福岡歯科大学医科歯科総合病院 病院長 池邉 哲郎

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 新年明けましておめでとうございます。旧年中は、台風、豪雨、猛暑、地震と自然の脅威にさらされ続けました。被災された方に心からお悔やみ申し上げます。一方で、この自然との付き合いは日本古来からの運命かとも思われ、ご先祖様が通った同じ道のりかと思えば私たちも粛々と歩むばかりかと思います。病院経営も同じでしょうか。

 福岡歯科大学医科歯科総合病院は歯科大学の附属病院ですが、歯科診療科4科( 11部門)の充実はもちろんのこと、医科も23診療科を備え、九州大学病院、福岡大学病院とも連携し、総合病院として地域医療に努力しています。本院は開院45年が経過し、現在、九州大学病院の新築も手がけた水田祥代理事長のリーダーシップのもと、新病院建て替えの工事に着手し、2020年秋の開院に向けて準備をしています。

 さて本院の母体である福岡歯科大学は大学ブランドとして「口腔医学」を掲げています。歯科医師は口腔科の医師の如く、医科と同様な医学知識を身につけることが患者の安心安全につながるとの故田中健藏先生の考え方に基づくものです。その「口腔医学」がますます重要になっているのが、地域包括ケアシステムの現場ではないでしょうか。地域包括ケアの根幹には多職種連携があるかと思われますが、多職種連携の柱の一つが医科歯科連携です。本院は医科歯科連携を通じて地域包括ケアに貢献したいと願っていますが、その実例の一つが2017年度から実現しました本院と済生会福岡総合病院との地域連携かと思います。本院訪問歯科センターが済生会福岡総合病院入院患者の周術期口腔管理を行っているのです。病院同士がお互いの不足を補い合うシステムの構築が市民を利さないはずはありません。それを実現するために大切なのは、病院同士の競争原理ではなく、利他主義にあるのではないでしょうか。

 内閣府によれば、現代の社会は、これからSociety 5.0を迎えようとしているとのことです。人間の歴史を振り返れば、Society 1.0は狩猟社会、Society 2.0 は農耕社会、Society 3.0は工業社会、Society 4.0は情報社会なのだそうです。それでは次のSociety 5.0はどんな社会なのでしょう。人工知能が人間の脳を追い越す分岐点をシンギュラリティと言うそうですが、Society 5.0はAI社会なのでしょうか。しかし人間が最終的に求める社会は結局人間同士の触れ合いにあるような気がしてなりません。利他的な社会です。それは医の原点だとも思うのです。人工知能に看取られて死ぬ社会が 5.0とは思いたくないのです。

 さて新年はどんな年となるでしょうか。

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