開業医と大学病院つなぐ 橋渡し役として地域貢献
福岡市医師会から事業譲受し、今年4月に開院した福岡大学西新病院。同大救命救急医学講座の石倉宏恭教授が病院長に就任し、「地域医療への貢献」「断らない医療」を明確に打ち出した。地域中核病院と大学病院の特性を合わせ持つ同院だからこそ、果たすべき役割があると石倉病院長は語る。
―西新病院の特徴は。
福岡市医師会成人病センターを譲受し、福岡大学の3番目の附属病院として開院しました。既存の医療機能を引き継ぐとともに、呼吸器内科に常勤医師を配置、入院診療のみの小児科新設など、より診療体制を充実させた医療機関です。
最も特徴的なのは、地域医療と大学の高度医療を兼ね備えているという点です。その特性を生かし、開業医と大学病院の橋渡し役を務めています。
開業医の先生方から、「患者さんを大学病院に紹介するのを、つい遠慮してしまう」とよく言われます。負担を掛けたくないと気を遣わせてしまうようです。
そこで、当院が中継点になろうと考えました。まずは第一段階として当院に紹介していただき、高度医療が必要と判断すれば大学病院へ送る。そうでなければもとの医療機関にお返しする。病院に、いわばトリアージの役割を持たせたのです。
また、当院は「断らない医療」をモットーとしています。他院からの紹介だけでなく、救急も可能な限り受け入れ、患者さんのファーストタッチに対応し、当院で評価して適切な医療機関へ送ります。当院の医師や看護師には、「専門外だから」と断らず、全身を診ることができるようになってほしいと思っています。そのための教育も、当院で行います。
―小児科を新設し、入院のみに絞った理由は。
当院がある福岡市西部は近年開発が進み、人口が増えています。それに伴い、小児人口も増えている。しかし、地域に小児科の入院施設は少なく、既存の病院も縮小傾向にあります。4年前に福岡市立こども病院が市東部へ移転したのも、大きく影響しています。そこで、入院に絞った小児科を新設しました。予想以上に入院希望者が多く、驚いています。全15床は、常にほぼ満床です。
小児科は常勤医師が3人しかいないので、外来はしない方がいいだろうと判断しました。マンパワーだけでなく、ハード面でも不可能だった。ここは無理をせず、他院と連携を取って外来はお任せする、われわれは入院の適応があれば、そこからスタートするというようにすみ分けをしようというスタンスです。
このような取り組みは全国的に見ても珍しい。でも、本来、大学病院のあるべき姿かもしれません。国の地域医療構想も、大学病院に外来の充実は求めていないでしょう。
―地域医療にとって大切なことは何でしょう。
連携です。例えば、大学病院で診た後、落ち着いたら西新病院に来ていただく。その後は回復期や慢性期の病院へ転院し、社会復帰に向けたリハビリを実施して、退院したら開業医の方々に受け渡す。一つの病院で患者さんを抱え込まず、地域医療構想を本気で実践し、切れ目のないサービスを提供するのが理想です。
今後は、地域医療に貢献するためにも、健診分野にもっと力を入れたいと考えています。今はクリニックと提携して健診を行っていますが、患者さんは「胃カメラは当院」「乳腺は他院」など、それぞれに足を運ばなければならず、効率が悪い。これを統一するためにも、将来的には建物の建て替えを検討しなければいけないと思っています。小児科も、もっと病床数を増やして間口を広げたい。3〜4年後には具体的なイメージを描けるようにしたいですね。
福岡大学西新病院
福岡市早良区祖原15-7
TEL:092-831-1211(代表)
https://www.nishijin.fukuoka-u.ac.jp/