慣れ親しんだ場所で専門的な医療を
急激に高齢化・人口減少が進む宮崎県小林市。この地で選ばれる病院であり続けるために、次々と新しいサービスを開始する園田病院。丸山賢幸院長に地方医療の現在と今後について聞いた。
―今年6月に神経内科を開設した背景は。
当院は、高齢化率34%を超える小林市にある2次医療機関です。現在、小林市市街地から車で30分圏内には産婦人科の病院がなく、少子高齢化の一途をたどる地域医療をどう維持していくのかが課題です。やがて日本に訪れる「2025年問題」がすでに今、私たちの目前にあるのです。
認知症やパーキンソン病など、地域の高齢化に伴い増加する病態に対応する必要があり、1年半前から話を進めて、地元出身の神経内科医を常勤医として迎えることができました。
また、救急外来に多い脳疾患系の患者さんへの対応を手厚くすると共に脳外科医の負担を軽減するのも開設理由の一つです。
―最近の取り組みは。
2017年7月1日、患者さんの送迎サービスをスタート。「高齢者が運転して通院するリスク」と「タクシーで通院する経済的負担」を軽減するために、高齢の患者さんに寄り添う医療の一環としてこのサービスを導入しました。予約制で2台の送迎車を週6日運行。1日当たりおよそ20軒に送迎をしています。
2017年8月1日には、訪問看護サービスを開始。在宅療養を希望する患者さんに向けた新サービスとして看護師3人と保健師1人で運用しています。
看護師は、24時間365日体制で救急出動に対応。地域で増え続ける在宅看護希望者の声に応えるために、医療の質を担保しながら自宅でも病院でも同じ看護体制が取れる仕組みを構築しました。
これら二つの新サービスにより「こちらにお連れする」「出向く」の両輪で、地域の医療難民を減らし、患者さんの希望に沿った専門医療を提供する努力を重ねています。
―スタッフ教育で力を入れていることは。
地域に根ざした病院運営を目指しスタッフの意識改革にも力を注いでいます。2016年から「活性化プロジェクト」と名付け、始動しました。
各課の上部組織として「看護部」「管理部」「コメディカル部」の三つを編成。業務の責任の所在を明確にカテゴリー分けし、各部の目標、各課の目標、そして個人の目標を設定し、定期的に達成度を確認する制度を導入しました。
一人ひとり、この地域に何ができるのか、園田病院で自分がどんな役割を果たせるか。トップダウンではなく、各自が考えて発言し、一体となって行動する組織を目指しています。
1年程前から課長職以上の全スタッフにノートパッドを支給し、コミュニケーションツールとして活用。委員会活動など、園田病院が地域で選ばれる病院になるための積極的な意見交換が、日常業務に負担なくできる環境の構築を目指しています。
―今後の展望について。
患者主体の診療を重視した先代院長のスタイルを継承すると共に、時代に沿った病院運営に敏感であるべきと感じています。
今、多くの患者さんは、慣れ親しんだ環境での専門性の高い医療を求めています。神経内科の新設だけでなく地域で不足している循環器内科や呼吸器内科を維持・増強し、地域医療の充実を図っていきたいと考えています。
2025年度の地域の必要病床数は、2017年末の既存病床数から300床減ると見込まれています。今後、何を増やし、何を減らすかも見極める必要があります。地域の需要を考えた病院運営とスタッフ育成を目指し、選ばれ続ける病院となれるよう努力していきたいと思います。
医療法人けんゆう会 園田病院
宮崎県小林市堤3005-1
TEL:0984-22-2221
http://www.sonoda-hospital.jp/