子どもはどのくらいいるでしょう?
(A)20% (B)50% (C)80%
正解はいずれも「C」である。自分の中のイメージとギャップがある、という人は少なくないと思うのだが、いかがだろうか。クイズ②の正解率は国によって差があるものの平均で13%。日本はドイツ、フランスと並んで最下位の6%だ。「8割が予防接種を受けている」という事実は、ほとんど知られていないのだ。
著者の1人である医師で研究者のハンス・ロスリングは考えた。知識のアップデート不足? 本質はそこではない。高学歴の人々でさえ陥る「罠」なのだから。事実に基づいてありのままに世界を捉えられないのは、人間の脳が「ドラマチックすぎる世界の見方」を求めるからだとロスリング氏は言う。
世界では戦争や暴力が絶えず、貧困層は拡大し、天然資源はまもなく枯渇する─。課題は山積しているけれども、「不安の根拠」を知っているだろうか。世界がどんどん悪くなっていると思い込む「ネガティブ本能」、目の前のたった一つの数字が最も重要だと信じる「過大視本能」…。こうした10の誤解を乗り越えるための習慣が「ファクトフルネス」。楽しい驚きに出会える一冊だった。(瀬川)
FACTFULNESS(ファクトフルネス)
10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド
日経BP社 400頁 1800円+税